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合流

 「は?」

 「おぅー石橋ぃ」

 「うわ!?」

 突然、後ろから桜井の声が聞こえ振り向くと大荷物を背負った桜井が立っていた。

 ちょっと前まで気配はなくどこからともなく現れた。

 「人が後ろから突然現れたぐらいでびっくりするな、常識がないな。……殺すぞ」

 いつもどおりの不機嫌面。

 「思い出したように殺すぞって付け足さないでください」

 「魔王」

 由樹を無視してぐっちゃんの元へ。いまだに魔王に金銭をねだっているツインテールの前に立ち、背中のリュックを下ろす。

 「なかなか面白いことになってるぞ」

 取り出したのはポータブルテレビ。映像が映し出されている、どこかのニュース番組のようだ。

 『魔王ついに人間に宣戦布告か!? 人類滅亡までのカウントダウン?』などという字幕が見える。

 浮遊都市が延々と映し出されて女性キャスターがなにやら事件の概要を説明しているようだ。

 「なんでも魔王が人を殺して暴れまわっているらしい。数人ほど遺体が出てきたようで自衛隊が数時間後ここに武力制圧に来るらしい」

 「殺したのって誰っすか」

 「知らんが、こいつ血まみれだからこいつじゃないのか?」

 桜井はぐっちゃんを指差す。

 「ああ……」

 桜井の言葉に納得しかけてしまう由樹。ぐっちゃんを見る。桜井は瞬時にぐっちゃんを拘束し地面に這い蹲らせる。

 「桜井さん! 何してるんですか!」

 「唐突なシリアス展開で置いてけぼりなところ悪いが俺はゾクゾクしている」

 不機嫌な顔で楽しそうに笑う桜井。

 「石橋、とりあえずこの魔王を自衛隊に持っていってみるか?」

 「まずはぐっちゃんを離してください。対等な立場で先に真意を明らかにしたいです。まだぐっちゃんがやったとは決まっていません」

 「そう、可能性として誰かが私に罪をなすりつけたとは考えられない?」

 冷静にいうぐっちゃん。

 「られないな。第一その返り血はなんだ、説明してみろよ」

 「さっきまで牛を解体してたの、それでついたの」

 「魔王、俺は冗談を言えといったつもりはない」

 すごむ桜井。

 「なんだ。話はいいからとっとと金をくれ」

 空気が読めないツインテール。

 そんなツインテールを無視して由樹が割って入る。

 「とりあえず魔王でないことを説明してこちらとしてもあの浮遊都市の魔王が暴走しないようにしているという説明を自衛隊側にしてみましょう。交渉をしてからでも遅くないはずです。だからぐっちゃんを開放してください」

 「もういいわ」

 口を開いたのは桜井だった。

 「とりあえず魔王全員呼べ。話はそれからだ」

 「……はい。みんな聞こえる?」

 桜井の言葉を聞き、持っていたトランシーバーに話しかける由樹。

 そこで由樹は気づいた。トランシーバーが故障していることに。

 応答があるはずもない端末で話しかけるほど事態に動転しているのを認識する由樹。

 「ぐっちゃん――」

 ぐっちゃんに呼びかけトランシーバーをもらおうとする由樹。

 しかし、壊れているはずのトランシーバーから声が聞こえた。

 「え?」

 次々と聞こえてくる魔王の声。こちらにむかってくると次々と返答がくる。直ったのだろうか。

 それとも今までは何らかの不調で通信が出来なかったと考えるべきか。

 だが現時点で由樹の所有するトランシーバーは正常に作動していた。

 トランシーバーでだいたいの現在位置を伝える。わからなくても魔王パワーで目視してもらおう。

 「他の魔王が来るまでにいろいろと解決しておこう。まずはだ。元凶そして象徴的に浮遊しているあの都市。あれはあとどれくらいで下ろせる?」

 「わからない。魔王が落ち着くまでは降ろせない」

 「魔王が落ち着くのはいつだ」

 「わからない」

 「なんだよ、八方塞りだな」

 「いいから金をよこせ。私はここを去りたい。腹も減ったし眠たいし撮りだめしているドラマを観たいんだ」

 傍若無人なツインテールの声。

 由樹はツインテールの頭をもって耳元に銃を発砲する。ツインテールを放る由樹。

 「……おいおい……なんだよ……」

 「いえ桜井さんならこいつの存在を説明していく上で『黙らせろ』という単語が出てくると思ったので、その行動を先にしました。気にしなくていいです」

 困惑する桜井に具体的な説明をする。

 「泣いてるぞ」

 「過呼吸になってる」

 泣きながらひぃひぃと甲高い呼吸音を上げながら座りこむツインテール。がたがたと震えてその場でうずくまる。

 「いい。これでいい」

 「なんかまたわけわかんねぇことしてんな、お前」

 「病気だと思ってくれていいです。それで何も追求しないならそれでいいです」

 その言葉に桜井は不機嫌な面で由樹を見たがそれ以上はなにも言わなかった。

 「ともかくだ。下ろすのは無理ってことでいいんだな」

 「そうで間違いない。多分だけど下ろせるとしても自衛隊が来てるときだろう。……もういい加減、拘束といてもらえませんか? 腕痛い」

 「無理だ」

 腕の拘束は取っ払ったがぐっちゃんの馬乗りになる桜井。

 「ほら、腕の痛みはなくなっただろう」

 「鬼畜」

 「外道」

 笑う桜井。

 「大丈夫だ。魔王が全員来て説明をしてお前の容疑が晴れたら拘束を解いてやる。しかし気色わりぃな、この血」

 「まだ誰も殺してない」

 「含みありありな発言するなよ」

 依然ガタガタと震えるツインテールと三人はここに集まってくる子供たちを待った。

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