第二十七頁 ― テストの裏側
ちゅんちゅん…
白い雲の筋が青い空をゆっくり流れていく
鳥の翼が街のあちこちを舞う
…
ざわざわ…ざわざわ…
道に長く伸びる人影たち
高いビルに響き渡る音
……
コツ…コツ…
アスファルトに続く足音
視線が四方八方をきょろきょろ
俺の手はカバンの紐を強く握りしめる
…
たったったっ…
「オイ!!!」影が手を振って近づいてくる
「お前も呼ばれたのか?」
…
「蓮…」俺のまぶたがゆっくり下がり、頭がゆっくり回る
…
「まさか! 日曜に学校呼び出されるとは思わなかったぜ!」蓮が笑って手をぶんぶん振る
「予定全部キャンセルだよ。」
「一体何話すつもりなんだろうな。」
…
「多分…あの件だろ…」体が固まって、目が細まる
「どっちにしろ…」
…
「もうどうでもいいだろ! 今さら何ができるってんだ!」蓮が笑って背を向ける
「どうせ決まっちゃったことだし!」
「一回で終わらせてしまおうぜ。」
…
「蓮…でも…」俺は手を前に伸ばす
…
かさっ…かさっ…
カバンが肩の上で向きを変える
蓮の指がくるくる回る
…
「だから…俺たちもう言っただろ…」蓮が首を傾げて振り返り、笑みを浮かべる
「お前のせいじゃない…」
ばんっ!
「まあいいや!」蓮が体を回して肩に手を置く
「あとでどっか遊びに行かね? 気分転換に。」
「今日は俺がおごるぜ!」
…
ふっ…
「お前…」唇が微笑み、目が丸くなる
「本当に払えるのかよ?」
…
「当たり前だろ!」蓮が空を見上げて目を閉じる
「俺とお前だけだぜ。」
…
「お前、何か忘れてない?」俺は目を細めて首を傾げる
「それとも…誰か他に…」
…
あっ。
「じゃあ…何かあったら手伝ってくれよ…な?」蓮が俺をちらっと見て目を丸くする
…
はぁ…
「もうお前には言葉がないわ。」俺は軽く頭を下げて目を閉じ、唇を微笑ませる
………………………………………………………………………………………………………………
コツ…コツ…
陽光が隅々まで差し込んでくる
音のない廊下
机の上に椅子が乗せられた教室たち
……
ギィ…
教室のドアがゆっくり開く
机に顔を伏せた顔たち
カバンの中に収まった教科書
それぞれの机で絡み合う手
…
「さっさと終わらせようぜ。」蓮が俺を見て唇を動かす
「帰って他にやりたいこといっぱいあるし。」
…
「うん…」俺は軽く頷いて机に向き直る
……………
ガラッ…
もう一度ドアが開く
高い封筒の山を抱えた影
周りの視線が一瞬も瞬かない
肩が椅子の背もたれに寄りかかる
…
コツ…
コツ…
「今日は全員時間通りに来たな?」葉山先生が周りを見回す
「普段もこうやって登校してくれればどれだけ楽か。」
「…」視線が机に落ちる
…
とんっ!
「時間の無駄はなしだ!」葉山先生が目を細めて手を机に置く
「今日なぜ呼ばれたか、分かってるよな?」
「 」指が強く絡み合う
…
「試験なんて所詮は課題だ。」葉山先生が首を回す
「点が悪けりゃ改善すればいい。」
「でもなんで…」
…
どんっ!
「なんでそんなまねしなきゃいけなかったんだ?」葉山先生が顔をしかめて手を強く叩く
「 」肩がびくっと震え、目が閉じる
…
たん…たん…
「学校はお前たちにチャンスを与えた…」葉山先生が封筒の山を叩き続ける
「俺も復習プリント渡した…」
「授業の内容もそれだけだ…」
…
「なんで勉強しようとしなかった?」葉山先生が睨む
「なんでサポートツールを使わなかった?」
「なんで周りに聞かなかった?」
「もうそんな歳なのに自分でどうにかできないのか?」
「 」体が凍りつく
…
「まあいい…」葉山先生が目を閉じる
「まだ若いんだから…」
「学ぶことはまだまだある…」
「だから…」
「最後のチャンスだ。」葉山先生が首を高く上げる
「やった奴は素直に名乗り出ろ。」
「他人を巻き込むな。」
「一日中ここにいるわけじゃないぞ。」
……
指先がくるくる回る
手のひらに汗がびっしょり
視線がちらちら周りを見る
…
すっ…
俺の視線が下に落ち、手がゆっくり上がる
足に力が入らない
背中を必死に伸ばす
…
…
「二人かよ?」葉山先生が顎に手を当て
「最初からこうだった方がマシだったんじゃないか?」
「みんなの時間を無駄にするだけだ。」
…
「二…人…」唇がわずかに動く、体が周りを見回そうとする
…
伸びる背中の海の中で
目を上げられない視線たち
一本の孤独な腕、しっかり立った足
顔を伏せ、オレンジの髪が目を隠す
「…なんで…」唇が動く、目が見開く
…
ガタッ…
頭が椅子から離れる
音が四方八方に響く
そして周りが…
誰も座ったままじゃなくなる。
…
「これがこのクラスの結論か…」葉山先生が唇を動かし、薄く笑う
「数年前より…」
……
たっ…たっ…たっ…
廊下に響く足音
……
「こうなった以上…」葉山先生が部屋を指差す
「俺に言えるのはこれだけだ…」
……
だだだ…
窓の外に影が現れる
……
「みんな…」葉山先生が目を丸くする
……………
バンッ!
教室のドアが勢いよく開く
外側を埋め尽くす黒い影たち
そして一人の影、頬いっぱいに広がる笑顔
目隠しがあちこちに
…
「みんなおめでとう!」目隠しの少女が部屋を見回す
……
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
窓側に沿って紙吹雪の爆発
リボンが空を舞う
紙くずがあちこちに散らばる
笑顔の影が部屋を見つめる
「 」あちこちで体が凍りつく
視線がドアに釘付け
………
「あの連中…」葉山先生が目を細めて体を低くする
「タイミングを選ぶってことを知らないな。」
…
「だって先生の演技が下手すぎるんだもん?」目隠しの少女が体を曲げて手を後ろに回す
「もうちょっとで全部台無しだったよ。」
…
ぼりぼり…
「好きにしろよ。」葉山先生が頭をかいて出口に向かう
「でもあまり壊すなよ。」
…
「はーい!」目隠しの少女が笑って手を振る
………………
「あの…」俺がゆっくり体を回して視線を向ける
「これ…一体…」
…
「みんな分かんないよね?」目隠しの少女が首を傾げて俺を見る
「じゃあ桐生ちゃんに説明してもらおう!」
…
ぺた…ぺた…
「なんでお前がやらないんだよ、八潮ちゃん。」桐生先輩が体を曲げて頭を下げる
「どうせそこにいるんだし。」
…
「やだもん!」八潮先輩が体を回して頬を少し膨らませる
「こんなつまんない話、自分でやってよ。」
「私、そういうの苦手なんだから!」
…
はぁ…
「…」桐生先輩が教壇に進む
………………………………………………………………………………………………………………
「みんなこんにちは!」桐生先輩が周りを見回す
「生徒会長の桐生真人です。」
「クラスの中にはもう知ってる人もいるかもな。」
「この数日、みんなかなり混乱したと思う…」
「少し説明させてくれ。」
…
そっ…
「まず試験問題盗難の件について…」桐生先輩が封筒を指す
「生徒会として保証する。あれは起こっていない。」
しん…
「つまり…」つめ子さんが首を傾げて指を口に当てる
…
あはは…
「そのままの意味だよ。」桐生先輩が笑って目を閉じる
えっ!?
「 」視線が教壇に釘付け
…
「遅すぎるよ。」八潮先輩が腕を組む
「生徒会がそんな奴らを野放しにすると思う?」
「もし本当だったら俺たち終わりだろ?」青髪の先輩が顎に手を当てる
「…」ガタイのいい先輩が何度も頷く
…
…
ざわざわざわ!!
校庭中に響くざわめき
手が教壇に向かって伸びる
背中がぐるぐる回る
…
「俺たちをからかってんのか?」蓮が顔を上げる
「クラスメート同士で疑わせるとか!」つめ子さんが俺を指す
「教師がそんなの許すのかよ?」ピンク髪の少女が生徒会を見る
「まだ人間かよ?」白川さんが目を細める
「邪道…異教…非人間…」小柄な少女が唇を動かす
……
パンッ!パンッ!
「ちょっと許してあげてよ!」セーターの先輩が手を叩いて周りを見る
「これも生徒会の伝統なんだから!」
…
「伝統…」俺は首を傾げる
…
「そうなんだよ!」セーターの先輩が天井に手を上げる
「小学校で3年生になるまでテストがないのと同じ。」
「私たちの役目は、この学校でお前たちの1年生・2年生になること。」
…
「つまり…これまでのこと全部…」白川さんがゆっくり手を上げて周りを見る
…
「そう!」セーターの先輩が笑って頷く
「入学した初日から…」
「最初のテストはもう始まってた。」
…
「でも今年は面白かったな!」青髪の先輩が顎に手を当てて俺を見る
「まさかここまでとは。」
……
ぎゅううっ!
「ねえ…」神崎先輩が首を傾げて俺を見る
「後輩くん、もう誰かのもの?」
…
「え…それは…」俺は手をぶんぶん振って顔が赤くなる
「まだ…です…」
…
「じゃあ私と付き合おうよ!」神崎先輩が目を閉じてにっこり
…
バンッ!!
「生徒会だろうが限度があるだろ!」つめ子さんが机を叩いて目を細める
…
くいっ…
「…」雨宮さんが俺の服を何度も引っ張る
…
「面白いね。」神崎先輩がにやりと笑って周りを見る
「でも簡単に譲らないよ。」
……
はははは!
「いつもお節介焼いてんじゃねえよ!」蓮が椅子に寄りかかる
………
「よし、今回は誰が連れてきた?」前髪の先輩が振り返る
…
「前回は私がやった!」セーターの先輩が腰に手を当てる
「私弱いよ。」緑髪の先輩が頬を押さえて微笑む
「女の力は止められない。」ガタイのいい先輩が体を回す
「私今仕事終わったばっかりなのに!」八潮先輩が教壇を見る
…
「じゃあ…ちょっとだけ預かっとくか…」桐生先輩が目を細めて俺を見る
……………………………………………………………………
かりっ…
部屋の奥の方
前を向く背中の間で
…
スマホの画面が光る
指が口の周りをなぞる
赤い髪の間から
長い黒髪が背中まで伸びる
…
「はる…十神…はる…」小さな声が口から漏れる
「なんでいつもあいつなんだ…?」




