第六頁 ― 学年初日の朝
ゴーン…ゴーン…
ゴーン…ゴーン…
窓枠からまだ陽光が差し込まない…
目覚まし時計が絶え間なく鳴り響く…
…
うー…
「まだ…こんなに…うるさいのかよ…?」ベッドの上を転がる
「どうして…まだ朝焼け前なのに…こんなに…うるさいんだ…」時計に手を伸ばす
…
ふあぁ…
「どれどれ…6時30分…」まぶたが重く、髪はぐしゃぐしゃ
…
「…これだけかよ…」布団を被って丸くなる
…
…
「…6時30分…」唇が動く
…
「6時30分!」跳ね起きて布団を蹴飛ばす
…
バタバタ…
「やべえ!」バスルームへ飛び込む
「こんなのありえねえ!」
…
「急がないと!」歯ブラシを手に取る
ゴシゴシ…
…
トコトコ…トコトコ…
「お兄ちゃん…」小さな後ろ姿が近づいてくる
「朝早いのに…お兄ちゃん何してるの…」小さな手で目をこする
「ケイ! もう時間がないんだ!」バスルームから飛び出す
バタバタ…バタバタ…
「後でパパに頼んで学校行ってくれ!」
…
「くそ!」靴紐を必死に結ぶ
「初登校で遅れるわけにはいかねえ!」
「みんな俺のことどう思うんだよ!」顔をしかめて拳を握る
…
「ハル、何慌ててんだ?」ゆっくり近づく後ろ姿
「父さん! 今急いでるんだ!」
「何が急ぎだ! せめて朝飯食ってけ!」男がキッチンを指す
「もう無理! 遅れるよ!」立ち上がって父を見る
「朝飯は後で食うよ。」
…
ガチャッ…
「学校行ってくる!」玄関へ急ぐ
…
「ちょっとハル! せめてこれだけでも…」男がドアの方へ手を伸ばす
バタンッ…
「…このパンだけでも…」男がドアを見つめる
……
はぁ…
「まったく呆れるよ!」男が腰に手を当てて首を振る
…
「イカリ、こいつお前そっくりだぞ!」男がキッチンへ振り返る
………………………………………………………………………………………………………………
霧が徐々に晴れ…
家の扉はまだ固く閉ざされ…
街灯はまだ完全に消えていない…
遠くから朝陽がようやく昇り始める…
ダダダ…ハッハッ…ハッハッ…
「間に合えばいいけど…俺…遅れないように…」ふらつきながら走る
…
「もうすぐだ…」学校が視界に入る
…
ギイィ…
校門がゆっくり閉まり、
近くの生徒たちが急いで駆け込む…
…
ダダダッ…ダダダッ…
「閉まるなよ!」体を低くして全力疾走
…
ガチャンッ…
校門が閉まり、薄い埃が舞い上がる
…
ハァ…ハァ…
ハァ…ハァ…
「セーフ…」腰を曲げて膝に手をつく
「遅れなかった…」額を拭う
……………………….
教室は人で埋まり…
各教室で電灯がまぶしく輝き…
廊下に点呼の声が響く…
…
コツコツ…コツコツ…
「もう授業始まってるじゃん!」肩紐を握り締めて腰を曲げる
「これじゃ罰ゲーム確定だよ!」
…
ふぅ…はぁ…
「よし…」教室のドア前で体を起こし、手が少し震える
「いくぞ!」
………
ギィッ…
「遅れてすみません!」顔を伏せて背中を丸める
「…」体を起こす
…
「いいよ! 早く入って!」葉山先生の声が響く
…
「あ…」ゆっくり顔を上げ、足が止まる
空っぽの教室、机の上に椅子が乗ったまま…
葉山先生が顎を支えて資料を見つめる
…
「まだ入らないのか?」葉山先生が振り向く
「はい!」急いで席へ向かう
…
「はぁ…毎年これだよな…」葉山先生が唇を動かし、ハルを見る
「せめて…今年は少しは頑張る奴がいる…」
…
ドンッ…ドンッ…
「よし! ホームルーム始めるぞ!」葉山先生が立ち上がる
「人数少ないから、まず…」クラス名簿を見る
「班長はこれでランダム決定だ。何か文句あるか?」
「ないです!」慌てて首を振る
…
パラッ…
「次はクラスの競争点だ…」ページをめくる
「これは内規板に貼ってある!」教室の後ろを指す
「みんな知ってるはずだ!」
…
「次はこれだ…」黒板にチョークの跡が現れる
…………
ゴーン!
「ホームルーム終了だな!」葉山先生が時計を見る
「教科書出して授業の準備を!」
…
スマホの画面が光る…
そして教室のドアが開く…
…
ギィッ…
「葉山先生、荷物届けに来ました!」青い制服の警備員が笑う
「またかよ?」葉山先生が体を傾ける
「しょうがないだろ! 毎年恒例みたいなもんだよな?」警備員が教室を見回す
「たまに迷い込んだ奴もいるしな!」
…
「じゃあ後は先生に任せます!」警備員が去る
…………
はぁ…
「そこのお前ら! 早く入ってこい!」葉山先生が机から立ち上がる
…
トボトボ…トボトボ…
トコトコ…コツコツ…
一人、また一人…ゆっくり教室へ入ってくる…
顔を伏せ、鞄の紐を握り締めて…
…
「お前ら!」葉山先生が教室を見回す
「今日は初日だから見逃す!」
「でも二度とないぞ…
「わかったな?」
…
「はい…」クラス全員が顔を伏せて机につく
…
「よし! 教科書出せ!」授業開始だ
…………………………….
コンコンコン…コンコン…ポトッ…
黒板にびっしり並ぶ文字…
チョークの粉がまだ冷めていない…
クラス全員が目を凝らし、ペンを握り締めて…
…
ゴーン!
「これが覚えとけ!」葉山先生が黒板を指す
「関数、グラフの描き方、単調増加・減少、漸近線だ!」
「次はこれらの演習だ」
…
ギィッ…
「家でしっかり復習しろよ!」葉山先生が唇を曲げてドアへ向かう
……
「ハル…ねえハル…」背中に手が触れる
「レン! どうした?」振り向いて目を丸くする
…
「早すぎだろ! マジで…早すぎ…」レンが唇を尖らせ、目を細める
「しかも量が…」
「一時間でこれかよ…」レンの目がノートをぐるぐる見る
…
「わかった! 後で手伝うよ!」レンの肩に触れる
「おお友よ…」レンが手を握る
「頼んだぞ!」
…………………………
ギィッ…
「よし生徒たち、席について!」外語教師が入る
…
「今日は英語の基本13時制を復習だ!」先生がにこっと笑う
「さあ始めよう!」チョークを手に黒板へ向かう
…
コンコンコン…コンコン…
「まず現在形の4つから…
…
「次に過去形の4つ…
…
「それから未来形の4つ…
「最後に近未来形1つ…
…
ゴーン!
「おっと!」先生が時計を見る
「もうこんな時間か?」
「家でしっかり復習してくれ!」
「時制の理論復習はこれで最後だぞ!」先生がドアへ向かう
ギィッ…
……
「ハル…くん…」小さな声が近づく
「ヘル…ミー…」紡子さんがぼんやり黒板を見て、白目を剥く
…
「ど、どうした…紡子さん…
「多すぎ…」紡子さんの唇が動く
「現在…過去…未来…近未来まで…
…
プスプス…プスプス…
「あ…」紡子さんの目が窓へ、煙が上がる
「今日の空…きれいだね…
…
「紡子さん…」立ち上がって見る
「はぁ…」紡子さんがゆっくり振り向く
「昼休みに手伝うよ…
「本当…?」紡子さんが首を傾げる
「本当だよ、だから…」手を空で振り回す
「…現実に戻って!」
…
ペシッ!
「ハルくんったら…」紡子さんが肩を叩き、笑う
「早く言ってよ、心配したんだから」
……………………………………………………………………………………………………………......
ギィッ…
「生徒たち! 早く席に着きなさい!」本を抱えた女性が入る
…
ドンッ…
「先生は新しい学校のリズムに慣れるのが大変だってわかってる!」
「でもこれは朝の最後の2時限だ!」
「がんばりましょう!」
…
「さあ、国語の教科書の4ページを開いて!」
………
窓からそよぐ風…
ドアの隙間から差し込む陽光…
…
コンコンコン…コンコン…
…
先生のチョークの連続した音…
延々と続く文句…
…
「ここまででわかったかな?」先生が振り向いてクラスを見る
「…」軽く頷き、目を上げる
…
「おや!」先生が口元に手を当てる
「まだ昼休みじゃないのに!」
…
「このF組は呆れるよ…」先生が歯を食いしばる
…
バンッ!!
「早く起きろってんだよ!」チョークを握り締める
…
クラス全員が跳ね起きて、ぼんやりした目で…
腕を伸ばし、口を少し開く…
…
「生徒たちもやるな?」先生がチョークを握る
「本当はやりたくないけど…
「今日はこのクラスの点を減らす!」
…
えぇぇーっ!?
ザワッ…!ガヤガヤ…ワァァッ…!
クラス全員が椅子から立ち上がり、手を振り回す…
…
「先生、誤解です!」メガネの女の子が手を挙げる
「ちゃんと聞いてました!」茶髪の男の子がノートを差し出す
「慈悲を!」頭にリボンの女の子が手を合わせる
…
「いいよ!」先生が目を閉じる
「本当ですか?」メガネの女の子が見る
「本当だよ!」先生が腰に手を当てる
「よかった!」クラス全員が声を揃える
…
「でも条件が…」先生が隣の机を指す
「あの髪を隠してる子が授業のまとめを言え!」
…
ゆっくり隣を見る
………
「ねえ…そこの君…」金髪の女の子の服を軽く突く
…
ぼーっ…うとうと…あぁ…
「え…何…?」女の子が跳ね起きて、目を無理に開く




