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サクライサン


 由樹とぐっちゃんは、隣町を箱庭のように暴れまわる見えない魔王を観察していた。何も見えないが建物が自然に崩れていくのが見える。桜井から返信がきた。

 由樹は何度も電話をかけたのだがそのたびに留守電だった。

 「俺は非通知は出ないんだ、誰だ」

 せっかくメッセージも吹き込んでいたのに留守電を聞いてなかったようだ。

 「…………桜井さん。いつも言ってるじゃないですか。登録してくださいよ」

 「……誰だよ、質問に答えろ。殺すぞ」

 ドスの聞いた声が電話から響く。

 「あんた初対面の相手にも殺すとかいってんのか」

 「初対面にはいわねぇよ。どうした石橋、トラブルか?」

 「……トラブルです」

 桜井に一部始終話す。すると『へぇー』と面白そうに相槌を打つ桜井。

 「わかったすぐ行く」

 電話が一方的に切られた。

 「あ、場所も教えてないのに……」

 「切られたの? ユキちゃん」

 「うん、どうしよう」

 「たぶん大丈夫じゃない? ほら」

 そういいぐっちゃんが真下を指差す。徐々に崩壊していく浮遊都市隣町。由樹が見る分には何も変わったことはない。

 「あー。見えないか。野次馬が浮遊都市目当てで集まってきてる。テレビカメラも来てるみたいだからすぐにわかると思うよ」

 「ほー」

 もう一度下を見るが崩壊していく隣町しか見えない。それどころか地面に立っている人などまったく見えない。地面すらよく見えない。

 肉眼でそれが見えたというのだろうか。由樹がいくら目を凝らしてそんな細かいところまでわからない。

 せいぜい建ってあるビルを把握できるくらいだ。どうやって視認したのだろうとぐっちゃんを見る。

 「魔王パワー」

 「魔王パワーすげぇー」

 あっさり解決する魔王パワーの汎用性は高かった。

 電話が鳴る。桜井だった。

 「来たぞ」

 「は、早いっすね」

 「…………いや、近場でラ●ュタだラピ●タだおいラピュ●が出来てんぞ。と野次馬が騒いでいたからな。電話が来るまでずっと見ていたんだ。だから遅いほうだ。一歩も動いていない」

 どう反応していいかわからずもうわけがわからず無言で電話をぐっちゃんに渡す。

 「サクラさん? あー、了解。引き上げるからそのまま喋っといてもらえる? 位置特定するから」

 電話を耳に当てて下を見るぐっちゃん。

 電話からは『俺はイクラが食べられないんだ、いやイクラは好きだ。この間ウニイクラ丼を食べた』となにやら模索した桜井の声が漏れ聞こえる。

 「回収」

 ポンっと現れる桜井。それこそワープという言葉が合うくらいの簡単に桜井は現れた。

 ファミレスで会ったときのように不機嫌な顔で電話をかけていた。

 「便利だなこりゃ」

 不機嫌な顔で楽しそうな声をあげる桜井。

 「魔王パワー」

 「魔王パワー最強じゃねぇか」

 にやにやと不機嫌な顔で口角をあげる桜井。

 「魔王、石橋、俺は何をすればいいんだ」

 「サクラさんには捕まっている魔王を助けてもらう。その間にあの暴れているほうがこれ以上被害を出さないように押さえ込んでるから」

 「なるほどな、で俺が見つけ出せなかったらどうする」

 「は?」

 この人は何を言っているのだろう。見つけてもらうために呼んだのに。

 「もし仮にだ。俺が役立たずで捕まった魔王の奪取ができなかったどうする。被害はこれ以上に膨れ上がり魔王が見つからなくて予測不能の未曾有の危機に陥ることは必死だな」

 「え、まぁそうですけど……」

 ぐっちゃんも由樹も桜井の言葉に困惑している。それもそうだろう、せっかくの助っ人が自分では何もできないといっているのだ。わざわざ連れてきた意味がない。

 「なにやる気がないなら帰ってもらっていいけど」

 ぐっちゃんも仁王立ちでイラついている。

 「まぁまぁまぁ、答えを早まるな。俺は何も仕事はしないとは一言も言っていない」

 空中都市を指差す。

 「あれを食い止めるほうを俺にやらせろ」

 「無理」

 即答するぐっちゃん。

 桜井は不機嫌な顔でぐっちゃんを睨む。眉間にしわが寄って怖い。

 「腕っ節には自信があるんだ。そのために仕事を受けているわけだしな」

 「不可能」

 しばしの沈黙。静寂が訪れた。

 「死にたいなら今から下ろす」

 「ああ、死にたいね」

 桜井がそういうとぐっちゃんは指を鳴らした。忽然といなくなる桜井。すると由樹から電話がかかってきた。表示は桜井。

 「ありがとな、楽しんでくるわ」と一言。

 『ユキちゃん代わって』と由樹は携帯をぐっちゃんに渡す。

 「死んでも遺体は回収しないからね」

 「当たり前だ。俺が死ぬと下馬評で思っているやつは素人だ! なんのために俺が――」

 問答無用で携帯を切るぐっちゃん。携帯を投げて由樹に返す。

 「サクラってあんなうざかったけか」

 「……さ、さぁ? でも大丈夫なの、桜井さん」

 「知らない。死ぬんじゃない?」

 足元の浮遊都市を見て桜井の姿を確認する。米粒大になった桜井が瓦礫の上に立っている。その米粒が動き回っているので由樹にもなんとか存在がわかる。

 「え。あれ人なの?」

 「え?」

 走り回っているのは桜井だろうがちょこちょこと動いている。数秒で30センチ近く動いている。

 米粒ほどの縮尺で30センチ?。尋常じゃないスピードだ。

 「…………早すぎね? ぐっちゃんなんかしてるの?」

 「いやなにも……」

 「えええ……100メートル何秒で動いてんだあの人」

 原寸距離にしたら何百メートルどころか何千メートルをわずか3秒ほどで移動してる。一定の円運動をしている。見えない巨大な魔王の周りを回っているのだろう。

 「ば、化けもんだ」

 「サクラ、口だけじゃなかった……」

 すると由樹の携帯がまたコールされる。ディスプレイには『桜井』の文字。電話をとる由樹。

 「探してこいよ、ここは俺一人で充分だ」

 「うわ……惚れた」

 由樹がときめいていると携帯は切れた。

 「いろいろ突っ込みどころは多いけどあのスピードならたとえ倒せなかったとしても攻撃はよけ続けられるでしょ。私たちは仲間を探索する」

 「OK、話では福島に行っていると言っていたね」

 褐色の話では魔王の一人を福島に移動していると言っていた。

 「県境は浮遊都市で巻き込んだ。だけど誰もいなかった。ということはもう福島に行っていると推測する」

 「そうだね。よし目標は福島だ」

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