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魔王襲来 その6

 部屋に褐色と二人っきり。すると奥の部屋からぐっちゃんが出てきた。

 泣いていたのかまぶたが大きく腫れて目も真っ赤になっている。それに触れずに由樹は冷蔵庫をあける。

 目をこすりながら褐色の姿を確認するぐっちゃん。

 「誰?」

 「ガガイモ」

 「へぇー」

 ぐっちゃんは、関心がないのかそれ以上は聞かずに褐色を見ている。

 上から下まで見ていたが興味がなくなったのかソファーに座ってくつろぐ。

 「飯」

 「今から作るから待ってて」

 「早く、眠い」

 「……夜更かしするからだよ。ちょーっと待っててね。時間無いから簡単なもんだけど」

 部屋にはガスコンロと鉄の鍋しかない。だが問題はない。

 「食材は先ほど部屋で全て切ってきたので鍋さえあれば炒め煮るが可能です」

 「いいから作って」

 「はいはい」

 切られた食材を鉄鍋にいれてあっさりと野菜炒めが完成する。

 それを皿にとり鉄鍋に水をいれて冷蔵庫からインスタント味噌汁を取り出して茶碗へ。

 「にしてもさっきはびっくりしたよ。あんな簡単に力使えるようになったなんて」

 「……うん、練習の賜物。時折動かして慣らしてる」

 魔王の力について言及する由樹、それを眠たそうにこたえるぐっちゃん。

 魔王の力は万能なのだが意外に制約があり、一人で扱うのは難しいのだ。

 ぐっちゃんがやっていたことは簡単のようで意外に重労働のはずだ。

 ぐったりとしているぐっちゃんを見ていると眠気以外のことで疲労しているのが明らかだからだ。

 煮立ったお湯を茶碗にいれて味噌汁をつくる。その間レンジで温めていたご飯が出来上がる。

 ソファー前のテーブルに並べていく。

 「はいよ」

 「質素」

 そう言いながらも黙々と食べ始めるぐっちゃん。横にはなぜか先ほどまで立っていた褐色がソファーに座っている。図々しい。

 「普通、もっと凝ったものが食べたい」

 味の感想は中々辛らつだ。

 「今から作るからそれはぐっちゃん用」

 「なにぃ? ひいきか、えこひいきか」

 不満顔で音を出しながら味噌汁をすするぐっちゃん。

 「夜更かししてた罰だよ。凝ったものおいしいものが食べたかったらちゃんと夜は寝ましょう」

 「……寝たら誰があれ制御するんだよ」

 あれとは魔王のことだろう。ガガイモは所有者が寝ていても勝手に活動する。所有者が寝たら消滅はしないが暴れだすかもしれない。本来のガガイモはそんなことはないのだが、魔王は何もかもが規格外だ。ありえない話ではない。

 「そのための桜井さんだから」

 桜井さんにはそのために夜中ここに来てもらっている。

 魔王が暴走したときに対応してもらうためにパトロールとしてお金で雇っている。

 いつもなら隣町で待ち合わせて合流するのだが昨日は俺がこなかったために朝方ご立腹だったわけだ。

 ちなみに桜井さんにはまた別の仕事を頼んでいる。

 「サクラさんは雑魚だから信用してない」

 「倒せるって自ら豪語してるから、そんなことはないと思うけどね」

 また鉄鍋に火をいれて料理を作りはじめる由樹。

 野菜たちが鉄鍋で踊る。一品、もう一品と料理が並ぶ。

 「眠い……」

 味噌汁とごはんを平らげてソファーに寝転がるぐっちゃん。

 「ちょっちょっと、寝る前にみんな呼んできて」

 「トランシーバー」

 寝ながら腕をあげるのでスーツケースからトランシーバーを取り出して周波数をあわせる。

 ぐっちゃんに渡すと『ごはんできた』とつぶやきそのまま寝息をたてはじめる。

 料理の火を止めて奥の部屋からブランケットを取り出す。

 ぐっちゃんにかけてあげようとすると、途中で褐色がそれを奪う。

 そして広げてそのままぐっちゃんにかけていく。

 突然の行動で理解ができないが、結果とするところは同じなので特にそれには言及せずに料理を再開し始める由樹。

 二品目の料理が完成して大皿に移しているときだった。

 テーブルに運ぼうとするとブランケットで包まれたぐっちゃんを運ぶ褐色の姿がそこにいた。

 寝てよだれを垂らしているぐっちゃんを小脇にかかえている。

 褐色と目が合う。脱兎のごとく外へ出て行く褐色。

 由樹が目撃した中で最速の動きだった。

 あっけにとられる由樹。ひとまず冷静にコンロの火を消してフライパンを置く。

 トランシーバーと携帯を持って外へ飛び出した。

 「たいぺんだ!」

 焦りを抑え切れなかったのか、少し噛んでしまう。トランシーバーに叫んで褐色の姿を追う。

 日が昇り鳥のさえずりが辺りから聞こえてくる。木々のがさがさとよれる音が聞こえ、心地よい陽気だ。

 いない。

 男のときは瓦礫やらで足止めを食らっていたのにあっという間に見える位置からいなくなっている。

 あたりを探ってみるがいない。ビルを出て外を散策する。いない。焦りだして闇雲に走る由樹。

 どこだ、どこにいる。

 すると、トランシーバーから返信。

 「おはようございます、石橋さん。どうかなさいましたか」

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