第二十八頁 ー 朝霧の冷たい風
周囲の部屋はまだドアが閉まったまま
朝霧がまだ残る場所
街灯の光もまだ消えきっていない
…
ジャー…
白い水流、まだ冷たい水しぶきが跳ねる
鏡に映る、ぼんやりとした私の姿
…
シャカシャカ…
黒い長い髪が体中に広がり
赤い髪の毛が視界を遮る
両手がゆらゆら揺れ、目はまだ半開き
……
タップ…タップ…
スマホの光が顔を照らす
あちこちに広がる投稿たち
…
ポチ.
「今日の運勢は?」唇がわずかに微笑み、指がそっと触れる
「今日はどんなことが起きるかな?」
…
画面の色が変わり、文字が浮かぶ
「全てが望むようにはいかないでしょう…」
「黒の中から、幸運を見つけられる。」
…
スッ…
「何これ?」唇が小さく歪む、手がカバンを掴む
「なんでこんなに分かりにくいんだろう…?」
…
…
バタン!
「もうなるようになるしかないよね!」自分の部屋のドアがゆっくり閉まる
………………………………………………………………………………………………………………
ゴォォォ…
電車が出発し、冷たい風が後を追う
視線は学校の方へ
今日こそ、絶対に達成しなければならない目標と共に
……………………………
わいわい…わいわい…
人影の間で、賑わう周囲
満開の笑顔、校庭中に響く声
あちこちの小さな話
…
でも今、私の視線は
一人の背中をまっすぐ捉えている
唯一、視線は手元の本に注がれたまま
……
ガシッ…
「おーい!」オレンジ髪の奴がその人の首に腕を回す
「ハル! おはよう!」
「朝っぱらからもう真面目かよ?」
…
「これか?」その人が振り返り、ノートをオレンジ髪に向ける
「今日の宿題、先生がチェックするって言ってただけだよ。」
「念のため復習してるだけ。」
…
「そんなの復習する意味ねえよ!」オレンジ髪が笑い、手を激しく振る
「どうせクラスにいっぱいいるし、俺の番なんて来ねえって!」
…
「先生、宿題の出来までチェックするらしいよ。」その人が目を伏せて本の端を見る
「しかも正しくやってるかどうかも見るって。」
…
「げっ!」オレンジ髪が立ち上がり、両手高く上げ、顔は動かず
…
「レン… まさか…」その人が目を細めて見る
…
パンッ!
「ハル様ぁ!」オレンジ髪が手を叩き、目を閉じる
「この弱者に慈悲を!」
「俺の未来を祝福してくれぇ!」
…
はぁ…
「2限目がもう宿題チェックだぞ。」その人が肩を落とし、目を閉じる
「しかも1限目がハヤマ先生の授業だし。」
「間に合うのかよ?」
…
トン!
「安心してくれ!」オレンジ髪が胸を張り、手を置く
「ハルが力を貸してくれりゃ、そんなの朝飯前だぜ!」
…
「今回だけだからな。」その人が体を低くし、両手だらん
…………………………
ざわざわ…ざわざわ…
遠くから、人々が密集する場所
次々と集まってくる人影
白い紙の掲示板
赤いインクで太く書かれた名前たち
…
こと…こと…
「朝から何でこんなに盛り上がってんだ?」オレンジ髪が額に手を当てる
「何か面白いことでもあんのか?」
……
「あ!」赤髪の女の子が群衆から出て、手を振る
「ハルくん! おはよう!」
「今日遅いじゃん!」
…
「ツメコさん、おはよう。」その人が軽く頷く
「ただ道中でちょっと復習してただけだよ。」
…
「へぇ~…」赤髪の女の子が腰に手を当て、屈む
「ハルくんっていつもそんな感じだよね?」
「でも今回の宿題、マジで難しかったよね?」
…
「おい!」オレンジ髪が腕を組み、目を睨む
「お前ら楽しそうじゃねえか。」
…
「コバヤシくんもいたんだ。」赤髪の女の子がチラッと見る
「ごめん、さっきまで忙しくて。」
…
くっ…
「この女…」オレンジ髪が唇を噛む
「いきなり割り込んでくるとかありえねえだろ?」
…
「取られても知らないよ。」赤髪の女の子が背を向ける
……
「ツメコさん。」その人が赤髪の女の子を見る
「何か起きてるの知ってる?」
「あっちの方に何があるの?」
…
ぐいっ!
「これはハルくんが行けばすぐ分かるよ!」赤髪の女の子が笑顔でその人の手を掴み、群衆の中へ
…
…
人ごみを抜けると、黒い掲示板が現れる
上部に白いチョークの文字:
「第1回学力認定試験 結果」
白い紙があちこちに貼られ
全校のクラス番号付きの名前
一部赤、一部黄色
そして一部、名前が読めないほど黒く塗りつぶされている
…
「これって… まさか…」その人が目を見開き、体が後ずさる
…
「多分これだよ。」赤髪の女の子が一枚の紙を指す
「見てみなよ…」
「うちのクラス、こんなに黒塗りばっかじゃん。」
…
ぐいぐい…
「じゃあ…」オレンジ髪が人ごみをかき分ける
「今日のクラス、どうなるんだろうな?」
………………………………………………………………………………………………………………
「リーン♪」
校内チャイムが廊下中に響く
椅子は今、人でいっぱい
ささやき声が各教室に軽く広がる
…
ガラッ…
「みんな、おはよう!」ハヤマ先生が教壇へ、視線を巡らす
「まず最初に、第1回試験に合格したみんな、おめでとう。」
「情報も技術も不足してる中で…」
「よくここまで乗り越えたな。」
…
トン.
「でも油断は禁物だぞ。」ハヤマ先生が机に手を置き、目を細める
「これ、ただのウォーミングアップだからな。」
「これからの方がずっと面白いぞ。」
…
「 」私の目が大きく開き、体が固まる
……
えええっ!?
教室中に響く驚きの声
次々と椅子から立ち上がる影
…
「これがまだウォーミングアップだけってマジかよ?」オレンジ髪が頭に手を当てる
「何回もやられたらどうすりゃいいんだよ」赤髪の女の子が周りを見回す
「ぶるぶる…」金髪の女の子が手を握り、目が虚ろ
「そんなのありえないですよ、ハヤマ先生!」学級委員が前へ手を伸ばす
…
「まあまあ…」ハヤマ先生が顔を伏せ、目を閉じ、手を上下に振る
「落ち着け落ち着け。」
「次からはこんなサプライズはないから。」
……
カリカリ…カリカリ…
黒板に白いチョークの線が徐々に現れる
チョークの粉が床にゆっくり落ちる
…
トン.
「ここを見てくれ。」ハヤマ先生が黒板に手を置く
「これからは各学期末に、たった1教科だけをテストする。」
「その学期が終わったら、その教科はもう勉強しなくていい。」
「成績もその1教科のテスト結果で決まる。」
……
すっ…
「先生…」副委員の女の子が椅子から立ち、手をゆっくり高く上げる、視線が泳ぐ
「まだよく分からないんですけど…」
「結局… その教科をテストしたらもう勉強しなくていいって、どういうことですか?」
…
「その教科のテストを終えたら…」ハヤマ先生が手を高く上げる
「もうその教科を勉強する必要はないってことだ。」
「ただし、好きで続けたい生徒は学校に申請すれば引き続き履修できる。」
「たとえ数人しかいなくても、クラスは開くよ。」
………
やったー!
それぞれの顔に笑みが浮かぶ
手があちこちで振り回される
教室中に響く歓声
…
「これ最高じゃん!」オレンジ髪が椅子から跳ねる
「その教科さえクリアすれば、もう勉強しなくていいんだ。」赤髪の女の子が周りを見る
「…」金髪の女の子が唇を微笑ませる
「やっと自由時間が増えるね。」ピンク髪の女の子がメモ帳の上の本をちらっと見る
「地獄の試練の先に天国が…」小柄な女の子がうつむく
……
パンッ!
「よしよし!」ハヤマ先生が手を叩き、目を細める
「今日はちょっと祝ってもいいぞ。」
「でも限度ってものがあるからな。」
…
「今朝、みんな入り口で見たよな…?」ハヤマ先生が周りを見回す
「成績が悪いか、規律違反したらどうなるか…」
…
一人一人、体が凍りつく
ゆっくり下がり、足元の椅子に戻る
…
「だから今、クラスがめちゃくちゃになってるんだ…」ハヤマ先生がドアの方を見る
…………………
ガラッ…
影たちが次々と入ってくる
名札がアルファベット混じり
視線を巡らし、顔が少し歪む
…
コツ…コツ…
「これからここにいる者たちは…」ハヤマ先生が新入りグループへ近づく
「全員F組のメンバーになる。」
「仲良くやってくれよ。」
…
「そうだった、言い忘れてた…」ハヤマ先生が教壇へ戻る
…
…
ぱらぱら…
小さな紙片が机に散らばる
ホワイトボードにはこの教室の配置図
あちこちに数字
ただ一箇所、教師の真正面の席にだけ名前
…
「さあ、みんなここに来てくじを引け!」ハヤマ先生が小さな紙の山を指す
「出た番号の席に座れ!」
…
「なんでハルだけ名前書いてあんだよ?」オレンジ髪が机から身を乗り出す
「そうだよ、なんでハルくんだけなの?」赤髪の女の子が手を振り続ける
…
「何言ってんだお前ら。」ハヤマ先生が目を丸くする
「当たり前だろ?」
「トガミさんの席は適当に決められるわけない。」
「小テストの時にカンニングされたらどうする?」
…
「それに…」ハヤマ先生が目を細め、首を上げる
「試してみたくないのか?」
「アマミヤさんみたいに隣に座る体験を?」
…
ぱっ!
「 」金髪の女の子の両手がその人を覆い、視線が教室中を泳ぐ
………………………………………………
がたっ…ずるずる…
椅子たちの間で影が動き回る
教壇に上がる時の笑顔
顔色が変わって遠くへ退く
視線はその人の席に釘付け
軽く漏れる言葉
…
「40じゃなくて何でだよ…」オレンジ髪が顔をしかめる
「あとちょっとだったのに…」赤髪の女の子が紙を凝視
「むっ……」金髪の女の子が遠くから睨む
「まあ次に期待だな。」学級委員が目を閉じる
……
ばさばさ…
「せめて楽な席がいいな…」私が手を回し、唇が小さく動く
…
ひらっ…
私の手の白い紙が開く
目が大きく見開き、配置図を見る
手が震え、視線がその人にちらっと
紙の上に、40の数字が現れる
…………………………………………………………….
がたっ…
視線を別の方向へ逸らす
手で椅子を軽く引き、体を縮こまらせる
…
「やあ。」その人が微笑み、手を振る
「これからよろしくな!」
…
「う、うん…」手が頬に当たり、背を向ける
「こちらこそ…」
……
ひそひそ…
教室中にささやきが広がる
冷たい視線が私に向けられる
…
「なんで私じゃないの?」
「あの女誰?」
「嫌なら変えれば?」
「もう優秀な奴が隣にいるじゃん…」
……
ぎゅっ…
「みんなどうせ何も分かってないくせに。」拳を強く握り、目を細める
「この世に…」
「無条件で他人を助ける奴なんていない。」
…
ぱっ!
「今日という日、どんなことがあっても…」私が振り返り、その人を睨みつける
「絶対にお前の偽りの仮面を剥ぎ取ってやる。」
「トガミ ハル。」




