May
「二条くん。自分のチームのメンバー書いてくれる?」
「あぁ、分かったよ。」
ーー今年はバレーやるんだっけか。
ここ中曽根高校では、毎年5月に球技大会が行われる。そして、毎年競技の種類が変わる。去年はサッカーだった。
「はい、いいんちょ。」
「どうもー、というかその『いいんちょ』呼び、どうにかしてよ〜。もう委員長じゃないんだから。」
「そうだったな。」
いいんちょこと若宮美里は、1年のときからの付き合いだ。去年クラス委員をやっていたが、今年はもうやらないらしい。
「でもなぁ。もう僕の中では定着してしまったのですよ。接着剤で付けられて簡単には取れないのですよ。」
「なーにそれ。まぁ、いつかはちゃんと呼んでね!」
『いいんちょ』は笑いながら、上の方で1つに束ねた髪を揺らしながら他のとこへ行ってしまった。
*
「…これより平成28年度中曽根高校、球技大会を始めます。…」
開会の言葉を終え、学年別のトーナメント戦が始まる。
「今日は手加減しねえぞ!こってんぱんに倒してやるからな!」
「おーおー、堂々と負け宣言か?幸助。死亡フラグだぞ。」
「甘いな透くんっ!こっちとら野球部の幹部、葉ノ本鉄也様がいらっしゃるんだぞ!」
「ほとんど人任せじゃねーか!まあ、こっちにも爽太様がいるからな。」
「君も僕任せだよね。」
「いわれてやんのー。ぷぷぷー。」
うちの高校ではクラス対抗ではなく、完璧チーム対抗である。クラス人数も30人ほどと少ないため、クラスで男女それぞれAとBチームに分かれる。もっともクラス数は1から8組まであるので、1日かけてやることになる。
そして3回戦、僕たち2年6組Aチーム対Bチームの試合が始まった。
「あーあ、暇すぎ。」
「ほんとだよねー。」
「せっかく俺たちが王の座を譲ってあげたのに、お前ら次の試合で速攻負けちまうんだもんな。」
木の陰で涼む僕たち。まだ5月上旬だというのに蒸し暑い。この暑さは心理的な面もあるだろうが…。
「よし、女子のかんさっ…おっ応援にでもしに行くか!」
「そうだね。『応援』に行こうね。」
「ちょっと爽太さん、笑顔が怖いですよ?」
「女子勝ってるみたいだし、丁度いいんじゃないか?」
ーー鉄也ナイス!
「そうと決まれば、れっつれっつー!」
「あれ、どうしたの?透くん。」
「もしかして、もう負けちゃった?」
神城さんといいんちょだ。
「あぁ。4回戦完敗です…。」
「あっ!勘違いすんなよ!俺たちは3回戦で負けたからな。」
「そこドヤるとこ?勘違いもなにも、なんも思われてないと思うよ〜」
幸助が木村優花に打ちのめされてる。優花は根っからのスポーツマンだ。背は低いが、あの幸助を言い負かすような気の強い元気な少女で、ショートカットが似合っている。
「透くんたち、もしかして応援しに来てくれたの?」
「まーね。暇だし。」
「この後試合だから見ててね!」
「その為に来たんだからな。頑張れ!」
試合が始まった。
「透、いつの間に神城さんと仲良くなったんだ。」
「んー、ちょっと前かな。少し喋るようになっただけだよ。」
「へー。」
僕たちはまた、影の中でたわむれていた。だが、応援に行く前とは違って蒸し暑さは感じられなかった。それも、女子のゆれる…じゃなくて散る汗と笑顔のおかげであろう。
「いつもよりうなじがおおい。」
「何言い出すんだ幸助。」
「だってさ、いつもと違う髪型って萌えるじゃん?」
その言葉にモテない男共は一斉に頷く。もちろん、モテない男の中に爽太はいないのだが。
ーーそういえば、神城さんも1つに束ねてたな。いいんちょは…いつも通りか。
「ちょっと!大丈夫⁈」
1人の女子に相手チームの子までも集まってくる。
ーーなんだなんだ?
「結衣菜ちゃん!」
ざわめく。
「やべーんじゃね、あれ。」
ざわめく。
僕はとっさに駆け寄った。後から他の男子も駆け寄ってくる。
「ね、どうしよ…。」
「いいんちょ……僕に任せて。」
▽どうする?
【背負って保健室へ】→May √A へ
【横に抱いて保健室へ】→May √B へ