プロローグ
初めて書くので下手ですが、長い目で見ていただけたら光栄です。
晴れた日の午後。窓から入ってくる陽射しで、教室はほんわか暖かかった。
もうすぐ秋分、そろそろ肌寒くなってきてもいい具合なのに、冷たい風は入ってこない。
そのせいだろう、授業では、大半の生徒がうたた寝をしている。
そんな中私は、襲いかかる睡魔と闘いながら、前を見つめる。
だからといって、私は、優等生というわけではない。そこそこ真面目で、そこそこの成績。もちろん、いつも集中して授業を受けてもいない。
けど、この授業だけは、私は優等生、だと思う。
どうしても、真面目に受けたい理由がある。
それは私の視線の先…
生物の先生、田端孝介に見てもらいたいから。
私、田端先生のことが、好き、なんです。
授業中、この言葉を何度繰り返したことか。気付くとノートに書かれている、告白。
もちろん相手に伝えることなんて出来ない。
でも、せめて好印象な生徒になりたい。
*
田端先生がいると、そこはいつでも、どことなく温かい。
それは多分、彼が温かい人だから、だと思う。
その心地よさのせいか、いつのまにか私は・・・・・・。
先生と初めてあったのは今年の四月。
中高一貫制のこの学校では、卒業生を送った教師が、中等部から高校に移動になることがたびたびある。
田端先生もその一人だった。
私達の教室に入った先生が教壇に上がろうとした瞬間、突然の衝撃音。
ふと前を見た時には、チョークの粉まみれの彼が、恥ずかしそうに笑っていた。
「こんな登場の仕方は嫌だったんですけどね。」
先生は教壇の段差に、足を引っ掛け、盛大に転んだみたいだった。
まだチョークの粉がついていることに気づかず、払いおわったと思っている先生が授業を始める。
ちょっと抜けているところがあっても、その授業は、今までの授業なんか歯が立たないくらい、
ものすごく、ものすごく、分かりやすかった。
私が興味を出す理由は、それで十分だった。
「あれ、皆、眠たそうだなぁ」
先生が教室を見渡す。
ふいに目が合う。しかし、すぐに視線は別のところへいく。
あまり、じっと目を見て話さないのは、彼の改善点かもしれない。
笑ってるときはそんなことないのに。
照れるのかな、なんて、自意識過剰か。
「今年は暖かいよな、そういえば前に、僕の友達が・・・・・・」
また先生が脱線した話をする。
これはもう、恒例の儀式になっているかも。
先生が話しだすと、いつのまにか皆、話に耳をかたむけている。
多分、それが面白いのを知っているから。
窓から爽やかな空気が入りこんでくる。
「で、先生は何してたんですか、その時」
生徒が質問をして、話がどんどん膨らむ。
私はこの時間が大好きだ。
「俺も連れて行かれてさぁ」
そして、ふと気付く。
あ、俺になってる。
そういえばこの先生は、大抵の一人称は“僕”なのに、こういう時は自然に“俺”になる。
多分、“僕”が仕事用で、“俺”が素なのだろう。
“俺”の先生は、本当に楽しそうに喋る。
教師の表情に、子供っぽい表情がたまにまじる。
ふふ、
私の顔には自然と笑みがこぼれていた。
先生もそれに気づいて笑いかけてくれる。
それは、積極的でない私にとって、至福の瞬間だったりする。