家に帰ったらペットが彼氏になっていました。
短編にしました。
「いってくるね。白虎」
私はソファの上でボールとじゃれているペットの猫。白虎に手を振る。
白虎は此方をみて耳をピコピコ動かすと、すぐボールに目を戻した。
…まったく冷たいやつ
私は少し頬ふくらめ、部屋を後にする。まぁ、そんなとこが猫の可愛さなんだけどね。
帰り道。雨音が周りの音もかき消す。
あ…洗濯物…
雨が降るのを忘れて洗濯物を干したままにして出掛けてしまった。
白虎がとりこんでくれてたり…
「なんて…」
私はつぶやき、くすっと笑う。
「ただいまぁ」
私は濡れた靴を脱ぎ、すぐベランダの方へ向かった。すると、ソファの横に雑に置かれたびしょ濡れの洗濯物がある。不思議に思いソファの方へ目をむけると。
「え、」
ソファの上に片手でボールを転がしながら、私の漫画を読んでいる白髪青目の人物が座っている。頭には猫耳。腰には白く長い尻尾。
「は…白虎?」
人間の形をしていること以外は白虎だった。白虎は此方をちらっとみると耳をピコピコさせる。
「よ、おかえり。ご主人」
その人物はそう言うと漫画に目を戻した。あ、こいつは白虎だ。この振る舞い。白虎に間違えないわ。
「び…白虎…なの?」
「ん…」
白虎は頷くと漫画を閉じてこっちを見下すように見た。
「なぁ、その白虎っての…正直どうかと思うにゃ。猫に白虎って…なに。虎にしたいの?俺のこと」
白虎は嫌な顔をして名前についてケチを付けてくる。
なんだよ…人がせっかく付けてやった名前をぉ…!
奥歯をぎりぎりいわせてると、白虎は背中を丸めた。
「まぁ…なんだ。いつも世話になってるからよ…服とか。入れといた…ぞ…」
そしてびしょ濡れの洗濯物のほうをチラッとみると頬を赤く染める。私は少し笑い、白虎の頭を撫でた。白虎は俯きながらその手をはらった。
「でもさ…もう少し…洗濯物が濡れる前にしまうとか。びしょ濡れになったとしても、床にそのまま置かないとか…さ」
「っ!う、うるさいな!俺の親切を素直に受け取れにゃいのか!」
私はにこっと笑うと白虎の頭を髪がくしゃくしゃになるほど撫で回す。
「冗談。猫にしては出来た方じゃない?」
「くっ!!」
そんな会話をして、私は少しカップルみたいだな…なんて思ったりした。
「で?なんでこの姿に…」
「それがよくわからねぇんだよ…。お前が出かけた後、昼寝して起きたらこうなってたんだよ」
白虎は何処で覚えたのか、貧乏ゆすりをしている。でも、こんな体験めったにない。ポジティブな考え方をしよう。
「じゃあさ、白虎。私の彼氏にならない?」
「はっ、なんでだよ…」
白虎が驚いてソファから落ちる。
「いやぁ…その。このまえ、わかれたばっかでさ…」
「その穴埋めってかよ…たく…」
白虎は少し寂しそうな顔をしたが、ため息をついて立ち上がった。そして、カレンダーをちらっと見ると此方にむきなおる。
「いいよ。クリスマスとか、正月とか。ぼっちは辛いもんな。」
そう言って口元を抑えるとそっぽを向いた。微かに頬が赤いのが見えた。
っ…ほんとにこいつが彼氏でもいいかもしれない。