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ざまぁ?

おかしな3人

憧れて書いたシチュエーション。

………筆者は何を間違えたのか……。

 私の目の前には、アイスフロートがある。

 コーラとバニラのコンビネーション。溶けかけたバニラがたまらんよね。

 でも、最後の方……コーラがアワアワになるのが、いかんともしがたい。

 私が長いスプーンで、黄金の領域に舌鼓を打っていると、目の前に座っている男女がしびれをきらせた。


「ミナ、聞いてる?」

「うんうん。聞いてる。聞いてる」


 ちゃんと、聞いてるよ?

 でも、今はこのバニラのシャリシャリが口に広がる感じが……もう! 美味し! 糧!


「ミナちゃん、本当にごめんね」

「いや、俺が悪いんだ……モエ」

「そんな事ない! セイジ君を好きになったモエが悪いんだもん! ケホッ」


 目の前で三文芝居が始まった。

 モエなんか急に声を出したからなのか、せき込んで喉が痛そうだし。

 すげー。これってスマホで動画撮ったらダメかな。臭い芝居だから、逆に面白いと思うんだけど。


 目の前の二人がお互いを庇い合い、2人の世界に酔っている所申し訳ないが、話が進まない。

 私のアイスフロートちゃんが溶けちゃうので、さっさと話を進めたいのだ。


「えっと、私の……もう、『元』がついた方がいいのかな? 元彼であるセイジと、私の小学生の頃から幼馴染のモエちゃんが、好き合うようになったから、別れて欲しいって話よね? OK?」


 お行儀が悪いが、長いスプーンで二人を指して、話を簡単にまとめた。


 小説ではよくある話。

 友達(私の場合幼馴染)に、彼氏を紹介したら盗られて、それを喫茶店で報告されているという。


 あ。

 なんか、急にドキドキしてきた。


 今、私って、物語の主人公っぽくねぇ?

 彼氏を友達にNTR(寝取られ?)て、悲劇の主人公っぽくねぇ?

 やばい。 ここは、泣いて罵声をあびせた方がいいのかな。

 元彼に水をぶっかけて、そのまま茶店を出ていくとか!

 ちょっ、誰か録画してくんない? 斜め向かいの席のお客さんにスマホを渡してお願いしてみようかな。


 私が、胸に手を当てて下を俯いたので、ショックを受けていると思われたのか、セイジ(元彼)が慌てて言い訳をしだした。


「……ミナ……お前も2か月前……俺を避け始めただろ? スマホも繋がんねーし。 それを偶然会ったモエに相談するようになって……」

「モエも最初は、セイジ君と二人っきりで会うのは抵抗あったんだけど。セイジ君が真剣に悩んでたから……その、相談に乗るうちに……」

「二人は恋に落ちましたとさ。……って、おい。ちょっと待て」

「「え?」」


 おうおうおう。思わずノリ突込みみたいになったけど、なんか、私が悪いって事になってない?

 私が、セイジを避けたから? だから二人が付き合うだと?

 今、ちゃぶ台が目の前になくて命拾いしたな。あったら、確実にやっていたぞ。昭和的ちゃぶ台返しという技を!!!



「まず、セイジ! 私があんたを避けていたのは、病院に行っていたから!」


 “病院”というワードに、何を勘違いしたのか二人が顔を青ざめた。


「まさか……妊…」

「違う。 避妊は確実にしていたし。危険日は避けていた! 今、バリバリ生理中!」


 あからさまにホッとした顔をしやがって。いや、ホッとするのはまだ早いからな!


「それから、モエ!」

「は、はい!!」

「あんたは、いつもいつもいつも、人のモノを欲しがるのが悪いくせ! まさか、男まで欲しがるとは思ってなかった」

「………ミナちゃん」

「で、二人はもうヤったの?」


 私の愛しのアイスフロート様の泡率が高くなってきている。

 悲しきかな人生! これも、目の前の二人のせいだ!

 ギッと、睨みつけると、何を勘違いしたのか、二人は気まずそうに眼を逸らした。


 あ……事後ですか。

 そうですか。


 私は、ストローで炭酸がなくなりかけのコーラを一飲みし、手帳から名刺を取り出した。


「はい。ここお勧め」

「マツモトクリニック??」

「ミナ、一生の不覚。まさか、フェラで性病がうつされるとは思いもしなかった」

「ぶっ!!!」

「え? え? マツモトクリニック…せ、せせせ性病科!?」」


 セイジが一口飲んだコーヒーを吹き出し。

 モエが、名刺の診療科の名前を見て、目を見開いた。


「ゴムをしていたから、下は問題なかったけど、もう……喉の奥がね。完治に一か月かかったわけ」

「……喉」

「お、俺ぇ?」


 喉と聞いて、首元を抑えるモエ。

 セイジは、明らかに動揺している。


「はぁ? 私が浮気したってか? 毎日、毎日、ガツガツと押し倒してきて、モノを嫌がる私の喉の奥まで突っ込んできたでしょ! で、2か月前に、喉が痛いから風邪かな? って、病院行ったら『性病』と診断されて目が点になったわ!! もう!! 腹いせに、完治するまで一か月間、着信拒否にしてやったら、あんたモエとコソコソ会ってるようだったし。知るかボケ! と思ったわけ。 私のあんたに対する恋心も情けも、性病と共に無くなったわ!」


 バン!!


 パーの手で、机を叩いた。



 ………。


 ねぇ? 決まった? 斜め向かい席のお客さん。

 私、上手に啖呵切れてたでしょ?

 あれ? なんで目を逸らすの? 私の見せ場でしょ?


 チラチラと、斜め向かい席のお客さんにアイコンタクトをしているのに、どうやら私は見て見ぬ振りをされているらしい。

 畜生。地味に手の平が痛いぜ。


「じゃあ。御馳走様。“性病男”と“寝取り女”とってもお似合いだよ」


 そして、主人公は笑顔で舞台から立ち去る。

 真っ白な灰になった二人を残して……。





 カランコロン。



 喫茶店のドアベルが心地よく鳴り響いた。


「はぁーーー」


 ……決まったかな? もういいや。決まった事にしよう。

 さてさて。こんな茶番な私の物語も終わりという事でいいんだよね?




 ――後日。


 なんと、斜め向かいの席のお客さんが、私の啖呵と潔さを気に入ってくれたようで……付き合う事になりました。

 もちろん彼は、性病がなく浮気もしないアイスフロート好きな男性。

 やばい。理想的すぎるぞ!


 上手くいき過ぎのハッピーエンドで、マジで、物語の主人公になった気分。


 はぁ。


 誰かこの光景。

 スマホで撮ってくれないかな。






 








アイスフロートは、まじ美味い。

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