三ページ目、初めて
…
キュッ…キュッ…キュッ…キュッ…
ヒソヒソ…ザワザワ…
黒板にチョークが走る音と、教室中に響く小声の作戦会議…
俺はそっと周りを見回す
「あとで頼むな!」
「前半はお前、後半は俺で分担!」
「わかんないとこあったら俺に聞けよ!」
そして、隣にいる相方を見ると……
まるで分厚い壁があるみたいだった
彼女は完全に横を向いて、頬杖ついてるだけ
「あの…一緒にやらないと…」
俺が手を伸ばしかける
フンッ!
即座にさらに横を向かれて完全スルー
「はぁ…」
「今回も一人でやるしかないか…」俺は心の中で呟いて手を引っ込め、問題に目を落とす
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「コトン」
「よし、静かに!」先生が背を向ける
トントン
「黒板に書いてある通り、今日は4技能全部出る。リスニング・リーディング・ライティング・スピーキングだ」先生が黒板を軽く叩く
「ペアワークだけど、リスニングだけは助け合い禁止。他は自由に協力していい」
「ただし…」先生が両手を教卓に置く
「あまり大声で話すと、隣のクラスに答えが漏れるぞ?」
「ルールはわかったな?」
「はーい!」クラス全員
「では、スタート!」
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スピーカーから英語が流れ始める
みんな一斉に耳を澄ます……が
“Did you hear any work words? …by adding an ending to a verb! Kaveh reports, so he’s a reporter. Amelia used to detect, so she was a detective. If you teach, you’re a teacher. And a videographer… uh, I think you understand…”
教室が一瞬で凍りつく
汗がダラダラ…眉間にシワ…目が点…唇を噛みしめてペンを握る手が震える
「パンッ!」
音声終了、先生が立ち上がる
「よし、次に行け!」
「先生!」メガネ女子が手を上げる
「一回しか流さないのは間違いじゃないですか…?」
「しかも速すぎて追いつけません…」
「残念だが、これがルールだ」先生がニヤリ
「このくらい、お前らなら余裕のはずだろ?」
教室が再び沈黙…みんなペンを止める…視線が交錯…
「時間ねえ!次行こう!」蓮が相方を引っ張る
「聞けなかったら仕方ねえ!他の問題やれ!」
バタバタ…
みんな我に返ってペンが動き出す
ワァーッ!
ガヤガヤ…ザワザワ…
「これわかる?」
「これどう?答え出た?」
「俺出た!」
いつの間にかペアワークがクラス全体の協力体制に
「はー…」
「やっぱF組、毎年こんな感じだよな…」先生が唇を噛む
「せめて中間まで持ってくれりゃいいんだが…」
そんなカオスの中、俺は周りを見渡して……
目が合った
カリッ!
コリコリ…コリコリ…
赤髪のショートカットが自分の髪をぐしゃぐしゃに掻きむしってる
ペンを噛んで、真っ白な答案用紙を睨みつけてる
「ズン…」
そして机に突っ伏して、腕を伸ばし、みんなの騒ぎをぼーっと見てる
「ここはこうやって…」無意識に手を伸ばす
「はっ…」彼女が跳ね起きて俺を見る
「ほら、Ifのやつ、実は簡単なんだよ」
「現実的に起こるか起こらないかだけ見て、タイプ決まるから」
クラスが急に静まり返る
全員の視線が俺たちの机に
「Ifはこう覚えとけ。起こりうる→1、起こらない→2、過去の話→3」
「で、1は現在形、2は過去形、3は過去完了形にすればいい」俺は笑顔で説明
彼女の目がどんどん丸くなって、顔が近づいてくる
「つまり3も2と同じで、hadを足して動詞を過去分詞にすれば…」
俺は両手で顔をガードして横を向く
「グイッ」
「ねえ」袖を掴まれる
「な…何…?」
「答えわかってるよね?」
「まあ…ちょっとだけ…」顔を逸らす
「だったら早く教えて!」
「俺も!」
「俺も!」
いつの間にかクラス全員が俺の周りに
「ドンッ!」
「そこまで!」先生が立ち上がる
「隣のクラスが授業中だぞ?静かにしろ」
「F組ほど騒がしいクラスはないって言われてるんだ、自覚しろ」
みんな渋々席に戻っていく
……
「ねえ」袖を軽く引かれる
俺は無視を決め込む
「ねえってば…ねえってば…」
「ねえよ…」
「ポンッ」
腕を叩かれる
「痛っ!」
「さっきから呼んでるのに無視すんなよ!」赤髪がムッとして睨む
「用?」
「もう一回やって」両肩を掴まれてガッと顔を近づけられる
「もう一回って…何を…」頬をかく
「さっきの説明!もう一回!」
「教えてくれよ!同じペアなんだから!」
「うわっ!」俺は後ろにのけぞる
「近すぎ!近すぎだって!」
でも彼女は引かない
「教えてくれなきゃ動かないから!」
「わかったわかった!」俺は顔を逸ける
「教えるからちょっと離れて!」
「エヘン」
「お前ら二人は…」先生が咳払い
俺たちは同時に背筋を伸ばす
「声は小さくしろって言ったはずだが…」
「プライベートなことはプライベートでやれ」
瞬間、二人とも真っ直ぐ前を向いて答案に向き直る
……でも横を見ると
彼女が机に突っ伏したまま、じーっとこっちを見てニヤついてる
「わかったよ!どこかわかんないとこ?」
「よっしゃあ!」彼女がガッツポーズ
「しっ!声!」俺は両手を振る
「うっさい!わかってるよ!」頬を膨らませて腰に手を当てる
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時間は過ぎ、みんな必死に書き続ける
窓から差し込む光がどんどん強くなって、教室が暑くなる
「リーン♪」
チャイム
「よし、ペンを置け!」先生が立ち上がる
「答案を前の列に回せ!」
「ふぁ〜」
クラス全員が椅子に崩れ落ちる
「やっと終わった…」
「何あの鬼問題…」
「はー…」
先生が答案の束を見て深いため息
全員の視線が教卓に
「ペラペラ」
「この調子じゃ早めに他校検討した方がいいぞ」
そして手がピタリと止まる
「これ、誰の?」答案を掲げる
「はい、俺です!」俺が手を挙げる
「なるほど…」先生が顎に手をやる
「今年のF組には鯉が一匹紛れ込んでるみたいだな」
「みんな覚えておけ!」
「午後はスピーキングテストだ!気合い入れろよ!」
……
トボトボ…トボトボ…
みんな重い足取りで教室を出ていく
でも人の流れと逆に……
長身の影が俺の机に近づいてきて
バンッ!
「ねえ、お前…十神だよな?」
さっきの赤髪が腰を曲げて、氷みたいな目で俺を見下ろす
「はい!」俺は背筋を伸ばす
「暇ある?ちょっと来い」




