第二十五頁――信頼の限界(一)
部屋は真っ暗で、一筋の光も入らない
真正面に眩しく照らすライトの光
そして四方八方から囲むように立つ影たち
…
ぎし…ぎし…
「これ…」目を見開き、俺は周りを見回し、体をばたつかせる
「一体これはどういうことだよ?」
「先輩が何を言ってるのか全然分からない。」
「それに、なんで俺がこんな風に縛られてるんだ?」
…
「後輩くんってほんとに…」神崎先輩が顔を近づけてくる
「言ったじゃん、でも全然分かってないの?」
「この前も先に言ったよね?」
…
ぽん!
「そんな説明じゃ聖人でも分からないよ!」誰かが神崎先輩の頭を叩く
「人を呼んだはいいけど、こんな風に縛っちゃって…」
「誰がすぐ理解できるかっての!」
…
「もっとゆっくり説明してあげなよ、ヒヨリ!」セーターを着た少女が周りを見回す
「特にあんたよ、緋和!」
……
「だから全部大丈夫だって言ってるのに…」神崎先輩が唇を軽く噛み、俺の方を振り返る
「ね、後輩くん?」
…
「…」俺は目を逸らし、体を背ける
…
「い、いやだ…」神崎先輩が後ずさりし、顔がこわばる
……
ぱんっ!
「ごめんね、これについては!」青髪の先輩が両手を叩き合わせる
「でも状況があまりにも緊急すぎて、他に方法がなかったんだ。」
「分かってくれよ。」
…
「う、うん…別にいいよ…」俺は目を丸くして周りを見回し、下の縄を見る
「でも…とりあえず…」
…
「ああもちろん。」背の高い男が俺の後ろに近づく
……………
する…する…
縄が徐々に緩められる
カーテンが少しずつめくられ
陽光が部屋に少しずつ差し込んでくる
…
「突然ですまなかった。」金髪の先輩が手を前に差し出す
「でも今、事態がかなり複雑で…」
「時間もあまり残ってない…」
「容疑の範囲が広すぎて…」
「もうほとんど解決策がないんだ。」
…
「はい、大丈夫です!」俺は軽く頭を下げ、手を前に出す
「でも…さっきからずっと何かについて話してるけど…」
「一体何があったんですか?」
「一年生の俺が何の役に立てるっていうんですか?」
…
「まず説明させてくれ。」金髪の先輩が体を低くし、手を胸に当てる
「俺は生徒会長の桐生真人だ。」
…
「今ここにいる人たち全員。」桐生先輩が周りを指差す
「生徒会のメンバーだ。」
「あと学校の主要クラブの核心メンバーも何人か。」
…
「…」俺は周りを見回し、手がこわばる
「俺…何か悪いことしたんですか?」
「それとも…何か…重大な違反を…」
「それか…」
…
ははっ…
「そんなんじゃないよ。」桐生先輩が微笑み、目を閉じる
「むしろ逆だ。」
…
「逆…?」俺は首を傾げる
「先輩の…どういう意味ですか?」
……
「そりゃそうだよな?」桐生先輩が神崎先輩を振り返り、目を細める
「まともに説明しないから誰も分からないんだよ!」
…
ひゅー…
「…」神崎先輩が後頭部に手をやり、顔を背ける
…
「じゃあもう一度説明し直すよ。」桐生先輩が視線を向ける
………………
とん…
「神崎さんが前に説明した通り…」桐生先輩が机に手を置く
「今、学校で非常に重大な事件が発覚した…」
「試験問題保管場所で、いろんな封筒の破り跡がたくさん見つかって…」
「ぐしゃぐしゃに引きちぎられた紙の束…」
「そして封筒の中に不自然に押し込まれた妙な問題用紙。」
…
「調査の結果…」桐生先輩が背の高い先輩に視線を移す
「容疑範囲を絞り込み、多くの容疑者を確保できた…」
「容疑の範囲も徐々に狭まってきた…」
…
ぎゅっ…
「でもそれでも…」桐生先輩が机の端を強く握る
「学校全体を封鎖するのは非常に難しい…」
「問題がどの程度漏洩したか、誰も正確に把握できていない。」
…
すた…すた…
「多くのクラスが協力してくれたけど…」セーターの先輩が俺の周りを歩き回る
「かなり多くの関係者を捕まえられた。」
「でもF組に関しては、ほぼ手も足も出ない。」
…
「まあ責められないよ。」青髪の先輩が顎に手を当て、笑みを浮かべる
「どうせF組のほとんども試験に興味ないし。」
…
「あの…」俺は周りを見回す
「確かに深刻そうだけど…」
「でも俺みたいな生徒が…」
「この事件で何の役に立てるっていうんですか…」
「それにF組にも俺よりずっと優秀な人いっぱいいるのに。」
…
「後輩。」前髪で目を隠した少女が腰に手を当て
「謙遜はいいけど…」
「そんなに自分を下げるなよ。」
…
「ちょっと待ってくれ!」桐生先輩が俺に手を差し出す
「確かに学校内で目立ってるわけじゃないけど…」
「長期間の観察の結果、俺たちは結論に達した。」
「だから今こうして会ってるんだ。」
………………………………………………………………….
どんっ!
教卓に一つの箱が置かれる
山積みの書類の束
箱の縁から写真の端がはみ出している
…
こと…
「まずこれを見てくれ。」桐生先輩が箱に手を置く
「この写真たちに何かおかしいところがあったら…」
「すぐに教えてくれ。」
…………
写真が一枚ずつ取り出される
見覚えのあるシルエットが次々と現れる
周りの視線が俺に集中する
………
すっ…
「まずはこの写真から始めよう!」桐生先輩が一枚を高く掲げる
…
「副委員長…」俺の唇がわずかに動く
…
「この写真で見ての通り…」桐生先輩が指で写真をなぞる
「F組の女子が大量の書類を抱えて、職員室のドアが全開。」
「目を見開いて、足取りが乱れてる。」
「あまりにも偶然すぎないか?」
…
「彼女じゃない。」俺は唇を動かし、写真を凝視する
「絶対に彼女じゃない。」
「副委員長がそんなことするはずない。」
「簡単な文章さえ苦手だって言ってたのに。」
…
「本当に確かか?」セーターの先輩が振り返る
「彼女が全部見せてくれたわけじゃないだろ。」
「人は自分の暗い部分を隠すのが上手いんだ。」
…
「はい!」俺は頷く
「もし彼女がやったとしたら…」
「わざわざ他人に直接助けを求める必要なんてない…」
「学校に来る意味もなくなる。」
………
「そう言うなら、とりあえずそうしよう。」桐生先輩が箱に視線を移す
「でもこっちの人は?」
……
二枚目の写真が俺の前に現れる
職員室の全開のドアを横切る影
手にしっかり握られた紙
顔が歪んでいる
……
「絶対に彼じゃないです!」俺は首を激しく振る
「蓮はそんな深く考えないタイプだ。」
……….
「じゃあこの写真はどうだ?」桐生先輩が写真をめくる
……
次の写真、ある道場
誰もいない練習室の真ん中
一人の少女がまだサンドバッグを殴っている
そして不自然に膨らんだカバン
カバンの留め具部分から少し白いものがはみ出している
…
「知ってるか知らないか…」桐生先輩が写真に視線を向ける
「普通、練習に行くのにこんなに物を持っていかない。」
「ただしこの子が…」
…
「…」俺の目が細まり、写真を凝視する
…
「彼女じゃない。」俺は背筋を伸ばして見つめる
「つめ子さんにそんな理由はない。」
「それに、カバンの口からはみ出してる部分…」
「よく見ると、少しピンクが混じってる。」
「前に俺があげたケーキの箱に似てる。」
………………………………………
パチ…パチ…パチ…
「さすがだな。」青髪の先輩が連続で拍手し、唇に笑みを浮かべる
「やっぱりあの写真じゃ有罪にできないよな?」
「どう見ても偶然っぽいし。」
…
「最初は俺たちもそう思った。」桐生先輩が微笑む
「この写真の証拠は一瞬の切り取りだから、結論にはならない。」
「でも、俺たちが他に見つけたものは…」
…
がさ…がさっ…
写真が脇に置かれていく
白い紙が次々と取り出される
桐生先輩の目が徐々に閉じていく
……
ぺた…
「まずこの試験対策プリントから。」桐生先輩が紙に手を置く
「この隅に書いてある通り…」
「この復習用紙は白川夏芽のものだ。」
…
さっ…
「普通の復習プリントなら何も言わない。」桐生先輩がゆっくり頭を回し、指を円を描く
「でもこの復習プリントには…」
「妙な知識の羅列と問題…」
「先生が用意したものとは全く違う。」
…
「その部分は俺が書いたんです。」俺は手を前に差し出す
「彼女が助けを求めてきたから、俺が書いてあげた。」
…
とん…とん…
「知ってるよ。」桐生先輩が紙の周りを指す
「でも…」
「印刷された文字さえ違う…」
「それってかなりおかしくないか?」
…
「それは…俺…」俺の手が徐々に縮こまる
……..
「ちょっと待って待って。」青髪の先輩が手を振る
「そんな聞き方じゃ答えられないだろ。」
「どうせあの子は何も知らないんだから。」
…
「確かに。」桐生先輩が視線を低くする
「これじゃちょっときついな。」
…
「じゃあもっと簡単なものにしよう。」桐生先輩が笑って箱に視線を向ける
………
ぱさっ…
「じゃあこの絵はどうだ?」桐生先輩が一枚の絵を広げる
…
「この線…」俺の目が見開き、唇がわずかに動く
…
「この絵自体に変なところはない…」桐生先輩が目を細めて絵を見る
「でも俺は絵のことは何も分からないけど…」
…
すっ…
「絵の裏に数学の公式を書き込むなんて…」桐生先輩が絵を裏返す
「かなりおかしくないか?」
…
「どう思う?」桐生先輩が俺を凝視する
「全ての証拠がF組を中心に回ってる。」
「周りの人たちが…」
「本当に君が思ってる通りなのか?」
………………
「…」俺の目が見開き、体が徐々に低くなる
…
「落ち着け、後輩。」青髪の先輩が俺の肩に手を置く
「君は何も悪くない。」
「悩んだり自分を責めたりする必要はない。」
「知ってることは言ってくれ、知らないならそれでいい。」
「どうせこれは推測で、結論じゃない。」
…
そっ…
「桐生くん意地悪!」神崎先輩が俺の頭を抱き、桐生先輩を振り返る
「後輩くんは何も悪くないのに!」
「そんな聞き方ばっかり!」
「だからモテないんだよ。」
…
っ…
どさっ!
「…」桐生先輩が顔を机に伏せ、胸を押さえる
……………………….
「あの意地悪な会長は放っておけ!」神崎先輩が立ち上がり、俺を見る
「信じてることを教えて!」
「姉ちゃんは信じてるから!」
…
…
「違う…」俺は唇を軽く動かす
「彼らはそんなことできない…」
「絶対に…」
…
「もう少し大きく言って、後輩くん。」神崎先輩が目を丸くし、笑みを浮かべる
「ゆっくりでいいから。」
…
がたっ…
「彼らはそんなことできない!」俺は目を張りつめ、周りを見回し、体を起こす
「絶対にできない!」
…
「ふむ…」神崎先輩が顎に手を当て、目を徐々に閉じる
「なんでそんなに確信してるの?」
…
ぎゅっ…
「この数日、俺が彼らの勉強を手伝ってきたから。」俺は手を強く握る
「彼らが得意なこと、苦手なこと…」
「全部理解したわけじゃないけど…」
「でも彼らがそんなことするはずない!」
…
「つまり君の意見は…」桐生先輩が俺に手を向ける
「F組は今回の盗難事件に全く関係ないってことか?」
…
「はい!」俺は頷く
…
「後輩くん…」神崎先輩が口元に手を当て、笑みを浮かべる
「本当に確か?」
「F組全員が…」
「...全く関係ないって?」




