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潜入

 さて、目標は福島だがここで問題がある。今いるのは山形の山間部。

 福島までいくのは簡単だ。目と鼻の先だから仮にもし仮に交通機関を利用したとしても一時間ちょっと、かかっても二時間程度。無論魔王パワーを使えば一発でたどりつけるだろう。その後魔王パワーを駆使して街中から県境いたるところをくまなく探していってもそれほど時間はかからないだろう。

 何が一番の問題か。

 それは今現在暴れまわっている魔王とぐっちゃんたちの距離感である。

 目には見えないが魔王を制御できる範囲、魔王パワーを駆使できる範囲があり、福島に今から出向くということになればその範囲から出なければいけない。

 試しに出てみる。

 福島に少し入ったところ県境を越えたはいいがまだ人っ子ひとりいない山の中、森の中。

 真下に見える魔王が桜井と熾烈なバトルを繰り広げる浮遊都市。

 ぐっちゃんがゆったりとした動作で離れようとする。

 ぐっちゃんが足を伸ばすと相対的に下がっていく浮遊都市の高度。下がる下がる。

 足を引っ込めると浮遊都市は定位置に戻っていく。

 足を伸ばす、下がる。引っ込める、あがる。

 「こりゃ……」

 万能なはずの魔王の弱点に苦しめられる由樹とぐっちゃん。

 結果俺たちは浮遊都市とともに移動しつつ福島に行くことになった。

 突如として訪れる浮遊都市に戦々恐々としてしまう福島の人たち。

 避難勧告が発令され大パニックに陥っている。

 魔王がすむ浮遊都市が侵略しにきたとぐっちゃんいわくテレビなどで放映されているらしい。

 大怪獣福島襲来である。

 「あれ、これって結果オーライだよね。浮遊都市にしなかったら移動できなかったわけだしこうして犯人も捜せなかったし、いろいろ起きてはいるけど結果オーライでしょう」

 「今しなくていいよ。後で考えよう。自己の正当化は後でにしよう。早く見つけよう」

 「うん、でも自衛隊とか呼ばれないかな」

 「なにそれすんげぇ見たい」

 そう冗談を言う由樹の視界の隅に戦闘機が見えた。かと思えば上空をかすめていく戦闘機たち。轟音が響き風が吹く。魔王パワーでいくらかは守られているとは頭上を戦闘機がかすめるのは恐ろしく怖い。現実とは思えない。浮遊都市や魔王と一騎打ちをする人間やら様々見てきてなんだが現実とはなんぞやと哲学に入り込んでいる由樹でも高速で頭をかすめていく戦闘機は恐ろしかった。

 少し湿った。

 「…………ミサイルとか撃ってこないよね」

 「……まだ撃ってこないじゃない?」

 「そうか、まだか」

 「うん、まだだと思う。まだだと願う」

 無言で見つめあう由樹とぐっちゃん。

 とりあえず福島市内を浮遊都市とともに移動していく。

 由樹の目からは微細なごみのように見える人間たちとミニチュアのようなビルにしか見えない福島。この中から人を探すのは不可能だ。

 「ユキちゃんには無理だからわかってるからいいよ。私がやる」

 ぐっちゃんが真下を見る。

 探せるのだろうか若干心配になるが、ぐっちゃんの肉眼ではなくそこは魔王パワーで見ているのだろう。

 由樹は何もすることがなくなった。出来ることがなくなった。ひとまず泡を噴いた倒れた褐色の介護でもしよう。

 ハンカチを取り出して噴いた泡をふき取る。顔色も良くなりひぃーひぃーと高い呼吸音も正常に治っている。

 幸せそうな寝顔だった。素人目だが体調は良くなっているようだった。

 「なんかしら後遺症とかないといいけども……」

 由樹にはそれがあるかどうかもわからなかった。

 「ユキちゃん、いた」

 由樹はぐっちゃんの傍へ。

 ぐっちゃんは指差しているが何も見えない。いや見えはする。ただビルしか見えない。人など誰が誰だかわからない。

 「あそこ、ビルの四階につかまってる」

 わからない。もはやビルが何階建てかも把握できない。

 「私はここを離れないから由樹ちゃん行ってきて」

 指を鳴らすぐっちゃん。

 由樹がまばたきしている間に周りの環境が完全に変わっていた。

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