プロローグ
高校生活にも慣れてきた2年目の春。当たり前の景色も違って見える。蒼と白のグラデーションが塗られたキャンバスに、薄紅の斑点が舞い、その斑点が作った路は僕を新しい人生へと導いてくれるようだーー
「よっ、透。今年も同じクラスだな!」
当たり前のように幸助は、僕の肩を叩いて言った。この台詞を聴くのは何回目だろうか。
「またか…せっかくお前から離れて新しい友達が出来ると思ってたのになぁ。」
「は?お前1人で友達つくれんのかよ。」
「っ…」
「今までの俺に感謝しろよ!」
悪戯っぽく笑う友人に僕は気のない返事をする。
そう、こいつ路木幸助と僕二条透は世に言う腐れ縁だ。中1に出会い、3年間共にバカしてきた。あいつはいつも少し色素の薄い癖がかった髪をなびかせ、飾り気のない顔で笑顔を向ける。そんなとき、突然雲から太陽が姿を見せたような感覚になる。
「…かなわないな…」
当たり前の日常が今年も何気なく始まろうとしていた。
ーー「……ぃいぞ。ほぉら、入ってこーい。…ったりぃ…。」
どんだけダルそうな教師なんだ。と、始業式の1日後にも関わらず、クラス中の気持ちと表情が団結した瞬間だった。が。
コツコツと上履きを鳴らし、肩甲骨辺りまでの墨汁にしたしたような黒髪がシルクのように揺れ、止まった。
「はじめまして。今年から転入してきました、神城結衣菜と言います。えと、高校生活をみんなと楽しみたいので、よろしくお願いします。」
彼女は、真っ白な肌を桜色に染めながら告げた。人柄の良さそうな印象から、男子のみならず女子も彼女に注目した。
ーー…と…るくん…
突然、何かを思い出した気がした。だが、すぐに記憶の水の中に潜り込んだ。慌てて、何色も混ざった水の中に手を入れるが、届かない。
大事なことだったのだろうか。
いや、大丈夫だろう。いつか思い出すだろう。
そんな事を考えてHRを終えた。すると、途端にあの転校生の周りに人間結界ができる。こんな光景、現実で見れるとは思ってなかった。
「お前も負けてらんないな。」
ひょいと現れた幸助の言葉。
「は?」
「お前、昨日俺から離れて彼女作りたいとかいってただろ?」
「耳に何かつまってんじゃねーの。僕はと・も・だ・ち、と言ったんだよ!」
「んな事どっちだっていいから。それより、ほんと美人さんだよなー!ってか2年からってのも珍しいよなぁ。」
僕が真っ直ぐに投げたボールを幸助がグローブを投げ捨てて、バットであらぬ方向に打ち返して来るような会話のキャッチボールだ。
僕は、ボールを追いかけることは諦め、幸助から飛んでくるボールを横流しにする。
そして、1時間目の予鈴が鳴った。
*
「うっしゃ!帰えろーぜ!」
「ぁあ、ごめん…今日買い物があるから…。先帰っててくれ。」
「なんだ。じゃ、明日ジュースおごれよ!じゃあな!」
僕は小さい頃、父親を亡くした。だから母は毎日仕事を、僕は家庭のことを任されている。兄弟がいないことが唯一の母の仕事を楽にする救いだろう。
しかし、幸助はこの事を哀れむような眼差しを向けることなく、いつだって笑顔を向けてくれる…。
黒と橙の世界。猫の模様が入ったエコバッグを手に持ち、家路を急ぐ。
そういえば、最近隣に越してきた家族がいたな。表札には何て書いてあっただろうか。
家の前まで来た時、その隣の家の玄関が開いた…。
ーーあのシルクのような黒髪は、そう…
「…二条透くん?」
驚いた。僕の名前を覚えてくれてるなんて。
「ぁ、はい!今日転入してきた神城さん…ですよね。まさか、隣だったとはびっくりしたなぁ!あはは、はは。ななーんてね…。」
「え?あ、そうだよね!そう…。」
何か会話に違和感が…。どんだけテンパってんだよ透。
彼女は何を思っているのだろうか、少しうつむいて、髪を耳に掛ける。
「…あのね。…」
と、いうことでまったりと始まりました!初投稿なので至らない所がたくさんあると思います。何卒よろしくお願いします。
さて、この物語はギャルゲー⁉︎小説⁉︎という感じです。なので、次回から主人公の言葉や行動の選択をします。そして、読み進めてより良い自分好みのエンディングを目指してください。
周回play?read?をして何回も読んで頂けたら幸いです。楽しんで下さいね!