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◆第1話◆戦場に目覚めた少年



 痛ぇ…。鈍器で殴られたような頭痛がする。目を開けると真っ白な天井が見えた。



 どうやらここは病院のようだ。完全に目が覚め、自分が何故ここに居るのか考えた。



 そして自分が自転車で通学中トラックと事故にあったことを思い出した。



 多分ここは家の近くの九州中央海病院だろう。

 ふと俺の横に置かれていた自分の携帯を見ると俺が約半年も気を失っていたことが分かり驚いた。



 病室はいかにも普通で、壁は白く床も清潔そうな白のタイルが張ってある。

 窓側と廊下側にベッドが2つずつ置いてありその横の棚には不思議なことに花のない花瓶が置かれていた。



 外の空気でも吸いたいと思い窓を開けた。空は薄暗く灰色だ。窓からは車が数台置いてある駐車場が見えた。

 しばらく経ってからあることに気づいた。




………




 静かすぎる。最初は病院だからと気にしていなかった。でも誰の声も一切聞こえてこない。

 そのうえ窓を見ても駐車場には人影すら見えていない。一言で言って不気味だ…。



 たまらず病室を出た。ロビーならさすがに誰かいるだろう。そう思いロビーに向かった。

 そこに着くま廊下やエレベーター内でも人に会わなかった…。



 疑問を抱きながらロビーに着くとそこは当たり前のように誰も居なかった。近くに受付があったのでそこを眺める。

 中は机を中心として棚が置かれてあり棚は医療道具があった。目の前の机のうえに紙が挟まったバインダーが置いてある。




「受付用紙か…」




 その中をパラパラとめくると不思議な事に7月27日から記録がない。今日は12月8日だ。これを書いた人はどこへ行ったのだろう?

 気づくとカレンダーも7月のままだ。

 おかしい何でだろう?




「うああああああん!!!」




「!?」




 何事かと驚いたここから近いところで大声でなく女の子の幼い泣き声がした。

 急いでそこへ行くと廊下の窓側に四、五歳ぐらいのツインテールの髪に水色のワンピースを着た可愛らしい女の子がしゃがみながら泣いていた。




「どうしたの?」




 なるべく怖がられないようにそっと近づいて言った。




「うあああああん…。ロンが…。ロンがどこかにも居ないの…」




「ロンって誰?」




 泣き止んだところで俺が言う。




「あたしの家のワンちゃん…。居なくなったの…。それでほんとは、いけないんだけど抜け出して来たの…。お兄ちゃん誰?なんでここに居るの?」




 グスングスンと鼻をすすりながら言った。




「ああ、俺は平生 創真、何でってここに居るのかって言うと…。俺もよくわかんないんだよね…。この病院に入院してたらしいだけど、他に人が居ないんだよね」




「それはそうだよ。みんな『非難』したのよ」




 何か災害にあったのかな?


 しかし周りは至って綺麗に整えられとても災害があって非難してるようにも見えない。




「美優ちゃんだったよね…。ママかパパはこの病室に居る?」



 そうそっと尋ねると悲しそうな目をしてこう言った。




「ママとパパはこの前…。天国に行ったんだ…」




 俺は悪いことを聞いてしまったと思い話題を変えた。




「えーとロンだっけ…。一緒に探そうか?」




「うん」




 言った後に俺は手を差し伸べた。すると彼女は手を掴んだ。


 いきなり美優ちゃんの目が見開き俺の背後に指を差した。




「プーグルだああああ!!」




 そう叫んだ。驚いてうしろふり返ると。



刹那―。



 ドン!!という銃声が響き美優ちゃんの悲鳴が鳴り響き鮮血が飛び散った―。









 美優ちゃんは泣きながらその場に倒れこんだ。




「うああああ―!!」




 とっさにそう叫んだ。美優ちゃんは撃たれたのだ。美優ちゃんは左側の脇腹を撃たれており出血している。

 流れる血液は真っ白なタイルを朱に染めている。




 美優ちゃんを撃った犯人を一目みて人ではない事が理解できた…。




 全身は岩のようにゴツゴツした皮膚していて肌はコケのような緑色だ。

 背丈は優に二メートル以上あるだろう。頭からは角のような突起物があり目はまっ黒で白目がない。

 口が耳あたりまで裂けていて大きくサメのような鋭い牙も見える。さらにマシンガンに似た形状の銃を持っている。

 恐らくこの銃で美優ちゃんは撃たれたのだろう。




どうしよう!!美優ちゃんを助けたい!!逃げよう!!撃たれる!!殺される!!怖い!!




 頭の中で様々な思考が働き冷静になれなかった…。

 俺は混乱してわけがわからず立ちつくした…。




「グォォォォウ!!」




 緑色の化け物は獣のような鳴き声で叫んだ…。

 


 威嚇しているようだ…。俺はあまりの迫力にその場で尻餅をついた。このままでは殺される!!その時だった。




「伏せろ!!」




 いきなり遠くから声が聞こえたと思うと激しい轟音と共にガラスが割れる音と共に銃声が鳴り響いた。



 窓ガラスを割った弾はそのまま緑色の化け物の頭部を貫いたようで、緑色の血しぶきが散らばった。



 バタンと派手に倒れて痙攣しながらこちらを見ている…。窓からはいくつものヘリコプターが飛んでいたようでバタバタと激しい轟音を発している。



 するとヘリが上昇しロープが見えたかと思うと、黒色の軍服のようなな服を着た人が次々と窓ガラス蹴破って病院内に入ってきた。

 俺は呆気にとられていた。




「おい!!ケガはないか!?」



 そう声をかけたのは髪は黒で目はハーフなのか、青い目が印象的な青年だ。俺は今いち状況が掴めなく動揺していた。




「俺はだっ大丈夫です…。でもそこの女の子が撃たれて!!俺なんかよりも早く助けてあげてください!!」




 美優ちゃんをみると泣き止んでいるのか?と、一瞬思ったが脇腹からは信じられれないくらい出血しているところを見る限り気を失ったようだ。青い目をした青年はすぐに動いた。




「例の少女か!衛生兵の葉田はいるか!?」




 加藤は大声で隊に向かって言った。




「はい…。加藤中将」




 小さい声で耳にかかる黒髪をしている小柄な少年がを筆頭に衛生兵の人達が出てきた。



 言っていた話から小柄な少年が葉田で青い目の青年が加藤というらしい。



 葉田はすぐに美優ちゃんを見つけ傷口を診察した。




「ダメみたいですね…」




 葉田が哀れむような顔で言った。




「何でだよ!?まだ息をしているだろ!?」




 俺は立ち上がり葉田に言った。




「息はしていても傷口が深くて出血量が…。それに血の匂いで奴らに後を着けられる可能性があります…」




 そんな…。俺は膝まずいた。その時ピー、ピーと電子音が鳴った。




「将軍、熱線反応ですよ…。間違いなくプーグルですね」




 そう言った黒髪に短髪の少年は眠たそうにしていかにもやる気のない顔をしている。だが眠たそうな目を覗けば顔はいい方だろう。




「分かった。おいお前とお前は救出者をヘリに乗せろ。残りの衛生兵と河谷と亮二は死体を燃やしに行け」




 皆を見ながら加藤がそう指示をした。そういうと衛生兵は美優ちゃんの死体と緑色の怪物を抱えた。




「早く上の階へ、避難しますよ」




 そう葉田が俺に言ってきた。



「何で今すぐ死体を焼くんだよ…。それにまだあの子は生きてるだろ!!」





「グォォォーウ」





 近いとこから獣の威嚇のような声が聞こえてきた。さっきの怪物の仲間だろう。



 途端に衛生兵以外の人達はハンドガンを構えた。どうやら銃を持っているのは戦闘部隊だけのようだ。




「詳しいことは後で話しますから、今は早く避難してください!!」




 葉田は慌てながらそう非難を促す。しかし俺はすぐに反論した。




「ふざけんなよ!!ここは病院だろう!!医療道具ならいくらでもあるだろ!!」






 しばし沈黙が続いた。するとその間に廊下に緑色の怪物が複数現れ発砲しながらこちらへ向かってきた。



 幸いに距離は少しある。すぐさま戦闘部隊が応戦したようで銃撃戦が始まった。焦った葉田は必死に俺を説得する。




「口論してる時間はないんです!!早く上に避難を!!」




「俺の事は後でいいって言ってるだろ!!」




「てめぇいい加減にしろ!!」




 そう言ったのは鋭い目つきに髪は茶髪。さらにピアスを着けていてドラッドヘアというあまりいい格好とは言えない青年だ。



 つかつかとこちらへやってきて胸ぐらを掴まれたかと思うとピアスを着けた青年に思いっきり殴られた。




「そのぐらいの事でごちゃごちゃ言ってないでさっさと避難しやがれ!!」




「そのぐらいの事じゃないだろ!!」




 そう言って次に俺が殴り返そうと起き上がった時




「そこまでだ」




 後ろから俺の頭に冷たいものが突きつけられた。その直後カチッと弾を装填した音が響いたので銃だとすぐに分かった。声からして加藤だった。


 隊員達にざわめきが広まった。



 後ろをみるとピアスを着けたの青年も加藤がハンドガンを左手で向けている。




「次俺が言ったことに従わなければ撃つ」




 俺とピアスを着けた青年に緊張が走った。青い瞳で見つめられると全てを見とうされたような感覚になった。



 口元は不適な笑みを浮かべている…。どうやら本気らしい。




「健太郎。お前は今日だけ死体を下まで運ぶ係りだ。早速運んでくれ時間がない。いいな?」




 加藤はこいつに頭を冷やせと言ってるのだろうかピアスを着けた青年に向かって言った。

 話から健太郎とはピアスを着けた青年のことなのだろう。



 健太郎は反抗的な目で一瞬睨んだものの、反論しても無駄だと思ったらしい。




「分ったよ…」




 そう言い引き下がった。加藤は周りを見た。




「戦闘部隊はここに残って健太朗の援護を頼む。河谷が指揮を取れ。俺と葉田以外の衛生兵は屋上へ待機しろ」




 怪物は全部頭を撃たれて死んでいた。戦闘部隊の人達はかすり傷こそ負っているものの全員無事だった。


 無事を河谷と呼ばれた眼鏡の青年が確認すると彼を先頭に戦闘部隊の人達はどこかへ行ってしまった。それを見送った後、視線が俺に戻った。




「さて…。お前も早く避難しろ。時間がないんだ」




「何故助かるかもしれない女の子を置いて逃げなくちゃならない!!」




 即答でそう答えた。次の瞬間ドン!!っという銃声が聞こえた。



 くっ…。こいつマジで撃ったのかよ。太ももを撃たれていたようでズボンに、血がにじみ出てきた。だが傷は浅かった。恐らく急所は避けたのだろう。




「もう一回だけ言ってやる…。避難しろ。命が惜しくないのならな」




 こいつの性格上本当に次は殺されるかも知れない。だからといって美優ちゃんを見捨てる気はない俺は加藤の目をまっすぐ向いて言った。




「もし…。自分だけ助かったとしても俺は家族や友達に胸張って生きれないと思う」




「何が言いたい?」




「俺は自分にだけは嘘をつきたくない」




 今この瞬間にも殺されるかも知れないのに、自分でも驚くぐらい冷静な口調で言えた。

 しばらく加藤は考えていた。すると加藤は舌打ちをした。




「お前の頑固さは支部長並だな…」




 呆れたような顔をして加藤は銃を下ろした。




「おい葉田、そこの女の子も屋上へ連れて行け」




「え!?加藤中将それは命令違反ですよ!!」




 葉田がそう言った。すると加藤は頭を掻いた。




「そんな事は俺も分かっている…。もしもの時は責任は俺がとる。とりあえず俺らは屋上で待機だ」




「了解です…」




 しぶしぶそう言うと衛生兵の人達は美優ちゃんを大事そうに抱えて屋上へ行った。どうやら美優ちゃんを助けてくれるようだ。




「さあ早く俺らも行くぞ」




「あの…。加藤さん、ありがとうございます」




「礼なら後でいくらでも貰ってやるから早く屋上へ行け」




 俺と加藤と美優ちゃんを抱えた衛生兵達は屋上へ行った。







◆◆◆◆◆◆◆







「あの女の子は妹さんか?」




 そう屋上で加藤がヘリの機内で尋ねてきた。機内では暖房がついておりとても暖かい。




「いや違います。病院内で会ったんです。本当にありがとうございます」




「別に敬語じゃなくてタメ口でいい。年も近そうだしな」




 そう加藤が言って戸惑った。しかし断って気まずくなるのは嫌だ。




「じゃあそう呼ばせてもらおうかな、敬語とか堅いのは正直苦手だし」




しばらくしてから加藤が思い出したようにこちらを見た。




「そういや名乗ってなかったな…。俺は加藤 龍也、十八歳だ」




 俺と手を交わしながら言った。慌てて俺も名乗った。




「平生 創真、十六歳です」




「ん?ヒラバエってどう書くんだ?」




 不思議そうに俺の名字尋ねてきた。




「えーと平成の平に、生活の生」




「それでヒラバエって読めるのか…」




 そうかそうかと一人で加藤は何度も頷いた。




「ところで平生、何でこの九州中央海病院に避難もせず。残っていたんだ?」




 話は本題に入ったようだ。




「それが俺もよく分からないんだ…。半年前トラックと事故って気づいたらここに…」




「半年前か…。なる程、しかしなんで…」




 加藤はそれっきりずっと考え込んでいたので、俺はしびれを切らして一番気になる質問をした。




「あの緑の怪物は何なんですか?」




「ああプーグルのことか?」




「プーグル?」




 そういえば聞き覚えのある単語だ。




「正式にはPerson pattern global outside lifeだ。直訳すると《人型地球外生命体》というらしい。まあ大半の人が頭文字をとってPPGOLと呼んでいる…。お前が気を失っている間に日本や世界各地にPPGOLは上陸した。そして殺人ウイルスをばらまいたり、奴ら独特の兵器を使い侵略をはじめた…。今じゃもうほとんどの国が奴らの占領下になっちまった」




 自分でも予想はしていたがそれ以上の事態に絶句してしまった。






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