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May √B

「僕に任せて。」


僕は意識を失っている彼女を横に抱きーーいわゆるお姫様抱っこだ、保健室へと運んだ。



「ただの貧血だから。ゆっくり寝かせてあげてね。」

「はい…。」

保健室の先生が告げた言葉に少し気が抜けた。

「せんせー、グランドに赤い水溜まり出来たー。ちょっと来てー。」

「はいはい、今行きますよ。…二条君だったよね?もし時間があるなら、結衣菜ちゃんが起きるまで側にいてあげてね。」

「あ、はい。」

「…まったく、がんばりすぎよ…。」

最後にそう言って、生徒の方へ向かって行く。外ではまだ、彼女のチームが戦っている。


ヘアゴムの跡がついて、少し跳ねた髪。雪のような肌。細い体。

外から聞こえてくる歓声。どうやら、彼女のチームが勝ったようだ。

「よかったな…。」

僕は、彼女の顔に少しだけ近づけて話しかけた。

「…みんな神城さんの分まで頑張ってたよ…。」


「…ん?」

さっきの保健室の先生の言葉を思い出した。

ーーがんばりすぎって…あ、来月期末テストだっけか?転校してきて、まだ授業に慣れないんかな。だから必死に勉強を…


「ん…あれ…透くん…?」

「あ、起きた?大丈夫?」

「うっ…うん!あ、先生なんか言ってた?」

「ああ、貧血だって。」

その言葉を聞いて彼女は、表情を緩めた。そして、短くお礼を言った後、窓の外を見た。


「…おつかれ。」

少しなに?と首を傾げたが、すぐに窓の外へと視線を戻した。


保健室の中には心地よい風が流れ、外とはまったく違う空間から見ているようだ。


「透ー!女子勝ったから山先、アイスおごってくれるってよ!おまえ…もこい…あ…」

僕が口の前に立てた指と、優しい風に包まれて目を閉じている彼女を見て、幸助は口を閉じた。

ただ、この空間にぴったりの白いシーツとカーテンが僕らを包んでいた。



こうして2年6組は、優勝とアイスを手に球技大会を終えた。

しかし、1人の男だけがなにも手にせず、むしろ減ってしまったのである。


「ちくしょぉ、あいつら本気で優勝するかよぉ。ちぃとやる気が出るような呪文を唱えてやっただけなのに…。今月は朝飯抜きコースかもな…。」



▽次回

「Jun √B」

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