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今話もよろしくお願いします。

レッツわんわんタイムです。2話投稿します。

 弟弟子2頭とともに師匠を養う生活が始まった。




 なんだかよく分からないけど、クロとシロは魔法が使えるみたいで、僕の狩りに積極的についてくるようになったのはいいんだけど、あまり目の前で魔法を使いすぎると、しばらくしたらその魔法を使い出すから、どうしてそんなに簡単に使えるようになるのかなあ、ってちょっぴり嫉妬した。


 でも楽しいからどんどん魔法を使って見せてたら、いつの間にか全部覚えられてたし、逆にクロとシロが見たこともない魔法を使ってるから、それを一生懸命真似することになってた。


 お母さんとオードは魔法が使えないみたいで、犬家族で狩りをするにしても、僕と狩りをするにしても、やること無くてつまんねえなあ、ってのがひしひしと伝わってきた。


 そういうわけで、しばらくは親子が犬らしい狩りをするのを見守ってたんだけど、やっぱり普通の2匹じゃ狩りをするにも限界があるから、そのうち狩りじゃなくて散歩をするだけになってた。



 冬になって食料が減ると、野生動物も魔物も人里近くまで降りてくるから、街で討伐依頼を受けて魔物を倒しに行って、そのお金で食材を買うのが冬の過ごし方なんだけど、今年はシロとクロがいるから、探すのも移動するのも倒すのも、シロかクロの背中に乗ってればいつの間にか終わってた。


 いつもは森の中に放っておくんだけど、そのまま街まで魔物の死体をまるごと引きずっていったから、街の人にシロとクロのことが知られちゃったけど、その魔物から得られる素材でさらにお金が貯まったし、いつもなら少し寂しくなる食卓がむしろ豪華になるし、犬家族さまさまだなあ、なんて思った。


 師匠もますます犬家族のことを気に入ったみたいで、毎朝僕に叩き起こされて外に引きずり出されて寝ぼけてるところに大量の魔法をぶつけられてたのに、いつの間にか自力で起きて、僕じゃなくてシロとクロに激しいじゃれあいという名の実戦訓練をするようになってて、その時の師匠は初めからしっかり覚醒してるから、もしかして僕よりもシロとクロの方が強いのかな、いや、強いんだろうなあ、って少し悲しくなった。




 犬家族が裏庭からいなくなった。


 春が近づいてきて、もうすぐ犬家族が住み着いてから1年経つなあ、とか、師匠が出会いの季節だね、なんて言いながらソワソワしてるのを見て、めんどくさいなあ、とか考えながら師匠の部屋を片付けて、裏庭に行って小屋を覗いてみたら、小屋の中にいるはずの犬家族がいなかった。


 あれえ、今日は朝から狩りに行ってるのかなあ、なんて考えながら、1年前よりも難しくなった修行を一通りこなして、食後のお茶でくつろいでる師匠に、今日の修行は僕が師匠を1人占めですよ、なんて言ってみたら、そっかあ、って困ったように笑ってた。


 その日はかなり久しぶりに師匠から丁寧な指導を受けて、久しぶりに街まで歩いて行って、街の人から、おや、珍しいねえ、シロとクロはどうしたんだい、って言われるから、どうやら朝から狩りに行ってるみたいで今日は僕1人なんですよ、あはは、なんて話しながら薬を売ったり食材を買って帰ってきても、裏庭に犬家族はいなかった。


 さすがに心配になってきて、もしかして狩りに失敗したのかなあ、とか、魔物にでも襲われたのかなあ、とか、明日になればいつも通り小屋の中で寝てるかなあ、とかいろいろ考えて、上の空になって夕食を作ってたから、鳥肉がちょっぴり焦げちゃって、師匠の皿に入れようかと思ったけど、すんでのところで思いとどまって僕の皿に入れて、師匠を呼んで夕食を食べることにした。


「師匠、犬家族がまだ帰ってきてないんですけど、大丈夫ですかね」


 焦げた鳥肉をフォークでつつきながら、気づけばそんなことを尋ねていた。思ったよりも僕は犬家族のことが心配みたいで、さっきから焦げた鳥肉をつついてばかりいる。どうにもこの焦げた鳥肉は喉を通りそうにない。


 師匠からの返事が無いのに気づいて顔を上げると、師匠は真面目な顔でこっちを見ていて、ああ、真面目な顔だから変なことを言い出すのかなあ、なんて思いながら焦げた鳥肉にフォークを刺した。


「クリス君、ずっと言おうと思ってたんだけど……彼女達は狼だよ」


 1年越しの驚きの事実に思わずフォークの動きが止まったけど、野生の鳥肉は焼き過ぎたせいもあって脂身が極端に少なく、パサパサしているからフォークに突き刺さったまま落ちそうもない。


 僕はずっと勘違いをしていたようだ、すごく恥ずかしい、街の人に犬って言ったっけ、もしかしてみんな気づいてたのかな、冷静に考えれば犬にしてはずいぶんと大きかったよな、でも犬と狼って何が違うんだろう、とかいろんなことが頭の中でぐるぐると回っていた。


「もっと言えば、黒い子と白い子は狼ですらない。彼等は魔物だよ」


 どういうことだろう、僕の勘違いは恐ろしいレベルだったようだ、魔物を野生動物と勘違いしていただなんて、いや、それよりもどうして師匠はそんなことを知っているんだろう。


「え、魔物って……どこが……」


 魔物っていうのはだいたい見た目が悪い。体は青色とか緑色とか紫色をしていることが多いし、左右非対称の体を持つことも珍しくない。他の特徴と言えば魔法を使うこと、ぐらい、で……。


「シロとクロを何度も殺そうとしたんだけど、なかなか上手くいかなくて。しかもクリス君と仲が良いし、でも森は弱まってきてるし。悩んだけどこれ以上ここに居られたら大変なことになると思って、昨晩のうちに立ち去ってもらうことにしたんだ。ごめんね、ずっと黙ってて」


 あまりにも突然のことでいろいろと分からないし、いろいろと聞きたいのに、何をどう尋ねればいいのかよく分からないし、鳥肉は焦げているし、師匠は真面目な顔で真面目なことを言うし、僕は何かを言おうと口を開いたり閉じたりするばかりで何も言えず、師匠の目を見つめるばかりだった。


「クリス君、春ってのはね、出会いと別れの季節なんだよ」


 僕はフォークに刺さっていた焦げた鳥肉を師匠の皿に移した。

ありがとうございました。次話もよろしくお願いします。

わんわんおじゃなかった……だと……

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