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魔王襲来 その4

 魔王。シューベルトやゲーテなどの曲や詩の題材。

 現代ではゲームやアニメ、作品の登場しているメディアは多岐にわたる。

 魔王。だがその言葉は東北のある一部の地域、つまりは由樹が住んでいる近辺では意味合いが違う。

 一年前、とある事件が東北の有名な進学校に起こった。変質者が学校のグラウンドでうろうろするという珍事だ。

 裸のおっさんがうろつくという珍事である。

 被害者はおらずおっさんも数名の生徒と教師に見つけられ警察に通報されるまえに逃げきったという珍事だ。

 数ヵ月後、この変質者は捕まり被害者もなくこの事件自体は終焉を迎えたのだが。

 この変質者が捕まる数ヶ月間でこれとは関係の無い事件が起こった。

 いや前言を撤回するこれが起因といえる事件が起こった。

 教師の一人が生徒に激昂してその裸のおっさんを指差しクラスに絶叫を響かせたのだ。

 「あのアホみたいなガガイモを生み出した馬鹿は誰だ!!」

 その教師のクラスはガガイモの世界規模の発生に伴い、先進的に出来た『ガガイモ教育特別クラス』だった。

 簡単に説明すると、いまだ『ガガイモ』の能力に目覚めていない学生を集めて、英才教育を行いより高度な技術高度な能力をもったガガイモを生み出そうとした実験的クラスだったのだ。

 教師が激昂したのは、ガガイモと人間との初対面となった『ストリップヒューマンシャイニング事件』と内容が似ていたのも起因しているのだろう。

 あの変質者を誰も疑わずにガガイモだと認識してしまったのだ。

 このふとした事件で最初はガガイモを持たない学校の誰かが教師へのいたずらとして行ったとして処理され、何人かの人間は学校によって処罰され悪質だとして容疑を否定してきた数名の学生が退学へと追い込まれた。

 証拠もなく警察の事実確認はなく教育委員会と学校だけの判断にゆえにこの横暴な処罰に保護者たちは反発。

 学校との反発が続き、処罰された学生は云われもない罪で転校する羽目になり、そして数ヵ月後つかまった犯人。

 一転して学校側と教育委員会は謝罪をしたが、保護者と本人たちは怒りが収まらず一部の関係者と生徒たちで、その結果学校に対して反抗の意味をこめた暴動が起こった。

 暴動は大成功。

 学校は無実の罪で切り捨てた教員を断罪し、当時学校にすらいなかった教員も巻きこみ、まったく関係ない生徒たちに被害が及んだ。そうして怒りの濁流はいろんなものを巻き込んで崩壊し大炎上した。そして『魔王』は生まれた。

 怨念疑念や怒り悲しみなどの感情がまざりあい、ガガイモが発現していない数十名の生徒たちによって作り出された。

 そういった自分勝手な連中に自分勝手な暴力の恐ろしさを教えるために暴れまわった。

 わずか10秒たらず。

 わずか10秒たらずで東北のとある県庁所在地付近、その進学校の半径8キロ圏内の高層ビルやら市街地が全てのちに『魔王』とよばれる巨大で凶悪なガガイモによって破壊されたのだ。

 まるで昭和の怪獣映画のように簡単に町は壊滅した。

 6日後、魔王が生息している地域一帯を立ち入り禁止区域に指定。そして魔王の所持者はここから一歩も出てはいけないと国から指示を受けた。

 その数ヵ月後、『魔王』と呼ばれたガガイモの活動範囲より少し外に無数の楔が打ち込まれた。

 この町に入る前に見た杭がそれである。

 これが一年前に起こった魔王とよばれる悲劇が生まれた事件である。

 魔王の悲劇はこれだけでは収まらない。

 魔王は珍しく多人数の意思を受け継ぐガガイモだった。

 普通は一人に対して一つだが魔王は複数人の生徒たちを取り込み所有者とした。

 普通のガガイモは所有者から距離を取っても特に問題ない。

 だが魔王は違った。

 普通のガガイモとは違い、所有者同士の距離が一定の距離を超えると暴れだしたのだ。

 ビルを倒壊させ近辺を廃墟にするぐらいのパワーで。

 国も誰も対策を講じられない状況だった、今でもそれは変わっていない。

 そのためその不特定多数の生徒たちは強制的な共同生活を余儀なくされている。

 そして超人的な能力。

 ガガイモは普通一般的には人間の身体能力精神能力を越えるものはいないといわれている。

 経理や会計などは完璧にこなせても超能力は使えない。

 肉体労働は出来ても限界があり、建物やビルを持ち上げることはできない。

 知的な計算は出来てもタイムマシーンなどの現代科学を超越した科学は発案できないし発見もできない。

 それこそプログラミングされたコンピューターと同じ役割しかできないのだ。

 だが魔王は違う。

 口から炎やレーザーさまざまなものをはき、腕力だけでビルを倒壊させる。

 かと思えば空間と飛び越えたり重力を変化させたり物質変化はお手の物。

 科学者物理学者数学者心理学者がこぞって魔王を研究したがるほどのものなのだ。

 さきほどの男性が落下していくときに起きた空中浮遊も魔王が支配するこの空間ならではだ。

 なのでというわけではないが、魔王は命を狙われることが多い。

 逆に殺してほしいというものもいる。

 自殺をするのは怖い、だからこそ魔王にすがって殺してほしいと願ってわざわざここにくるものもいる。

 だからというわけではないが、魔王のいるこの一帯は『高天原』(たかまがはら)や『黄泉比良坂』(よもつひらさか)などと呼ばれている。

 そんな名前が一人歩きし尾ひれがつき、今では富士樹海に次ぐ自殺スポットである。

 先ほどの男もそういう男だそうだ。

 自殺しようとしてここに来たのだが、魔王を見つけたら魔王をうっぱらってその金で高飛びするつもりだったのだという。

 銃を取り上げて麻縄で体を拘束していると男は話し出した。

 「迷惑な話だ」

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