April
……リジリ…ジリジリジリジッ パチッ!
「…ぅう。」
鉛のような目蓋を持ち上げながら身体を起こす。
「…身体おもぇな…。」
昨日、神城結衣菜に言われたことが頭に残っている。そのせいで今この状態だ。
玄関を開けると青空に輝く太陽…。
「…朝日のバカヤロー…。」
と、隣の家のドアが開いた。
ーー「…あのね。…」
橙を黒が蝕んでいく。
「わ……あ、いや何でもない…!また明日ね!」
彼女は出て来た家の中へ入っていったーー
「あっ…。」
思わず声を漏らしてしまった。聞こえてないだろうか。
「おはよう。」
優しい笑顔で彼女はそう言って、歩き出した。昨日の事も感じさせない様な自然な態度で。
ーーあんな風に寸止めされたら逆に気になるだろ。最近はわざとそう言ってからかう奴もいるが、今回のはなんか違う。
そんな風に彼女にまどわされた心で学校へ向かう。
重い身体を引きずって迎えた昼休み。
「やっとメシだぁー。」
幸助も疲れているのだろう。新しい春のせいで。
「伏見君も食べない?」
僕の隣の席の子だ。彼は短く低い返事をして頷いた。亜麻色のさらさらの髪とすらりとした背が、いかにもクールな印象を与えている。
「伏見君は…」
「爽太でいいよ。」
「あっ!じゃあ俺も呼んでいい?」
頷く彼に、ガッツポーズと片手に納豆唐揚げマヨおにぎりを持った幸助。
「爽太はお弁当、自分で作ってるの?」
「姉貴が作ってくれる。」
「へー、お姉さんいるんだねぇ。」
「まぁ。」
「いいなぁ。俺一人っ子だからさー。お姉ちゃん優しいんか?」
「別に普通。」
「そっか!まあ、普通が一番だよな!」
「まぁ。」
僕と幸助は思った。
(会話続かねぇ!どうにかしろ透!)
(会話続かねぇ!どうにかしろ幸助!)
結局、ご飯タイムは無言のまま終えた。
ーー授業まで20分かぁ。いつもより早く食べ終わったなぁ、おかしいなぁ、あはは…。
▽どうする?
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