対決? その2
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
眼前に立つ川口に由樹は叫び声を上げて逃げるしかなかった。
立ち向かうという先ほどの意志や理屈の前に本能が体を動かした。
だがすぐに捕まる由樹。魔王の手は恐ろしく拘束される。必死にもがくが逃げられない。
「そんな泣かなくても」
川口結は由樹の目に浮かぶ涙を掬い笑う。
「先生は何しにきたの?」
「お、お前を倒しにきた」
もはや逃げられないと判断して覚悟を決めた由樹。
「勝負をしよう、魔王。オセロとかトランプとかバックギャモンとかて。勝ったら今戦っているのをやめてまた平和な暮らしを取り戻そう!」
「懐かしいね、オセロとか」
笑う魔王川口の目は笑っていなかった。
「もし仮にここで私が今なお爆撃してくる日本軍やら今後争うであろう軍隊との全面交戦をやめたとしてどうなると思う。平和な暮らしが帰ってくると思うの?」
「……思わない」
「どちらかがどちらかを滅ぼすまでに発展した状態で答えは一つでしょう」
「いやもうここまで来たんだ。それの正論を納得して聞いて帰るわけにはいかない」
「私と戦う?」
玉砕覚悟で魔王に特攻する自分を想像する由樹。無茶苦茶だ。答えのパターンが多すぎて吐きそうになる。
物理法則を無視して何もかもが通用しない魔王を相手取るだけで勝率などゼロだ。
何でもできる相手に有効な武器などは存在しない。それを今なお墜落していく戦闘機を見て思う。死人も出続けている。たとえ魔王が人を殺すのをやめたとして魔王への怨嗟の念は消えない。
だが由樹はそんな絶望の中で一つの可能性を見つけた。
「あ、なんでもできるって例外はないのか?」
「…………」
沈黙を肯定と受け取った魔王に由樹はある提案をした。