May √A
「僕に任せて。」
彼女は足を抱えていた。もしかしたら折れてる可能性だってある。とりあえず、保健室だ。
「捻挫ですね。」
保健室の先生はさらりと告げた。どうやら、スパイクの着地のときに足をひねったらしい。
「今日はもう休んでおきなさい。悪化したら治るのも遅くなって、今後にも響きますからね。」
「はい…。」
「せんせー、血ぃ流してるやついるから来てー。」
「はいはい、今行きますよ。」
そう言って、先生はどっかへ行ってしまった。
「ごめんね、透くん。」
「え?あ、いや…。」
保健室のベッドの上で、窓の外でやっている試合を見つめる。その目は少し潤んで、寂しそうに見えた。
「あのさ、ほら!神城さんのチーム、7人だったからよかったよね!」
「そうだね、私が居なくてもみんな…」
「じゃなくて!1人抜けても…いやちがっ!みんな神城さん倒れた時すっごい心配してたし、それに!なんだっけ、ぁあ、途中終了?不戦敗か!じゃなかったし…あーなにってんだか…。」
「ふふっ。」
保健室のカーテンとシーツが、白く輝きを取り戻していく。
「ありがと。」
「え?」
「私を運んでくれて…慰めてくれて。助けてくれた。」
目線が90度向きを変える。
「今、すごくうれしいよ。」
彼女の笑みがこぼれる。
鼓動がはやくなる。体の熱が上がる。さっきまで涼しく感じた風が温かく感じる。
「また、助けてくれる?」
「もちろん。」
「あ、勝ったみたい。やたっ!」
ぺちんっ!と、手と手を交わす。
「次、決勝戦だって!」
「じゃあ僕、近くで応援してくるよ。」
「いってらっしゃーい!」
「おう!」
結果、2年6組女子Aチームは優勝。担任の先生にアイスのおごりをとりつけて…。
ーーそういえば、おんぶしたとき体柔らかかったな…。
こうして熱くて涼しい球技大会は終わった。
▽次回
「Jun √A」