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episode 3 : Reginald

今話もよろしくお願いします。

今日は、ツーわんデー、ですから……ッ!

レジナルド君も語りたい?!

 別に、王都に行かなくたってよかったんだがね。



 贅沢はできないが、食うのに困る訳でもない、田舎の農村。

 普通の農村の、普通の家族の、普通の長男。

 そのまま弟や妹、村のガキ共の面倒を見ながら、畑仕事を手伝って、村から出ることなく生きていく。

 別に、それでよかった。


 村の教会では簡単な読み書きや計算を教えてくれる。

 俺もそこで学んだ。

 つっても五月蝿いガキ共をまとめるふりして勉強サボってたんだが。



 10歳で魔力の有無を調べるっていう、慣例行事がある。

 田舎の農村から魔力持ちが生まれることは珍しい。

 ここだって魔力持ちはほとんどいない。

 その数少ない魔力持ちだって、魔法が使える訳じゃない。

 田舎の農村で魔法なんて学べないからな。


 10歳になったヤツらが順番に、一見ただの石っころにしか見えない、魔力石なるものを触っていく。

 もちろん触ったからって何もならない。

 それが当たり前だし、触ったヤツがうおー、俺の右腕がー、とか叫ぶのを笑っていた。


 俺の番になり、どうフザけてやろうかとニヤつきながら石に触った。

 光った。

 訳が分からなかったが、とりあえず俺の隠された力がバレたか、なんて笑った。

 誰も笑ってなかった。



 その場は神父さんがレジナルド君は魔法の適性がありますね、って軽く流したし、もっかいやってみて、すげー光ってる、かっけー、とかみんなが言ってたし、ドヤ顔しながら何度も光らせていた。

 家に帰って両親に話せば、驚いてはいたが、それだけだった。

 それからも特に何も変わらない、いつも通りの日々が続いた。



 それから2年経った。

 魔力が尽きて回復魔法が使えないとかで、怪我をした冒険者達がこの田舎の農村にやってきた。

 うちの村は余所者は追い払うとか、そういうことはしない。

 もちろん歓迎したし、不便が無いようにみんな世話を焼いた。


 冒険者達はすぐに馴染んだし、村のそこかしこでいろんなことを手伝っていた。

 俺もガキ共をまとめるのにいろんな所に顔を出していたし、頻繁に会ったから挨拶ついでに話すことも多かった。



 ある日、魔物が村を襲った。

 初めて見た魔物は、獣のような4本足なのに、右前足だけ異常にデカくて、涎を垂れ流し、目は血走り、茶色の体毛は不自然な伸び方をしていて、なんつーか、グロかった。

 すぐに冒険者達が魔物と対峙した。


 初めて戦闘を見た。

 1人が前に出て魔物の攻撃を盾で受け流し、1人が横から魔物の隙をつくように剣で攻撃し、1人が風や土を魔法で動かして攻撃し、1人が仲間を魔法で強化したり回復していた。

 素直に、かっけー、って思った。

 普段のあの人達の気さくな姿を見知っている分、今の真剣な姿がすっげーカッコ良かった。



 冒険者達のおかげで、誰も怪我することなく、村に被害が出ることなく魔物は倒された。

 魔物の死体は素材に使えるらしいけど、村の大人達はそんなこと知らないから冒険者に全てあげたし、その日の晩は宴を開いて冒険者達を労った。

 初めて戦闘とか魔物とか魔法を見た人ばかりだったから、かなり盛り上がっていた。

 俺もガキ共の面倒を見ながら、冒険者達に礼を言いに行った。


「リウスさん、ジャンさん、マーティスさん、ヴァリクさん、ありがとうございました」

「「ありがとー!」」

「「旅のにーちゃんたち、かっこよかったー!」」


 ガキ共が好き放題に礼やら何やら叫び出し、うっせーぞと頭をくしゃくしゃと掻き乱す。


「どういたしましてー、ありがとー」

「あっはっは、いつものお礼だって」

「そうそう、逆に今日は本当にありがとなあ、俺達居候なのに」

「おー! 久しぶりの酒はウマいねー!」


 既に出来上がってるのが1名いたが、ガキ共にも優しいこの4人を改めてかっけーな、と思った。


「「剣すごかった!」」

「「魔法もすごかった!!」」

「ねー、レジーにーちゃんも魔法使うの?」

「レジーにーちゃん魔法使うの!?」

「バーン! って、やんのー?!」


 俺はできねーよと笑いながらガキ共の頭を小突く。


「すいません、騒いじゃって」

「いやいや、それよりもレジー君、もしかして魔力があるの?」

「ええ、まあ、一応」

「へえ! じゃあ今度、魔法教えてあげるよ!」

「あはは、ありがとうございます」


 勝手に戦闘ごっこを始めたガキ共を連れて、じゃあ楽しんでくださいと声をかけて離れて行った。



 ま、最後の会話は気にしてなかった。

 気分が良くなって適当なこと言ったんだろうな、ぐらい。

 期待なんてしてなかったし、明日にはもう忘れてると思ってた。


 だから、本当に教えに来てくれた時は驚いた。

 断るのは申し訳なかったし、両親も畑仕事はいいからと言ったから、教えてもらうことにした。

 正直、全く興味が無かった訳ではないし、これで村の皆を護れるならと張り切っていた。



 が、残念ながら、俺はそんなに攻撃魔法を使えなかった。

 火は出せた。水も出せた。雷も出せた。光も出せた。風も動かせた。土も動かせた。草も動かせた。

 ただ、攻撃の手段になるほどではなかった。

 生活魔法レベルだった。


 つっても魔法は攻撃魔法だけではないから、補助魔法や回復魔法も教えてもらった。

 結果、回復魔法は目に見えるほどの効果は出せなかったが、自身に補助魔法を使うのは随分と上手くいった。

 以前よりも腕力が、速さが、持久力が、丈夫さが増した。

 なんつーか、俺はやっぱり体が資本の農家ってことなのかね。


 それならってことで次は剣も教えてもらうようになっていた。

 補助魔法を使えば力でゴリ押し、っていうのもできるが、技術は無いよりあった方がいい。

 その間も攻撃魔法や回復魔法が上達しないものかと随分考えてくれた。

 あまり変わらなかったが。



 そんな感じでいつの間にか1年経っていた。

 俺は畑仕事ではなく冒険者達と狩猟に行くようになっていた。

 村の食料事情の改善に貢献できたし、力仕事は俺がいれば随分早く終わるようになったし、魔力があってよかったと思ったもんだ。


 だから、王都に行かなくたってよかったんだがね。


 冒険者達から王都の話はよく聞いていた。

 王都の学校ならもっと上手く魔法を教えてもらえるだろうことはよくよく聞いていた。

 それでも今のままで十分だと思っていたし行く気は無かった。


 ところが村の大人達はそうでもなかったらしい。

 少しずつ秋の気配を感じ始め、野菜の収穫を間近に控えていた頃のことだった。

 両親から王都の学校に行くように言われた。


 冒険者達は秋の収穫祭が終われば王都に行くらしい。

 それについて行け、だと。

 行く気は無いとはっきり告げたが、よく考えろと言われた。



 村の大人達の意見はみんな同じだった。

 俺の王都行きは決まっているようなものだった。

 うんざりした。


 冒険者達だけでなく俺まで出て行ったら誰が魔物から村を護るのか。

 そう聞けば村の男全員総出で護ると言い出した。

 しかも魔物が襲ってくるのは数十年に1度ぐらいなもので、気にする必要は無いとまで言われた。

 うんざりだ。


 村の大人達は少しずつ金を出し合って、それを冒険者達に渡して俺を王都に連れて行ってくれるように既に頼んでいた。

 ふざけんな。


 ついにガキ共まで俺が王都に行くと教え込まれたようで、応援やら別れの言葉やら言いやがる。

 もう、行くしかなかった。

 行って、強くなって、帰ってくるしかなかった。



 13歳の秋、収穫祭の翌日、俺は生まれ育った農村を旅立った。


 道中、冒険者達は俺の不満を感じ取っていたのか、大人達の言い分をいろいろ説明してくれた。

 俺の不満にも理解を示してくれていた。

 別に、もう覚悟は決めたから、気にしなくてもいいんだが。


 王都には無事に辿り着き、春入学のために冬に行われる中等部の入学試験を受験することになった。

 有難いことに冒険者達は入学までの俺の世話役を買って出てくれ、一緒の宿で生活してくれた。


 冒険者達4人のうち、魔法を使う2人は中等部に通っていたらしく、少しだけ勉強を教えてもらった。

 つってもだいぶ簡単らしいし、そこまで真面目にやっていた訳ではなかった。



 だからだろう、不合格だった。


 冒険者達は驚いていたが、俺も驚いた。

 確かに村でも宿でも真面目に勉強してなかったから筆記試験は全くできなかったが、まさか落ちるとは。

 受ければ受かると思っていたのだが、そこまで甘くなかったようだ。


 冒険者達は合格するまで俺の面倒を見ると言ってくれたが、あまりにも申し訳無さすぎる。

 次は絶対に落ちる訳にはいかないと思って、参考書を買って必死に勉強した。

 知恵熱というものを経験した。


 秋入学のための夏の入学試験には準備万端で、全力で挑んだ。

 幸い、大人達とのやりとりは村で慣れていたので、あとは敬語に気をつけるだけだった。

 最低限の教養も、詰め込んだ知識のおかげで備わっているように装えた。

 魔法の実演では、補助魔法でできる限りの身体強化を行い、素手で、一発で、人形を粉々に粉砕してやった。



 今度はどうにか合格だった。


 冒険者達は喜んでくれたし、俺も合格できて安心した。

 寮があるのは知っていたので、迷うことなく入寮することにした。

 寮に入れるようになれば、冒険者達に今までの礼を告げてすぐに寮へ向かった。


 管理人から鍵を受け取り、部屋と鍵の番号を確認していると、隣の部屋の扉が開いた。

 村の人間には、平民には見た事がない、綺麗な亜麻色の髪と碧い眼をしたガキがいた。


 貴族もいるとは聞いていたが、こんなガキが入学するところなのか?

 もしかして俺はかなり年長者なのか?

 まさか、学校で浮いてしまうのでは……一気に不安になった俺に目の前のガキが声をかけてきた。


「初めまして。秋に入学するクリスって言うんだけど、君も?」


 村のガキ共を思い出す声変わりしていない高い声で、でも落ち着いた声で聞かれた。

 名前だけ、ということは平民なのか、それとも家名を隠しているのか。


「ああ、隣の部屋に入るレジナルドだ。レジーって呼んでくれ。よろしくな、クリス」

「よろしく、レジー」


 子どもらしからぬ微笑みで手を差し出してきたので、握手をする。

 どうやら見た目に反して平民だったようだ。

 農作業とは無縁のようだが何もしてこなかったわけではないのだろう、思ったよりも硬い手で少し驚いた。



 クリスと俺はかなり早く寮に入ったので、必然的に共に行動することになった。

 それにしてもまさか2つしか年齢が違わないとは思わなかった。

 いくらなんでもこれは……幼すぎるだろ、10歳って言われても信じるぞ。


 ただ、本人も気にしているのだろう、先輩に外見のことを触れられる度に固まっていた。

 指摘してやらないことにしよう。


 しかし、本人は気づいていないのだろう、先輩ホモから外見だけでなく体も触れられている。

 コイツの尻を守ってやらなくては。


 ただでさえ綺麗な外見してるのに、美味い料理を振る舞っちまったら女に見られるのもしかたない。

 お前のせいで目覚めた先輩が絶対にいるぞ、分かってんのか、分かってないだろうな。



 すぐに周りの部屋にも誰かが入ってきて、自然とクリスを中心とした6人でツルむようになった。

 後で聞いたが、エドは入学前から年上ってだけで周りと距離ができるのを心配していたらしい。


 それを聞いて思ったが、クリスは迷うことなく初めからタメ口だった。

 そういうところが人を惹きつけるんだろう。

 いい意味でも悪い意味でも。


 俺なんかポールと3つも歳が離れているが、アイツもタメ口だし遠慮をしている様子もない。

 クリスが同期相手なら誰でも態度が変わらないのが大きいのだろう。

 見た目の割に随分と出来たヤツだ。


 それはともかく、俺が周りのガキ共をまとめるのは村でも王都でも変わらないようだ。


 クリスは不思議なヤツだ。年齢不相応に大人びた態度を見せる。時々ガキっぽいが、腹ン中で何考えてんのかね。

 アルはガキっぽい童顔を気にしてんだろうが、大人ぶろうと下ネタを言ったり一言多かったりするのが余計にガキに見える。

 テッドは年相応の馬鹿だ。コイツどうやって合格したんだろうな。モグリか?面白いからいいがね。

 エドは大人びているように見えるが、少し不愛想で人付き合いが苦手なだけのようだ。いるよな、こういうヤツ。

 ポールは頭が良いな。さすがその歳で中等部に入るだけある。年下キャラを理解していい位置についている。


 なかなか面白いコイツらをまとめて、俺が先輩達との緩衝材になる。

 今まで通りだ。

 そうしないとクリスに忍び寄る魔の手を逸早く察知できないってのもあるがね。



 それにしても、入学式の日にクリスの本性が出てくれてよかった。

 目覚めかけてた先輩は現実に気づいたし、既に目覚めてる先輩からも幻滅された……か?


 腹黒か、なかなかピッタリなあだ名じゃねーの。


 とにかく、4年は付き合うことになるんだ。

 5人の面倒はしっかり見てやろう。

 そーすりゃ勉強もどうにかなるだろ。


 思ったより、王都っていいところかもしれないな。

ありがとうございました。

合格にしないと野生の脳筋が王都に放たれる恐怖

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