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14 入学します

今話もよろしくお願いします。

 学校での生活が始まった。




 ぽつりぽつりと秋入学の生徒が寮にやってきて、僕も引きこもってばかりはよくないよなあ、って思って、空き部屋だった周囲の部屋に誰かが入れば積極的に挨拶したし、共用施設には頻繁に顔を出して挨拶したし、久しぶりに料理ができると思うとなんだか嬉しくなって、めちゃくちゃ料理を手伝ってみた。


 そんなことをしていると、寮のみんなが温かい、時には熱い目で見てくるようになって、入学前の友達作りに成功したような失敗したような、微妙な気分になった。


 僕の部屋の両隣と、廊下を挟んだ向かいとその両隣の6人で、一緒に行動するぐらいには親しくなれたけど、いつの間にか受験のときに同じ待合室にいた子が、僕の救出劇を盛りに盛って語るようにもなっていた。


 同級生のはずなのにさん付けとか敬語で話しかけられたリ、先輩からは王子って揶揄われたり、一部からは姫って聞こえるし、本当にもう何なんだこの状況。やめてください。



 入学式も6人で新品の制服に袖を通して並んで座り、船を漕ぐやつに肘打ちしているうちに、新入生代表の挨拶で呼ばれたから、僕が返事をして立ち上がると周りがざわついた。


 壇上に上がって、全校生徒や教師や保護者をざっと見渡したら、師匠がふわふわ浮いて手を振ってるし、やっぱりブランとノワールのあの珍しい真っ白と真っ黒な頭は見当たらないし、そういえば僕が助けた子が男子寮でお嬢って呼ばれてるけど合格したのかなあ、とかいろいろ考えながら式辞用紙を取り出して広げ、すぅっと息を吸う。


「さわやかな秋風と共に、僕たち100名は王立学校中等部の1年生として入学式を迎えることが―――」


 聞きなれないマイク越しの僕の声に、そういえばまだ声変わりしてないなあ、なんだか子どもっぽくてやだなあ、なんてぼんやり考えながら100人の顔を順に見ていき、目が合うと手を振ってくる女の子は無視して、口角をにやりと上げる見覚えのある男の子にはにやり返して、なんてふざけながら挨拶をしていたけど、特に咎められることもなく挨拶を終える。


「―――皆様、暖かいご指導のほど、よろしくお願いします。新入生代表、クリス」


 挨拶を終えると今度は会場全体がざわつくし、そんなにざわつくようなことしたっけなあ、なんて思いながら座席に戻ると、一緒に会場に来たメンバーのうちの1人で、隣に座っていたテッドが僕にそっと耳打ちした。


「新入生代表が平民でビビってるぞ、よくやった」


 寮に入るのは平民ばかりだからか変に気を使う必要がなくて楽しかったけど、そういえば学校には貴族も通ってるのかあ、仲良くできればいいけどなあ、なんてのんびり考えていた。



 中等部は1学年10クラスで4学年あり、春に300人、秋に100人が入学し、合計400人を1クラス40人に振り分けている。


 ちなみに僕のクラスは1-C、春組が男16人女14人、秋組が男7人女3人、貴族は13人でうち7人が女子という構成だった。


 僕たち秋組にとって今日は入学式だけど、春組にとっては始業式で、午前中に自分のクラスとか座席を確認して、軽い歓迎会みたいな中で自己紹介も兼ねた交流があって、春組は一足先に下校、午後から秋組が講堂に集められて、教科書とかジャージとか、いろいろ必要なものを受け取って、ガイダンスを受けて下校した。


 寮に戻れば、公式な学校行事的歓迎会ではなく、非公式な寮内での歓迎交流会が、春組の生徒主導で行われて、先生に見せられないなあ、って感じの下品な一発芸とか、今まで僕の生活とは無縁だった下品な本とか、どこぞのクラスの誰が可愛かった、とか、誰の胸が大きかった、とか、つまり年相応の下品でド直球な男子会で、正直言ってめちゃくちゃ楽しかった。



「クリス、お前見た目の割にいい性格してるじゃねえか」


 僕の右隣の部屋に入ったレジナルド、レジーは、赤味の強いベリーショートの茶髪で、僕より2つ年上だから、背も高くて声も低くて大人っぽく見えるけど、それだけ下品な会話も慣れてて、僕がのりのりなのが意外だったみたい。


「レジーは見た目通りだね」


 僕の返しにぶふっと吹き出すような笑いをしたのは、口の中に何も入ってないといいけど、僕の左隣の部屋に入ったアルダス、アルで、黒っぽいストレートのマッシュヘアの紫髪は、童顔なのもあって幼く見えるけど、同い年の僕と並べば年上扱いされて喜ぶような、僕に負けじとなかなかいい性格をしている。


「おい、このマセガキがっ」


 レジーは咽たアルに文句を言いながらも背中を擦る、いや殴る?面倒見のいい兄貴分で、先輩たちともすぐに打ち解けていたし、レジーが隣の部屋に来てくれてよかったなあ、って思う。


 入学式で隣に座っていたテッドは僕の向かいの部屋で、両隣の部屋のエドウィン、エドとポールにジュースを注いでご機嫌だけど、どうしてあんなに赤ら顔なんだろう、アルコール入ってないよね、なんとなくウザ絡みしてくるベレフ師匠を思い出してしまう。


「おーい飲んでるかー!」


 オレンジジュースの入った瓶を楽しそうに振り回しているテッドが、少し長めの茶髪にゆるい癖毛と赤ら顔のせいで、ずいぶんふわふわとした見た目で、ふらふらと近寄ってくる。


 酔ったベレフ師匠を適当にあしらうようにやり過ごそうと身構えていると、緑がかった黒髪ショート眼鏡の、トッシュさんに比べればだいぶ優しい目つきをしたエドがテッドを取り押さえてくれて、さすが1つ年上なだけあるなあ、なんて感心した。


「すまんクリス、こいつの頭を冷やしてくる」


 あああぁぁぁぁ、と少し抵抗しながらも、楽しそうに叫んでいるテッドが引きずられていくのを、取り残された小柄な男の子と見送る。


「すごいなあ……」


 苦笑しているこの子は、少し長めの青みがかった銀髪、が少しくすんで灰色っぽい髪をした、1つ年下のポールで、僕より小柄だから親近感が湧くけど、周りからどっちも同じくらい小さいと言われたり、年下のポールと同い年扱いされるのだけは受け入れられない。


 ポールが加わったから、少しだけ上品に互いのことや学校生活への期待、噂話なんかで盛り上がったり、新入生に片っ端から声をかけまくってる先輩達と舌戦を繰り広げたり、同年代との会話っていいなあ、ってすごく実感した。



 次の日から、王子とも姫とも呼ばれなくなった代わりに腹黒って呼ばれるようになった。おかしいなあ。

ありがとうございました。

緊張しろよッ!

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