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真っ白なページに綴る、僕の青春  作者: Minateru


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第二十一頁 ― 限界(二)

がやがや…がやがや…

陽射しが木の床に差し込み

人で溢れた練習室の中

白い道着があちこちに現れる

……

タタタタ…

足音が廊下に均等に響き

俺の手には、さっき買ったケーキの箱

……

ドン!... バンッ!

汗の滴が空中に軽く浮かび

視線が相手をしっかりと追う

……

「遅すぎだよ、ハル!」ツメコさんが背中を向ける

「今何時かわかってる?」

……

はぁ…はぁ…

「ごめん……」俺は体を低くし、片手で膝に手をつく

「ちょっと……用事があって……」

……

ぷいっ…

「そんなに大事な用事?」ツメコさんが俺をちらりと見る

「いつも練習の時間、ほとんど食いつぶしちゃったじゃん……」

「もうお昼だよ!」

……

すっ…

「実は……」俺は軽くケーキの箱を差し出す

「今日、新しいケーキが出たって聞いて……だから……」

……

ぱっ!

「これ、めっちゃ手に入りにくいやつじゃん?」ツメコさんがすぐに箱を受け取り、目を大きく見開く

「毎日売ってるわけじゃないのに!」

「しかも新作だよ!」

……

「もし嫌じゃなかったら……」俺は頭に手を当て、顔を逸らす

「遠慮なく食べて……俺、つい買いすぎちゃったから……」

……

「いいの?」ツメコさんが顔を近づける

「本当に貰っていいの?」

……

「…………」俺は軽く頷く

「嫌じゃなかったら……」

……

こほん!

「じゃあ……」ツメコさんが手を口に当て、視線を逸らす

「今日は許してあげる……」

「でも……もうこんなに待たせないでよね……」

……

「わかった……」俺は体を起こす

「じゃあ……始めようか?」

………

ドンッ!...ドンッ!...ドンッ!

汗が道着に染み込み

拳が連続でグローブに叩き込まれる

視線が互いから離れない

……

よろっ…よろっ…

足が徐々に乱れ

目が少しずつ閉じかけ

体がどんどん低くなる

……

「ハルくん……」ツメコさんが首を傾げて俺を見る

「大丈夫?」

「なんか体調悪い感じしない?」

……

「大丈夫……」俺は微笑んで頭を上げる

「たぶん……ちょっとお腹空いただけ……」

……

「きっとそうだよ!」ツメコさんが微笑んで時計を見る

「こんな時間まで何も食べてないんだから、力出ないのも当然だよ!」

「先に休んでて、私ちょっと水飲んでから行くから!」

……

「それで……いいの?」俺は目を大きく見開く

「また……一人で……」

……

「大丈夫だって!」ツメコさんが首を振る

「どうせ私も休憩しようと思ってたし。」

「それに……」

……

ひょい…

「こんなケーキ、放っておけるわけないじゃん?」ツメコさんが箱を高く掲げる

「毎日食べられるもんじゃないんだから!」

……

「じゃあ俺行くね……」俺は軽く手を振る

「ゆっくり食べてね!」ツメコさんが微笑んで目を細める

……

「忘れないよ、ケーキちゃん!」ツメコさんがケーキを丸く見つめる

………………………………………………………………………………………………………………

廊下は今、人影一つない……

教室は誰もいない……

教科書が机の上に閉じられたまま……

……

ダダダダ…ダダダダ…

俺の足音が道の端まで響く

待っている人影のいる廊下へ

そして隣に置かれた額縁……

……

「ハルくん……」アマミヤさんが目を丸くする

「今日……こんなに遅くまで……」

……

「ごめん!」俺は軽く頭を下げる

「今日は……用事が多くて……」

……

そっと…

「でも……これ、買ってきたよ……」俺はケーキの箱を差し出す

「嫌じゃなかったら……一緒に食べない?」

……

ぱかっ…

「…………」アマミヤさんの手が箱を強く握り、目が細まる

「ハルくん……」

「このケーキ……これ……これ……」

……

「うん……新作らしいよ……」俺は周りを見回す

「つい買いすぎちゃって……」

……

ぷるっ…

「こんなの……いいの……?」アマミヤさんの手が震え始める

「私に……こんなもの……」

……

「別にいいよ。」俺は軽く首を振る

「ただのケーキ一つのことだよ。」

……

「でも……」アマミヤさんが目を細めて俺を見る

「うちのクラス……あそこに買い物行ったら……」

……

「それは……心配しなくていいよ……」俺は視線を泳がせる

「ただ並んだだけだから……」

……

「もう遅いし!」俺はアマミヤさんの隣に座る

「早く食べないと休み時間終わっちゃうよ!」

……

「うん……」アマミヤさんが軽く頷く

………………………………………………….

蓋に水滴がびっしり

真ん中に白いご飯

おかずが周りを飾る……

………

カチッ…カチッ…

俺の前に現れた一膳の箸

階段をゆっくり上り

俺の手から離れ、ご飯の粒が軽く落ちる

……

「ハルくん……」アマミヤさんが首を傾げて俺を見る

「大丈夫?」

……

「俺、不注意すぎだな?」俺は頭に手を当て、微笑む

「箸一本だけなのに……落としちゃって……」

「仕方ない、今日はスプーンだけでいくよ!」

………

トン…トン…

弁当箱はまだ半分も減っていない

ご飯の粒があちこちに飛び散り

野菜のスライスが階段に散らばる

俺の視線がそれを見つめる

……

「ハルくん……」アマミヤさんが徐々に顔をしかめる

……

「なんでもないよ!」俺は微笑む

「ただの些細なことだよ……」

……

「…………」アマミヤさんの目が俺を丸く見つめる

……

ポリポリ…

「今日は何の日だよ、俺ずっと物落としてる……」俺は微笑んで頭をかく

「まあ、さっきケーキ少し食べたからよかったよ。」

……

「アマミヤさん、食べ続けて。」俺は廊下の方へ進む

「俺、ここ片付けるから!」

……

キュッ…

「ハルくん……」アマミヤさんが俺の袖を掴む

「せめて……少しだけ……一緒に食べて……」

……

「そんなわけないだろ!」俺は振り返り、口を曲げて笑う

「君はちゃんと食べて、力出さないと!」

……

「でも……」アマミヤさんの目が徐々に細まる

「こんなんじゃ……ハルくん……」

……

「大丈夫だって!」俺は微笑んで目を細める

「さっきケーキ少し食べたから平気だよ!」

「だから食べてて、俺ここ片付けるから!」

………………………..

バタバタ…バタバタ…

少年の体が徐々に遅くなり……

視線が徐々に閉じ……

少女が手を伸ばし、友達の背中に……

………………………………………………………………………………………………………………

陽射しがガラス越しに柔らかくなり

電灯が一つずつ明るく灯る

夜がゆっくりと全てを覆う

部屋は今、人影一つない

……

カリカリ…

「やっと終わった!」俺の手が止まる

「これで……そんなに多くないよな?」

……

「そうだ……」俺の視線がドアに向く

「今日、まだ……」

………

ガッ…

紙の欠片があちこちに飛び散る

俺の体が前に倒れ

周囲の景色がぼやけ

視線がゆっくり閉じる

…ドサッ…!

……

ギィィ…

教室のドアがそっと開く

二つの人影がゆっくり入ってくる

……

「今年のF組も……またか……」二つの影が顔を見合わせる

「早くしないと……そうじゃないと……」

……

「後輩くん……」一人の少女が俺の顔に近づく

「そんなに無理しちゃダメだよ……」

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