第二十二頁 ― 奇妙な出会い
朝霧がまだ完全に晴れていない頃
東からゆっくり陽射しが昇り始め
街灯が一つずつ消えていく
夜の闇が後ろに退いていく
……
コツ…コツ…
生徒たちの影が学校に向かって歩き
小さな会話が空間に広がり
視線が遠くの校舎に向けられる
………
ぽん!
「ハル!」レンが俺の首に腕を回す
「おはよう!」
……
「おはよう……」俺はゆっくり振り返る
「毎朝毎朝、そんなことしなきゃダメか?」
……
「他に何があるんだよ!」レンが体を伸ばし、腰に手を当てて笑う
「朝からダルい顔してたら一日どうすんだよ?」
「だからよ、朝からガツンと何かやらないと!」
……
ふぁぁ…
「勘弁してくれ……」俺は手を口に当て、目を細める
「誰だって……朝っぱらから……」
「元気出せるとは限らないだろ……」
……
「つまんねえな、ハル!」レンが顔を近づける
「男のくせにそんな弱気かよ?」
……
「それとも……」レンが目を細めて顔を逸らす
「また誰かのこと考えてんのか?」
「まさか……山崎さん? アマミヤさん? それとも……」
「この前のピンク髪の娘か?」
……
「違うって……」俺は目を細め、体を少し曲げる
「ただ……昨夜……今日のためにちょっと忙しくて……」
……
「そうか?」レンが体を起こし、前を向いて手を頭の後ろに組む
「まあ仕方ねえよな?」
「急に俺たちを手伝うことになったんだし。」
……
「でもよ……」レンが周りを見回す
「今日……なんか変じゃね?」
……
「俺は何も……」俺はゆっくり周りを見る
「いつも通りだけど……」
……
「そうか?」レンが首を傾げて周りを見る
「俺はなんか違う気がするけど。」
「見てみろよ! 今日は誰も集まって質問してねえぞ。」
……
ふわぁ〜
「気のせいかもな……」俺は目を閉じる
「朝から……そんな気分になれる奴なんていないだろ……」
……
たっ…たっ…
「ハルくん、おはよう!」ツメコさんが俺たちに駆け寄り、笑顔を浮かべる
「何してるの?」
「朝からそんな弱々しい顔してどうしたの?」
……
「おい!」レンが目を細める
「俺、透明人間になったか?」
……
「小林さんなんかいつだって元気じゃん!」ツメコさんが手を振る
「いつだって調子いいんだから!」
……
「冷てえな!」レンが肩を落とす
「どうせ同じハルの仲間だろ。」
……
「リーン♪」
校舎中にチャイムが響き渡る
……
ばたばた…ばたばた…
足音が次々と門に向かう
……
ぎゅっ…
「ヤベ! 急がなきゃ!」レンがカバンの紐を強く握る
「言われなくても!」ツメコさんが前を向く
……
「お前も急げよ!」レンが振り返って俺を見る
「ジジイハル!」
………………………………………………………………………………………………………………
カリカリ…
陽射しが隅々まで照らし始め
電灯が徐々に消えていく
廊下は再び人影がなく
教室は机と椅子で埋まり
視線が黒板に向けられる……
……
カリカリ…カリカリ…
チョークの粉が軽く舞い
白い線が黒板に伸びる
黒いインクが白い紙に現れる……
……
すっ…
「ここを見てくれ……」俺は周りを見回し、黒板を指す
「難しい問題のコツは意外とシンプルだよ……」
「たとえばyとxが出てきて……」
「xがyの何倍かを求めろって場合」
「時間を節約するために、yをxで割るだけ……もしくは電卓でサクッと……」
……
「うちの学校は電卓OKだから、俺は全部電卓のコツをここに書いておいたよ……」
「これ使えば時間短縮できる……」
「直接解けるわけじゃないけど、かなり時間稼げるよ……」
……
「リーン♪」
教室中にチャイムが響く
視線が後ろに倒れ
教科書が次々と閉じられる
……
がさ…ごそ…
俺の視線が周りを回る
手が勉強道具をめくり続ける
……
「どこだっけ……?」唇が小さく動く
「ここに置いたはずなのに……」
……
「ハル! 何してんだ?」レンが手を振って笑う
「昼飯行かね? 今日、委員長が面白いもん勧めてくれたんだ。」
……
「ハル?」レンが首を傾げる
「…………」俺の視線がカバンに固定される
……
「十神さん……」白川さんが俺に手を差し出す
「とりあえず行こうぜ!」
「お前もまだやることあるだろ。」
……
「見つからない……」視線が窓に向き、唇が動く
「まさか……家に置いてきたのか……」
……
「十神さん、俺は何もわかんないけど……」白川さんが近づく
「落ち着けよ……」
「慌てても何も解決しない。」
「深呼吸して、ゆっくり話せ!」
………
ガラッ…
教室のドアが大きく開く
長い金髪の少女
青い髪の筋が混ざり
青い瞳に白い筋が入り
微笑みながら周りを見る
……
「後輩くん! 遅すぎ!」少女が頰を膨らませ、腰に手を当てて俺を見る
「女の子を待たせるなんてダメだよ!」
……
「なあ……」レンが手を口に当て、俺たちを見る
「知り合いか?」
……
「知らないよ。」白川さんが周りを見る
「うちのクラスに先輩と知り合いなんていないだろ。」
「クラス間違えたんじゃね?」
……
つかつか…つかつか
「もう……」少女が俺に近づく
「いつも姉ちゃんから動かなきゃいけないの?」
……
ぎゅっ!
「行こう! 後輩くん!」少女が俺の手首を掴む
「昨日約束したじゃん?」
「…………」俺の目が大きく見開かれ、唇が固まる
……
「へ?」ツメコさんの唇が動く
……
バタバタ…バタバタ…
少女がドアに向かって進む
手が俺の手首を強く握る
………
タタタタ…
「ちょっと待って!」ツメコさんが手を伸ばし、後を追う
「どういうこと、ハルくん?」
……
どん!
葉山先生の影がドア前に立つ
手に山積みの書類
……
「待て!」葉山先生が周りを見る
「お前ら、まだやるべきことがあるだろ。」
……
「でも……ハルくんが……」ツメコさんが廊下をちらりと見る
……
はぁ…
「どうでもいい。」葉山先生が頭に手を当てる
「でも十神さんが準備したこれらを無駄にする気か?」
………………………………………………………………………….
バタバタ…バタバタ…
人で溢れた廊下
視線が次々と俺たちに注がれる
……
「先輩……」俺は足を動かしながら
「勘違いですよ……」
「俺たち……会ったことないです……」
……
ピタッ!
「つまんないな、後輩くん!」少女が腰に手を当て、背中を曲げて俺を見る
「昨日のこと、もう忘れたの?」
……
「昨日のこと……?」俺は首を傾げる
「何かあったっけ?」
……
はぁ…
「勉強バカの共通の病気だね。」少女が首を振る
「なんでそんなにすぐ忘れるの?」
「まあいいや、とりあえずここ入って!」
……
ガラガラ…
3-Aのプレートのの下
ドアがゆっくり開く……
生徒たちが輪になって座り……
教科書が閉じられ
小さな会話が広がる……
……
「みんな!」少女が部屋に飛び込み、俺の手を引く
「連れてきたよ!」
……
「マジ?」眼帯の少女が近づく
「お前が連れてこれたの?」
……
「他に何があるの!」少女が腰に手を当てて笑う
「誰が私に逆らえるっていうの!」
……
「また拉致ってきただけだろ!」髪で目を隠した少女が俺を見る
「男が先に落ちるわけないじゃん、ヒヨリちゃん。」
………
そろっ…そろっ…
俺の視線が部屋から離れず
体がゆっくりドアの方へ後退
足が軽く動く……
……
ガタン!
「ちょっと待てよ!」金髪の男子がドアを塞ぐ
「…………」俺の頭がゆっくり振り返る
……
「そんな緊張しなくていいよ!」金髪の男子が微笑む
「神崎さん、ちょっと乱暴すぎたかも!」
「代わりに謝るよ!」
……
「実は聞きたいこと山ほどあるんだ!」金髪の男子が目を丸くする
「どうやってそんな高得点取ったの?」
「それに年初めの事件とか!」
「あとクラスメートに勉強教えてるって噂も聞いたよ。」
……
「そうだよ!」隣の体格のいい男子
「一年でそんなに遊んでる奴、珍しいよな!」
……
「でも……俺なんて……」俺は首を振る
「先輩たちに比べたら……」
……
「自分をそんなに低く見るなよ!」青髪の男子が近づく
「三年の俺たちですらまだできてないのに。」
……
ガサガサ…
「そんなに時間取らないよ……」青髪の男子がおにぎりの袋を差し出す
「だから座って少し食べて、話聞かせてよ!」
……
周囲の視線が俺に集中する
……
コトッ…
「それだけなら……興味あるなら……」俺はおにぎりの袋に手を伸ばす
「じゃあ……」
………………………………………………………………………
ゴーン…
壁の時計が鳴り響く
針が12時を指す……
……
「ヤベ!」俺は時計を見る
「まだ約束が!」
「先に失礼します!」
……
「そんなに急がなくても!」青髪の男子が手を振る
「時間はいくらでもあるんだから……もう少しいてよ!」
……
「ダメです!」俺は出口に向かう
「友達が待ってるんです!」
……
よろよろ…よろよろ…
体が背中に石を背負ったように重く
まぶたがゆっくり閉じ
足がぐらぐら揺れる……
……
「何……」唇が小さく動き、体が前に倒れる
ドサッ!
……
コツ…コツ…
「そんなんじゃダメだよ、後輩くん!」神崎先輩が近づく
「彼女を置いて先に帰るなんて、一生独り身だぞ!」
……
そっ…
「…………」神崎先輩が俺の頰を両手で包む
「私、まだ分けて貰ってないのに。」神崎先輩の唇が小さく動く




