表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/65

墓標 その2

 広がっている墓標。一年前の犠牲者が眠っている。中には国が捜索を諦めて今も行方不明者扱いになっているものもいるが、ほぼここは魔王だったものたちの墓地だ。

 変な話だが保護者が死んだ魔王を引き取ることはない。

 ほぼほぼ10代の子供で親の愛情を潤沢に受け取ったはずの子供たちがなぜ引き取られないのか。

 理由は様々ある。

 まずは本人が拒絶している場合、これはいたって簡単な理由だ。

 魔王になった瞬間に子供としての縁をきられてしまったのだ。

 そういった親はどうやっても子供の遺体なんて受け取らない。

 子供を子供としてみないだろう。

 次の理由は、遺体を受け取っても周りが拒絶している場合だ。

 これが一番多い。

 人を埋葬するのに、火葬場や墓地などが必要になる。

 単純にここが拒絶するのだ。

 うちで焼くなんてことはしない。

 うちに埋めるなんてことはしない。

 何があるわけではない。

 焼いたからって災厄が降りかかるわけではない、それは知っている。だけどもやるわけにはいかない。他の嫌がる人たちがいるから何が起こるかわからないから。

 埋めたからって災厄が降りかかるわけではない、それは知っている。だけどもやるわけにはいかない。他の嫌がる人たちがいるから何が起こるかわからないから。

 もし仮に遺体を正規の手順で埋葬したとしてもあの巨大な魔王が襲ってこないとは限らないからだ。

 そうした不安もある。正体不明のガガイモならではの不安でもある。

 最後の理由は国の魔王としての制限だ。

 生死は問わずあの杭の外から出さないようにという通知が人々に行き渡っている。

 なので遺体を保持することでなんらかの処罰があるのではないかと思っている人がいるのだ。

 禁則事項なだけで実際に遺体受け取ったとしても罰則があるわけでもないのに。

 そうした見えない糸が張り巡らされて雁字搦めになっている。

 不安感という糸で動けなくされている。

 現実だ。

 それが理由で由樹と魔王たちはここに埋める、埋められることを決定した。

 「お経とか読めないの? ユキちゃん」

 無茶振りだ。

 「は、般若心経ぐらいなら、……少し」

 「この魔王は仏教徒なのか?」

 「日本人は大体仏教徒ですよ」

 「いや日本人は大体無神教だよ」

 などと若干もめながら由樹はうろ覚えの般若心経を空で言う。合っているとか間違っているとか誰にもわからなかったが由樹が読み出すと二人は黙って目を閉じていた。

 由樹がうろ覚え般若心経を読み終わる。

 「みんなも来たいだろうから、私はいったん戻って監視にいくね」

 「ああ、わかった。俺はみんなにシュンの最期を伝える」

 「サクラさんは――」

 「もう少ししたら日も落ちる。念のため懐中電灯やら装備一式をそろえに一端ここを離れる。すぐ戻る」 

 各々が各々の理由でここを離れ、ここに残る。

 指を鳴らした瞬間にいつものとおり魔法のような瞬間移動でいなくなる。ぐっちゃんは桜井をつれて空へ舞い戻る。

 だれもいない墓地。

 由樹は他の魔王たちにも挨拶しておこうと思った。生きている方ではない墓地で眠っている魔王たちだ。

 総勢約数百名いた魔王たち。そのほとんどが今ここに眠っている。

 一年前の事故で死んだのだ。魔王のせいで。

 魔王が魔王のせいで死ぬとは意味がわからないことだとは思う。

 大体の死因は暴れのたうちまわる魔王の余波によるもので、魔王は子供たちに直接危害は加えてはいない。

 倒壊する瓦礫の下敷きになったり、魔王が壊したビルの破片が体をつきぬけたり二次災害のようなものが主な死因だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ