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五彩の巫  作者: 桜ゆっけ
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華苑 花蓮

 華苑花蓮(かえんかれん)には記憶がない。


 否、定着しない。

 どういうわけか、初等教育が始まる少し前―――ちょうど、六歳になる前日から後のことは、寝て起きると"全て"忘れ去られてしまうのだった。


 だから、彼女の中では、まだ五歳のまま時が止まっている。

 学校へも、行ったのは最初の三ヶ月ほど。少しずつ前へ進んでいく級友たち。自身とのあいだに、じわじわと浮き彫りになるズレを自覚することに、そう時間はかからなかった。


 学校へは行かせられないし、かと言って、家の中に閉じ込めておくわけにも行かない。そう判断した華苑の家は、ひとまず、やりたいように日々を過ごさせることにした。後天的に表れた症状だからいつかきっと治る、そういう考えもどこかにあったのだろう。



 止まった日から九年。依然として五歳の彼女は、明日、十五歳の誕生日を迎える。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~



 わたしは、あした6さいになります。


 でも、おなじ6さいのみんなよりも、わたしはずうっとおおきいです。


 それがはずかしいから、おひるくらいまでは、おでかけができません。


 おそとにでると、ゆうくんとむっちゃんのおかあさんがいたので、あいさつをしました。なんだか、きのうのお花みしたときよりもずうっと、げんきがないようにみえました。おこられちゃうからいわないけど、わっとおばさんになってしまったみたいです。


 お花ばたけはおうちから20ぷんくらいかかるのですが、きょうは10ぷんでつきました。ゆうがたの5じになるまで、だいすきなお花ばたけであそびます。


 きょうはなにをしてあそぼうかなあ。


 しろつめくさのかんむりづくり。よつばさがし。なずなをならしたり。おおばこすもう―――はひとりぼっちじゃできないか。


 すこしまよって、まず、はしってみることにしました。かけっこをすると、むっちゃんにはかてないけど、ゆうくんにはかてます。まあまあとくいです。


 よういどん、とこころのなかでいって、はしりはじめました。かぜがとてもきもちいいです。


 いつもははしりおわったら、おそらをむいてたおれますが、きょうはすぐに、なにかにつまづいて、ころんでしまいました。いたいです。お花ばたけじゃなかったら、ないていたかもしれません。


 ないてはいないけど、めをこすって、なににつまづいたのだろうとおもって、うしろをみました。


 そこにいたのは、―――こうこうせいくらいの、おとこのひとでした。

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