おもてなし
その宇宙人には目的がなかった。
「わたしのしていることは地球ではなんというのか」
ぼくが観光だろう、と答えると、
「わたしの種族には視覚がない。それでも光を観るとか、サイトをシーンすると言えるのか」と返された。
ぼくは肩をすくめたが、もちろん彼には見えていない。
まあこういう出会いもあるものなのだろう。もっと早ければよかったのに。
彼は去りぎわこう言った。
「地球は平和だ。静かで良いところだ。なかなか楽しかった。人類に出会えてうれしい。最初に出会った人類が親切だったのもうれしい」
彼には目的がなかった。
ぼくは彼を乗せた円盤にむけ大きく手を振る。
ぼくにも目的なんてものはない。持ちようがない。
円盤は光の尾を引いて宵闇に溶けていった。
最後の人類はお・も・て・な・しのジェスチャーをして、シェルターに入ってからもずっとひとりでふふふと笑っていた。