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episode 17 : Blanc

めっちゃ1が並んでますよ! わんマンスのわんわんデーですよ!

わんわん行ってみますか!

 なんとなく、違いは感じていた。



 僕達は狼として産まれたし、狼だと思っていた。

 ただ、母やオードとは、何かが違った。

 クロの近くは心地よかった。


 僕達は狼として成長していった。

 やはり、母とオードとは、何かが違った。

 クロとは頻繁にアイコンタクトをとった。


 僕達は1人の人間と仲良くなった。

 どうやら、母とオードとは、何かが違った。

 クロと同じものを感じた。


 僕達は1人の人間、クリスから魔法を学んだ。

 やっと、母とオードとの違いが分かった。

 クロとクリスとの共通点も分かった。



 魔法が使える、魔力を身に宿せるというのは、どうやら知性にも関わってくるようだ。

 明らかに母とオードの動きと僕とクロの動きに差を感じた。

 クリスの言葉を理解しているのも僕とクロだけのようだった。


 ただ、違うというだけで、だからどうしようとは思わなかった。


 だというのに、魔法を使ってからというものの、ベレフコルニクスから以前に増してより見られるようになった。

 ベレフコルニクスは母とオードより魔力を宿していたけど、僕やクロ、クリスより断然少なかった。

 どことなく居心地の悪さを感じたのは、視線のせいか、魔力のせいか、きっと両方だったのだろう。


 だから、突然襲ってきたときは驚いたけど、やっぱりそうかとも思った。

 何度かり合ったけど、僕達がベレフコルニクスを殺すのも、ベレフコルニクスが僕達を殺すのも無理だった。


 そして深夜に、よりにもよって、母とオードを狙ってきた。

 僕達の魔法は何故か通じないし、逃げるしかなかった。

 卑怯なヤツだ。

 絶対に許さないと思った。



 特に行き先は無かったから、森を適当に走っていた。

 ただ、育った場所から離れれば離れるほどに、なんとなく体調が悪くなっていった。

 そんな時、また人間に襲われた。


 いくら体調が悪くても、いくらイライラしていたとしても、もっと周りを見るべきだった。

 魔法を使えない母とオードは真っ先に狙われ、殺されていた。

 許さない、殺してやる、それからは怒りに任せてクロと一緒に全員殺した。


 体調の悪さも、気分の悪さも酷かった。

 母とオードを殺された。

 母もオードも動かない。

 真っ先に狙われた。

 真っ赤に染まった。

 どうしてだ。

 僕達が何をした。

 母とオードが何をした。

 ふざけるな。

 恨んだ。

 許さない。

 憎んだ。

 絶対に許さない。

 腹が立った。

 殺し尽くす。

 悲しかった。

 殺し尽くしてやる。

 寂しかった。

 根絶やしにしてやる。

 虚しかった。

 1人も生かさない。


 ただ、それ以上に、お腹が空いていた。

 いろんな感情が溢れて、頭の中がぐちゃぐちゃで、冷静に考えられなかった。

 衝動に任せてそいつらを喰った。


 赤かった。

 美味かった。

 白かった。

 美味かった。

 滴っていた。

 美味かった。

 濃厚だった。

 美味かった。

 硬かった。

 美味かった。

 柔らかかった。

 美味かった。

 弾力があった。

 美味かった。

 筋があった。

 美味かった。


 人間は、美味かった。



 喰い尽くしてから、なんとなく、魔力が足りなかったんだと、気づいた。

 なんとなく、コイツらが研究者で、ベレフコルニクスも同類で、「魔物」であるらしい僕達を捕獲して実験しようとしていたことが、分かった。

 そして、コイツらの肉を、骨を、内臓を、脳を喰い尽くして、なんとなく、人間の真似ができる、気がした。


 あの人間を喰った結果だと、理解した。

 喰えば奪えるのだと、理解した。



 研究者達にやり返すために王都に行こうと思った。

 よく覚えていた、見慣れていたクリスをイメージして人間の姿になった。

 研究者達が身に着けていた、血だらけのローブを羽織ってクロと一緒に走った。


 森の外に出れば走りやすかったけど、たくさんの人間に遭遇した。

 話しかけてきたけど、誰も信用しなかったし、する気もなかった。

 唸って、逃げて、時には攻撃して、それでも冒険者達に捕まった時は終わったと思った。


 いろいろ聞かれたけどひたすら黙っていた。

 勝手に名付けられて、服を着替えさせられて、ご飯を食べさせられて、テントで寝させられた。


 何度も逃げようとしたけど、何度も捕まった。

 狼に、「魔物」に戻ろうかと思ったけど、どこから研究者達が来るか分からないから戻れなかった。

 結局、言葉や常識、旅の仕方、戦い方、いろんなことを教え込まれながらもついて行くしかなかった。



 そして、王都に着いた。

 クロは前に出て戦う力を学んだ。

 僕は後ろで支えて戦う知識を学んだ。


 逃げる機会を窺い続けた。

 ひたすら力を、知識を、金を貯めた。


 暑い夏の日だった。


 一際人間が多い夜、冒険者達の監視の目が緩んだ。


 逃げた。

 屋根の上に移動した。



 夜空に火が舞っていた。

 僕達は、姿を変えることにした。

 15歳に見えるように。

 動きやすいように。

 感づかれないように。



 まず何をするべきか。

 手がかりが、情報がない。


 手がかりを、情報を得よう。

 静かに、早く。

 あらゆる手段で。



 僕達は。


 俺達は「カイラル」。

 あらゆる武器を、魔法を使う。


 僕達は「グラ」。

 隠密活動を得意としている。


 俺達は……。

 シロと、クロだ。


 いつか果たす、復讐のために、今だけは。

(U^ω^)わんわんお!

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