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◆第9話◆教訓



『繰り返す。第三支部の訓練生及び正規部隊の者は至急地下二階の会議室へ行き整列せよ』




 そう放送があった途端に訓練生と正規部隊は即座に行動する。俺も体に鞭を打ち体を起こす。階段を駆け足で降り地下二階へ行く。しかし道が細く詰まってしまった。 そこでしばらく渋滞がした。



 加藤中将は無事だろうか…?そう思い電話をしてみるも繋がらなかった。





◆◆◆◆◆◆







―同刻 PPGOL交戦地点―







「それにしても酷くやられたな…」




 瓦礫の陰に隠れながらそう呟く。周りには同胞達の死体がたくさんあり緊迫した雰囲気が漂っている。




「加藤中将!!ダメです。PPGOLにより東西南北全て陣を張られています…。完全に包囲網の中です!! 」




 偵察部隊の隊員がそう報告してきた。




「敵はこちらに気づいたのか?」




「いえただ陣を張って待機しています」




「なら下手に動かなければ大丈夫だろう。それよりここに残っている兵の数と敵のおおよその数は?」




「はい…。我々の部隊は約五百で、敵は恐らく…五万を遥かに越えています」




 彼はそう言い終えるとこちらに名簿らしき紙を渡してくれた。




「そうか」




 そう言いながらこれからどうするのか考える。この包囲網ではいくら精鋭とはいえ五百で五万に挑むなど自殺行為だ。やはり援軍を待つべきか、うまく部隊を分け撤退するかだろうか…。そうこう考えていると一つの疑問が浮かぶ。




「おかしいな」




「はい?どうかなさいましたか?」




 偵察部隊の彼がそう言った。



「今回の作戦あまりにも敵の策にはまり過ぎじゃないか?」




「そうですかね…。自分はよく分かりませんが」




「これは裏切り者がいると考えるのが妥当だな」




 確かな証拠はないものの自信はあった。




「将軍!!それはあまりにも考え過ぎでは…」




「お前もよく考えてみろ。俺が直接指揮する部隊なのに上の命令で直属の部下は別々に配属された。第一何故奴らはこの日、この場所、あの時間に作戦を開始する事を知ってた?まるで誰かが奴らに情報を流しているとしか思えない」




「そう言われてみれば確かにおかしいですね…でも地球外生命体であるPPGOLと人が共闘するなんてありえません!!」




「無くは無いだろ。あれほどの文明を誇ってるんだ」




 空に音もなく不気味に浮上している空中装甲兵器ガンシップを指差しながらそう言った。




 彼は何も言わなくなったのでまた一人で考える。ふと名簿からある人物の名前を見つけ閃く。




「よし。作戦が決まった!!」



 部下達に力強くそう言ってみせた。







◆◆◆◆◆◆







―2031年 3月31日 PM10時24分 某軍施設地下二階 会議室―




 予想を超えた広さの会議室へ全ての部隊が整列すると待っていたのは被害状況を確認するための点呼だった。負傷した者は救護班による手当てが行われた。もちろん上でも戦闘部隊に属してない人達が点呼、治療を受けているそうだ。




 会議室であるため、何か全員で話し合うのかと思っていた分、少し気が楽になった。俺が軽く擦りむけた所の治療を受け終わって地下一階に戻って休もうとした時だった。亮二がこっちへやって来た。




「平生准尉。今から隣の小部屋で会議があるそうなんで来ていただけますか?」




 嫌です。



 心の中でそう言うが仕方ない。




「了解。亮二も呼ばれたの?」



「はぁー。そうみたいです」




 長いため息をついたことから亮二も俺と同じ心境なのだろうか。




「今日寝れるのかな…」




「会議の内容が内容なんで保障はできないっすね」




 自嘲気味に笑いながら亮二は歩きだしたのでついて行く。




「ていうかありがとう亮二」




「?」




「亮二の兄貴に疑われたあれだよ。あそこで亮二が来てなかったらそのまま銃撃戦になってたかもしれない」




「気にしなくていいですよ。それにしても兄貴はよくあんなんで少尉なれたよ…。全く」




「少尉なの!?」




 上官なのに亮二の兄貴はまずかったかな。




「やっぱ驚きますよね。安心してください当然の反応ですよ。ちなみに自分は軍曹です」




「そうなんだ…。なんか悪いな」




 少し目線を落とし言った。




「何がですか?」




「いや俺なんかまだ訓練生なのに正規部隊の人より階級が上っていうのが申し訳なくて…」




「そうですかね。RED HOPEはそもそも実力主義なんで力のある人が上に行くのはここじゃ当たり前のことです。それに平生准尉は訓練生達を立派にここに連れて来たじゃありませんか。もっと胸張っていいと思います」



「でも何人かは途中で…」




「詳しく話していただけませんか?」




 俺は今日あった事を全て話した。加藤中将に園田中将の後を引き継いだ事、俺達の小隊も襲撃され目の前で訓練生達が殺されたことなど包み隠さず話した。




「その部隊をもともと指揮していた人か全体の落ち度です」




「そうなのかな…」




 俺は再び視線を落とし俯く。それを認めてしまうと園田中将に責任を押し付けるようで、何かいい気がしない。それに任された以上多少の責任は自分にもあったはずだ。




「平生准尉がそこまで思われるのならこれを教訓とすればいいんです」




「教訓?」




「もう二度とこんな目に会わぬよう戒めて自分のできる精一杯のことをやればいいと思います」




「教訓か…」




 確かにいつまでも嘆いても仕方ない。犠牲になった仲間の為には今できることをやった方が絶対にいいはずだ。




「まあ今言った言葉はほとんどが加藤中将が自分に言ったこと何ですけどね」




 ということは亮二も過去に俺と同じ悩みを抱えていたのだろうか。




「その将軍は音信不通で無事なのやら」




 一見全く他人のように言っていて冷たいように聞こえるが、本人は加藤中将なら生きていると信じきっているからそう言ったのだろう。




「無事だよ。あの人なら」




 そうこう会話をしている内にいつの間にか小部屋の前に着いていた。







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