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苦肉の策は苦笑い

掲載日:2015/09/15

「それでねその子いつもボーッとしてるんだよね。気が利かないって言うか、消極的っていうかさ」


俺も今ボーッとしてるよ……とはいえない。さっきの話が頭に残っていて、きちんと相槌すらうってない。


「あー、っていうかその両方なのかもね。普段はそれでいいけれど仕事中くらいはしっかりして欲しい。でもあの人の凄いところは職場に気の許せる人がいないのに仕事場を変えないで出勤することなんだよね。Web系エンジニアは自分に職場が合わなかったりしたら変える人も少なくないけれど」


その子を庇う訳じゃないけれども、人と話すのが苦手であったり鬱病であったりやる気はあるけれどなかなか治せなかったり知能が少し人より劣ってたりするのではないだろうかとも思う。声かけたりコミュニケーションとればその人も変わるんじゃないのかね。と思いつつも何も言えない。


「最初はさ、その人が先輩で私が後輩だから雑用は私が代わりにやりますよって言って代わってたんだけど、最近はそれすら言ってないんだよね。むしろその人に雑用を押し付けてる。言えば動くから……言えばね」


この娘はいじめなんかする子だったろうか。


やっぱり変わってしまったのだろうか。


「でも、それはその人に仕事を与えてあげていることになるでしょ。それと、そこで4年働いているのにまだ自分から意見をいわないし向上心がないっていうのかな、なんのためにwebデザイナーになったの?っていつも思う。

だから先輩たちもその人には当たりが強いよ。その人にイライラしちゃうのはしょうがないよね。だって皆忙しい中、一人だけ必要最低限のことしかしないってないでしょ」



俺が社会に出たときもそうなりそうで怖い。俺は今フリーターで仕事は簡単だから今はまだ大丈夫。


「それでも何度か話しかけているんだけどあまり口を開いてくれないんだよね。好きな映画は?とか聞いても単語+敬語だけでキャッチボールができない。だから私から、私はあの映画が好きなんです~この俳優が~みたいに言うんだよね」


いじめではなかったんだな。

気にかけてるみたいだ。


「でも、彼氏はいるんだってさ。彼氏の話になると性格が変わったようにツラツラ聞いてもいないことも言ってくる。舌が2枚以上あるんじゃないかって思うぐらい」


おぅ、ADHDとかなんじゃねえのかそれ?本人も悩んでるんじゃねえかな?


「ちょっとトイレいってくるね。ウーロンハイ追加で頼んでおいて」


そう言うと彼女はジョッキにあと少し入っているビールをこくりとのみほす。その時喉がこくりと動いて少しかわいいと思ってしまった。


「おう」


ところで、大丈夫かあいつ1時間でビール7杯飲んでるけれど。俺と付き合ってた頃は未成年でソフトドリンクか水だけしか頼まなかったのに。まぁ20歳だから良いとして、あんなに変わっちまったなんてな……


あんなに変わっちまったっていうのは外見のことじゃない。制服着せれば高校生といっても疑問は持たれないだろう、背は145cmでやや童顔だから今24だが18歳の時とあまり顔や体形は変わっていない。


だから変わっちまった部分は内面の話。

最初は久しぶりにあって嬉しかったんだけれども、あの話を聞いて気持ちもなんだかテンション下がった。


お陰で、酒に弱い俺も気をまぎらわせようと酒をもうビール2杯に梅酒ロック2杯のあわせて4杯だ。


どう変わったかというと、簡単に言うと男遊びをするようになったってことだ。俺と付き合ってた頃は俺だけを見て浮気などしてなかったのにな。さっきあなたの時は浮気していないって言ってた。当たり前のことだけどな。


今は彼氏はいないらしい。彼氏に何だかんだ理由つけられ別れたのだと。そしてその付き合っている途中何人かとあいつは浮気してたって俺に告白してきた。


でもさぁ、んなもんわざわざ俺に言わなくたっていいじゃないか!!


隠しておいてくれよ!


何が「私のこと幻滅した(笑)?」だよ。するよ!!当たり前だろ!なんなの?悪いことしちゃったってことを話す自分に酔ってるの?酒には酔ってないのに?


で、その振られた後は男遊びし始めただってよ。 もう彼氏にふられて2ヶ月たったけど6人と寝たんだと。そのうち1人は違う職場の彼女持ちの美容師。一夜限りだけど。まぁ全部誘ったんじゃなくて酔ったとこ誘われてそれに乗ったって形らしいけれどね。



まぁ、もう俺があいつにフラれてからの出来事だからどうこういう筋合いなんかないけれども、好きな人がそんな風に変わるなんてショックが大きすぎる………


そう、まだ彼女のことが好きなんだよ俺。


俺があいつと付き合っていたのは高1の春から高校卒業して1年目の秋の約3年間。


高校の内の約3年間は本当に大きい。高校には友達にも恵まれて、周りの連中はしてなかったけれど俺は勉強そこそこ頑張ってたから成績もよかったし 部活も毎年県大会上位だった。


そこに彼女…勉強、部活、友人関係そこそこだったからそこにプラスされた彼女っていう存在はさらに凄く輝くように見えたし、心が相乗的に満たされるように感じた。


俺が肺や胃の病気で入院していたときも毎日病院に来てくれて遅くまでそばにいてくれたんだ。大袈裟にも「死なないで」と涙ぐんだり、「可愛い看護師さんと浮気とかしないでよ」とか可愛いこと言ってくれた。…その言葉を今のあいつに聞かせたいよ。


俺の誕生日には手編みのマフラーとか豪華な手料理とか一緒に近場の旅行とかプレゼントしてくれたんだ。俺には勿体ない女だとおもってた。


俺が大学受験に失敗して家庭内で色々あって鬱になったときも慰めて励ましてくれた。でもその時浪人中だったから俺からの連絡も自然と減ったし、会う回数も1ヶ月に1回3ヶ月に1回と少なくなってった。


俺とあいつは6、7駅ほど電車で距離がある。俺の家の近くの公園で一回会おうと言われたときはもう直感的にふられるってわかった。案の定フラれた。「好きじゃなくなった別れよう」と言われた。俺はその時大学受かったらもう一回俺から告白すれば付き合えるだろうと思いそっけなく「わかった」とだけいった気がする。


彼女と別れてから余計鬱が激しくなった。一日中ボーッとしたり、なんのために生きてるんだろうとか考えたり、夜更かしして生活習慣が乱れて。そんなこんなで俺は2浪までしちまった。


それでもこのままではダメだろうと思い、「精神病では薬を減らせ。出来れば飲むな」っていう本を読んでから更に2年かけて0にした。それと同時にファミレスのバイトを始めた。


んで昨日あいつからLINEの電話がきたので少し会わないかって言われて今に至る。


あぁ、俺のことはいいんだ、あいつはそう…純情だったんだよって話だ。


花火見て「綺麗だね」「お前のが綺麗だよ」からの見つめ合ってキスのお決まりパターンの時さえ頬を桃色に染めていた。


お世辞にも上手とは言えない似顔絵を書いてあげた時はクリックリな目でLEDライトもビックリするくらい瞳を輝かせて、ありがちな例えだけど太陽や向日葵のような笑顔を見せてくれて俺は幸せな気分になった。


「よっと、ん?どうしたの?まるで料理長が皿洗いの見習いが皿を割ったときのああ、また割ったよ給料渡したくない早く辞めないかなぁっていいたそうなときの目をしてるよ?」


ん?


「は?」


「ごめんごめん適当に言った、自分でもなにいってるかわかんないや。でも、やっと反応したね。さっき恋ばなをしてからずっと黙って考え込んでるから心配でさ。」


お前のせいだよ、お前の……

それと恋ばなと言うよりはなんかぐちゃぐちゃした昼ドラ系の話しだろうが。


「あ~、ウーロンハイ頼んでっていったのに頼んでない~すみませーん」


「あ、わりー」


店員がお待たせしましたと言って注文をとる。俺もウーロンハイを頼む。


「ねぇ、やっぱりさっきの話し幻滅したよね」


だから何故それを聞くんだ。何を狙っているんだ。

俺は苦笑いしながら


「悪い意味で驚いてたんだ。」

と答える。


「だってよ、好きな人がそんなに変わったらさ、なんかあったのかなぁって思うだろ?」


「えっ」


あぁ好きだといっちまった


「えってなんだよ、俺はお前にふられたんだぞ?未だに引きずっていてもおかしくはないだろ」


あぁと言いながら目を丸くして俺を見てくる。


「で、なんかあったのかと思って聞いてみたらさっきはなんもないよっていったから俺は混乱してたのさ。浮気なんかするような人間じゃなかったんだからよ。さっき俺と付き合ってた時は浮気なんかしてないって言葉信じるならだけど」


「そこは信じてよ」


わかってるこいつは地雷だ。ネットとかでもよく聞くタイプだ。破滅願望っていうか見下してほしいと思うって奴は大抵そうだ。また彼女にしたいとか思ってはダメだ。ていうか彼女にしてどうするんだよ底辺フリーターに何をしてやれるんだよ。


と思っていたら、彼女は手をグーにして口のしたまでもってってクスッと音が出るように目を細めてにこって笑った。

まるで今の俺の心情がわかっているかのように。


「あなたは変わってないんだね。」


お待たせしました~とウーロンハイ2杯がゴトッゴトッっと運ばれてくる。


「気がきが利かないところとか」


だからウーロンハイはお前にがっかりして放心してて頼み忘れてたんだよ。気が利かないのとは別だよ。


「高校の時からのその枯れ葉色の8000円くらいのメガネとか」


コンタクトは怖いんだよ。あと茶色と言えばいいだろうに……あ、もしかしてコイツ俺の今の状態が枯れているようで地に落ちている底辺野郎とでも言いたいのか。あってるけど。


「純情で」


俺のスマホの動画フォルダ見てから言え。

ロリもの、熟女もの、洋もの、コスプレもの、アニメ3Dまであるぞ。


「それに「優しかった」違う。」


え、違ったのか!?ちょいと恥ずかしかったぞ。


「いや、優しかったよ。でも言いたかったのは違う。なんか心から愛してくれてたって今ならわかる」


「そりゃ愛してるから付き合うんだろうが。結婚したいから付き合うだろうが」


何をいってやがる。


「ううん、なんかヤり目っていうのが結構多い。あなたが思っている以上に多い」


そう言って下に目線を向ける彼女からはぷしゅーぷしゅーと哀愁が出てきて、それが渦状に俺をモクモクと雲か煙のように包んでくる様な感覚がゾクゾクして気持ち悪くなってきた。


モクモクは隣の席の焼き肉の焼いている煙で、気持ち悪さは十中八九酒の飲み過ぎなのだけれども。



「男って女の子を性の捌け口にしてる気がする」


いや、まてよお前だって一夜限りでネトって男の子を性の捌け口にしてるじゃねーか。ていうか新しい男と付き合ってたとき浮気してたっていったじゃねーか


「…それはお互い様なんじゃねーのか?」


「私も男遊びしてたからってことかな?」


俺がうなずくと、彼女はキッと睨んでくる。


「最初は浮気なんてしてなかったわよっ。LINEも電話も無視。仕事が忙しいなら後でかけ直したり連絡くれればいいじゃない。で、会いたいっていわれた日は生理でも、なんだかんだ言われてやられて…それにあっちから告白してきたくせに最終的にはふるんだよ???アメリカで少し過ごしたいそれが夢だっただって。それは置いておいて、私が浮気した理由は」


早口にこれを言って、もう一度、「浮気した理由は」と言い、間を置いて


「本当に私のこと好きなのか確認したかったの。彼の前で浮気した相手のLINEのチャットを開いたままにしたり。この人かっこいいよね~っていって浮気相手の画像見せたり……ほかにも気付くような行動したわよ。気づいてたと思うのに気にも留めてなかった。詰め寄って問いただすでしょ普通。怒ってひっぱたくでしょ好きなら。裏切られたって思って絶望の表情を浮かべるでしょ信じてたなら」


ちょっと言っていることがチグハグなのは感情が高ぶってそこにアルコールが入っているからなのだろう。全く酔っぱらわないやつなんてなかなかいない。


「そのあとは心が弱くなって甘い口癖のせられたりしたの。酒が入っているところで。後から言われたわ、彼女持ちだからごめんって。別に本命の好きなこがいるんだごめんって」


じゃあなんで最初からその話を俺にしなかったんだよ



「ねぇ、あなただったらまた私だけを愛してくれる?私フリーターでも構わないよ?」


フリーターだぞ?高卒の……どうやって家庭を守れってんだ。俺に男のプライドをすてろっていうんか?900円週7で8時間働いたとしても、心もとないだろ。


「あなた以外にもう信じられない」


んなこといわれてもしょうがねぇよ、無理だよ。じゃあ最初から振るなよ。俺を底辺から救ってくれよ。


「好きなら、両思いなんだから。また高1の時みたいに両思いなんだから」


「付き合ってください」


こいつは俺を騙すつもりなんじゃないか。俺をからかって遊んでいるんじゃないか。キープ男にしようとしてんじゃないのか。俺の立場に同情しているだけではないのか。


気持ちが錯綜する。


俺は涙をにじませ苦笑いして、席を立ちレジで精算しその店から逃げた。現実から逃げた。


暗くなった夜空は1等星が憎たらしいほど輝いていて、俺を笑っているように見えた。


町のネオンサインは意気地無しと(さげす)んでいて。


信号機は青黄赤と穏やかな顔からダメな俺を怒っているようで


それでも俺を諦めるなよと応援するように照らしていて……



どうしろって言うんだよ


天に向かって苦笑い


「ちょっと、返事聞いてないよ!いきなり逃げないでよ。あなたは優しいから、自分に足枷をかけられても笑っているけれど、自分が誰かの足枷になるのが嫌だって知っているよ。


でも、私はあなたが足枷だと思わない」


下向いて苦笑い


「本当だったら別に私の付き合ってて浮気したことや寝たことを言わなくても祐希にはばれない。でも祐希に嘘をついて裏切りたくないから。


いえ、一度振っていてそれは裏切りだけれども、それでも真摯に向き合って振り向いてほしいから過去のことを告白したの。


祐希はいつも困ったことがあるとそうやって心がチクチクしても誰かに当たることができなく難しく笑うけれど」


美火子(みかこ)の顔を見て苦笑い


「なに、そんなキョロキョロ...一人であっちむいてほいしてるのよっ」



「もっと思ったこと感じたことをきちんと言葉にしてよ!!せめて逃げずに目をそらさずに告白のyes、noの返事ぐらいしてよっ」



心で苦笑い



俺の表情はどうだろう、泣いてるうか?

こんな自分を認めてくれる、わかってくれる人間は他にいるだろうか?

今後現れるだろうか?

過去の不貞なんてどうでもいいじゃないか、俺は何に………何にこだわっているんだ。


答えはもう決まっているじゃないか俺だって好きなんだから。



「苦笑い」



「ばか」



世界中の明かりや光が美火子と俺を祝福してくれた。

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