30 慰めます
ついに100,000文字を突破しました。
今話もよろしくお願いします。
東広場が騒然となっちゃったよ、テヘペロ。
ようやく視力が回復した頃に、項垂れて微動だにしていなかったブランとノワールの2人にかけた魔法を解除、笑顔でベンチに誘導して並んで座らせた。騒ぎを聞きつけて警備隊が来たけど、既に丸く収まっていて問題無いことを必死に上目遣いでアピールして帰ってもらった。今は落ち着いた2人に温風を当てて乾かしながらどうしようか考えている。
ブランは俯き、両手を組んで握りしめている。ノワールは背筋を伸ばし、両手を膝の上に置き、真っ直ぐ前を向いて、とても良い姿勢で待機している。さすが、怒られ慣れてるだけあるね。
「街中で武器と魔法を使って喧嘩なんてしたらダメだよ」
ハイッ、とノワールの威勢の良い返事が聞こえる。ブランがゆるゆると顔を上げて僕を見て、力無く頷く。ブランの落ち込み方がすごい。まあ、いつも怒る側だもんね。2人の経験の差がよく出てる、のか?
それで、喧嘩の原因は……。ノワールが全てをブランに押しつけて、そのくせブランの言う通りにしてくれない、かな。たったそれだけ、って言いたくなるけど、具体例を挙げればその質と量がすごいんだろう。うーん、何をどう言えばいいのやら。
「……ごめん」
悩んでいると、ブランが沈黙を破った。こちらを見ていたブランと視線を合わせる。瞳が揺れ、強張っていた顔が重く、暗くなる。目を伏せて、小さな声でぽつぽつと語る。
「長く続いた事情聴取で、少し、イラついてて。冷静じゃ、なかった」
それきり黙ったブランから、ノワールに視線を移す。ちら、と目を伏せたままのブランを横目で見てから、ノワールが話し出す。
「何年もかけて俺が積み上げたストレスに加えてアレがあったからな。爆発して当然だ」
ああ、自覚、あるんだ……。思わず半目になった僕に苦笑してからノワールがブランの方を向く。ブランが視線をノワールに向けたのを確認してから、ノワールが真面目な顔で口を開く。
「すまん、分かってて、煽りまくった」
うわあ。これはさすがにドン引きだ。ひどい、とブランが呟き、肘を膝上に立て、組んだ両手に額を当てて項垂れる。ブラン、不憫……。表情が見えないけど、なんていうか、これ、いじけてる、よね。ノワールがブランから僕に視線を移す。
「クリス、このガキんちょ、慰めてくんね?」
口調はいつもと変わらない軽さだけど、僕をじっと見つめるその澄んだ水色の瞳は真剣そのものだ。普段見ない顔つきに息を呑む。今まで常にブランが年上キャラで、ノワールは馬鹿キャラだったのに、ここ最近2人ともキャラが崩れてきてるよ? じゃなくて、慰める、か……。
「いや、こいつの言う事、は……」
顔を上げて、ぎこちなく笑いながらブランが何かを言おうとするけど、僕が距離を詰めてきているのに気づいて目を見開く。言葉に詰まっているブランにそのまま続きを言わせずに、ちょうどいい高さにある頭をぎゅっと抱え込む。
「遅くなったけど、ブラン、おかえり。あと、お疲れさま。ずっと、大変だったね」
ブランはいつもしっかりしている。それが当たり前のように思ってたけど、ノワールにいろいろ押しつけられてそうせざるを得なかっただけだ。しかも今回の押しつけは事情聴取だ。軽い軟禁状態だったんだろう。だから今まで僕に会えなかったし、今日に至ってはストレスが爆発した、はず。
普通に考えれば、キツい。1か月近くどんな環境に置かれてたのかは分からないけど、ブランはノワールと同い年、僕の4つ上で、大人っぽいけど実際は子ども。大人でもキツいだろうにまだ子どものブランに平気な訳がない。
僕とノワールは何かあったらブランを頼るけど、ブランは誰に頼るのか。誰に弱みを見せればいいのか。ずっと抱え込み続けて、ストレスもプレッシャーもすごかったに違いない。そんなことに今更気づくだなんて。
だからって僕にこういう風にされたらプライドが傷つくかな。でも、今だけだから、今だけ、今だけ、と何度も心の中で唱えて、ついでにブランの少し硬い、生乾きの白髪を撫でる。しばらくそうしていたらブランの右手が僕の左腕にそっと添えられたので、少し体を離してブランの様子を窺う。
「ありがとう、それに、ごめん」
僕を上目遣いで見上げるブランは、いつもの柔らかい笑顔じゃなくて、へにゃり、と情けなく歪んだ笑顔で、瞳を若干潤ませて……。ええ、ブランさん、ちょっと、キャラ崩壊してますよ。
「この際言うけど、クリスの前でカッコつけすぎ。全ッ然似合ってなかった」
僕達の隣で姿勢を崩し、腕と脚を組んでずっと黙って見守ってくれていたノワールが、優しい笑顔と声音でブランを貶す。この期に及んでまたそういうことを、と僕が若干呆れていると、むっとした顔でブランが言い返す。
「うるさい、俺だって……。俺も、クリスに、頼られたかったんだ……」
「いっつも俺が頼ってやってるじゃねーか」
いひひ、と笑うノワールと、また俯いて僕の体にぽすん、と頭を預けるブラン。そうなのか、そんな風に、考えてたのか……。ああ、今まで僕の中で築き上がってた2人の立ち位置が逆転しちゃったな。しばらく慣れなくて戸惑いそうだけど、この素のブランをちゃんと受け入れないと。また無理させる訳にはいかないもんね。
「ありがとね、ブラン」
普段見れないブランの頭頂部を見ながら背中を擦っていると、さて、とノワールが明るい声を出して立ち上がる。視線を向ければ、優しい笑顔からいつもの無邪気な、でもどこか悪戯っぽい笑顔で口を開いていた。
「そんなお子様なブラン君のために、今日1日いくらでも付き合ってやろうじゃないの。な、クリス」
「え? うん、そうだね、うん、そうしよう。ね、ブラン、今日はブランの好きなとこ行こうよ」
僕の体から頭をぱっと離したブランが目を見開いて僕を見つめる。とりあえず笑っておく。ブランが嬉しそうな、でも困ったような、いろいろ混ざった複雑な表情をして視線を彷徨わせ、いや、でも、そんな、急に言われても、と呟いている。初めて見るブランの言動に苦笑しつつ、声をかける。
「どこか行きたい店とか、何か食べたいものとか、欲しいものとか――」
「お、プレゼントか? アリだな! よし、ブランに何かプレゼントを買おう! 行くぞクリス!」
ノワールが勝手に決めて僕の手を引いて歩き出し、慌てて僕もブランの手を引いてベンチから立ち上がらせ、急ぎ足でノワールを追いかける。ノワールの優しさに、ブランの強がりに、2人とも不器用だな、そっくりだ、なんて思いながら、何をプレゼントしようかと頭をフル回転させる。
僕の後ろから、我慢できないかのように、くつくつと笑う声が聞こえた。
ありがとうございました。
互いの評価まとめ
Q.白髪金眼性格イケメンマッチョさんは?
A.ノワール「石頭。ガキんちょ。お子様(29、30話)」
Q.黒髪水色眼脳筋ガチマッチョさんは?
A.ブラン「馬鹿(17話)」




