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1 出会います

初めまして。初投稿というヤツです。頑張ります。生温かくお見守りください。よろしくお願いします。

投稿時刻は11時、わんわんタイムです。

 家の裏庭に犬が住み着いた。




 早朝、小鳥達のちゅんちゅんじゃなくてジュジュジュジュジュみたいな騒音で起こされて、ぱぱっと身だしなみを整えて朝食を食べて、師匠に言われた修行を一通りこなして昼食を食べて、森に入ってウサギとか鳥とか果物とかをそれなりに狩ったり採ったりして帰ってきて、さーてウサギと鳥を捌くかあーって裏庭に出た。


 ウウウウゥゥって唸り声がするから何事かと思って周りを見ても何も見当たらないし、なのに相変わらずグルルルルルって聞こえるし、さすがに怖くなってきて膝が震えだしちゃって、ああ、今の僕ダサいなあ、なんて思いながら座り込んじゃって、ふと振り返ったら茶色い犬がいた。


 昨日土魔法の練習に小屋でも作ってみようかなあ、って思って、3メートル四方ぐらいの土を盛り上がらせたのはよかったんだけど、50センチメートルの時点で、あ、これキツいなあ、って思って中断して、なんか悔しかったから、風魔法で裏庭で好き放題に伸びまくってた雑草を刈り取って中に突っ込んどいたら、犬が住み着いた。


 ああ、なるほどねえ、たしかに、風よけにぴったりの壁と、ベッドにぴったりの草の山があれば、寝転がっちゃうよねえ、なんて思ってる間にもめちゃくちゃ唸ってるし、牙すごいし、野犬だから歴戦の戦士みたいな傷とか汚れがあって人相、いや犬相めちゃくちゃ悪いし、本当にもうやめてください死んでしまいます。


 恐くないよ、なんて言いながら近寄るような、心臓に毛が生えた人間じゃないから、とにかく贄として鳥を1羽献上したら、何投げつけとんじゃワレェって感じに吠えられまくって、ああ、僕の人生ここで終わるのかなあ、なんて思ったけど、投げたのが鳥だって気づいたら、僕をすごいチラ見しながらも黙って美味しくいただいてくれたから、一目散に家に逃げた。


 その晩は窓も扉もすべてがっちり施錠して、パンと果物だけ食べてさっさと寝た。




 次の日もジュジュジュジュジュって騒音で起こされて、いつも通りに顔を洗って着替えて、朝食を作ろうと火魔法を使おうとしたときに、犬のことを思い出して、心臓がドックンって跳ね上がった。


 犬にバレないように、音を一切立てないようにパンと果物だけ食べて、抜き足差し足で部屋の中央に座り込んで、でも師匠に言われた通りに修行しなきゃなあ、外に出なきゃなあ、って思って、でも死にたくないしなあ、ってうじうじしてたけど、別に外に出なくてもできる修行だったから、そのまま部屋の中央で修行した。



 後から思ったけど、火を使わない意味が分からないし、音立てなくても犬が相手だから匂いでバレてるよね。



 昼食を食べようと思ったけど、さすがに火を使わなくても食べれる食材が尽きちゃってて、ああ、もう僕は飢え死にするしかないんだ、なんてガクガク震えてたんだけど、餓死よりも戦死の方がカッコイイかな、って思って、火魔法を使ってスープを作って食べたら、昼だけどまるで最後の晩餐かのような美味しさに泣けた。


 それからは腹を括って、餓死より戦死、餓死より戦死、って唱えながら、扉を開けた瞬間に目の前に犬がいることを想定して、僕が使える一番強い風魔法でぶっ飛ばす心づもりでじわりじわりと扉に近づいて、でも実際はへっぴり腰でそおっと扉を開けて、隙間から外の様子を窺ってみたら、犬がいなかったから急いで隙間からするりと抜け出して、鍵をかけて街に逃げた。


 街に行くときって、だいたい薬を売って食材を買うぐらいしかしないんだけど、その日ばかりは犬に噛み殺されたくなかったから、脚とか腕とか首とかが守れるように、適当に防具を見繕ってもらって、あと唐辛子を磨り潰して水に溶かして5センチメートルぐらいのカプセルに詰め込んだ、エグい道具も5個買った。



 次に街に行ったときに、まるで戦場に行くかのように、思いつめた表情で物騒なものを買っていくから心配した、また会えてよかった、ってお店の人に言われて、ちょっぴり恥ずかしかった。



 エグいカプセルを潰さないように握りしめて、周りを警戒しながら、大きく迂回して家の裏庭に向かったけど、どうしてこの家は街外れのこんな自然の中にあるんだろう、師匠って馬鹿だ、早く帰って来てくれないかなあ、なんて考えるぐらいの余裕はあった。


 じりじり裏庭に近づいて行っても全然犬の姿が見えないし、まあ僕が作った土壁の中にいるからだろうけど、不意打ちするべきかなあ、でも唸られただけでまだ何もされてないしなあ、なんて考えながら、そおっと土壁の内側を覗き込んでみた。


 犬が増えた。


 茶色い犬のお腹に黄土色と黒色と白色の毛玉があって、あれえ、どこから持ってきたんだろう、なんてビックリしちゃってガン見してたんだけど、茶色い犬は僕をガン見はすれど唸ってこなくて、それでも僕はずっとガン見だし、毛玉たちは動いてるし、そうか、こいつら子犬かあ、って気づいたときには日が傾いてた。


 思い返してみれば、昨日から今日まで、茶色い犬はずっと草の山に寝転がっていて立ち上がらなかったし、お腹が大きかった気もするし、そういえば犬って群れで生活するもんじゃないっけ、とか、きっと何か事情があるんだろうなあ、とか、お母さんも大変だったんだねえ、お疲れさま、なんて思いながら、さっきまで退治しようとしてたことを棚に上げて、軽く森に入って鳥を1羽撃ち落として献上した。


 オードとクロとシロが元気に育つといいなあ、なんて勝手に名付けてみたりしながら、蒸かした芋を食べて寝た。

このような拙作をお読みいただきありがとうございます。最後までお付き合いいただければ幸いです。

わんわんお

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