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真っ白なページに綴る、僕の青春  作者: Minateru


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第十五頁 ― それぞれの距離

ザワ……ザワ……ザワザワ……

白い道着を着た人々が教室いっぱいに広がっている……

一人ひとりが青いグローブを手に着け……

腰に巻かれたベルト……

……

バシッ……バシッ……

部屋全体を包む音……

拳が相手に向かって飛ぶ……

高い蹴りがグローブに向かって繰り出される……

……

あちこちから声が響く……

「蹴りもっと高く!」

「力足りてないよ!」

「もっと速く!」

「もう一回!」

……

ポタッ……

額を伝う汗の滴……

相手のグローブを大きく見開いた目で睨む……

……

「ツメコさん……」俺はツメコさんの方を振り返る

「ん?」ツメコさんが体を回して俺を見る

「結局……俺に何をしてほしいんだ?」

……

えへへ……

「大したことじゃないよ!」ツメコさんが首を傾げて微笑む

「ただ……ハルくんに」

「……みんなみたいにしてほしいだけ」ツメコさんが練習中のグループの方を指す

……

「そんなの無理だよ!」俺は首を激しく振る

「俺、格闘技なんて知らないし!」

……

スッ……

「格闘技知らなくたっていいんだよ!」ツメコさんが微笑む

「ただ立ってて、俺の練習相手になってくれればいいだけ!」ツメコさんが青いグローブを差し出す

……

「ここに立って、俺の攻撃を全部受けてくれればいいんだよ!」ツメコさんが目を丸くして俺を見る

「でも……俺……」俺の視線が周囲を回る

……

「そうだ!」俺は目を大きく見開いてツメコさんを見る

「ここにいるみんなに頼めばいいじゃないか!」俺は両手をあらゆる方向に広げる

「プロの人に手伝ってもらった方が絶対いいだろ?」

……

「それは……どう言えばいいかな……」ツメコさんが頰をかいて、軽く顔を逸らす

「会長が休んでるから……その……」

……

はぁ……

「わかったよ……」俺は両手を下ろす

「じゃあ俺が手伝うよ」

……

パッ……

「やったー!」ツメコさんが両手を叩く

「じゃあ早速始めよ!」ツメコさんの唇が笑みを浮かべる

…………

キュッ……

俺の両手がグローブを強く握る……

視線はツメコさんに向け……

両足を木の床に広げる……

……

ボフッ!

まっすぐ俺に向けられた視線……

最初の蹴りが飛んでくる……

青いグローブにまっすぐ当たる……

……

ドンッ!

次の蹴りが反対側から飛んでくる……

俺の歯を強く噛み締める……

両手をかろうじて上げ……

……

ドンッ……ドンッ……

拳が次々と俺に向かって飛んでくる……

グローブが徐々に下がる……

体が縮こまる……

目を開ける勇気が出ない……

……

ズッ……ズッ……

足が徐々に後退する……

ゆっくりと後ろへ……

………

ハッ……ハッ……

「ツメコさん……」俺は顔を上げてツメコさんを見る

「ちょっと……休ませて……」

「これ……ちょっときついよ……」

……

「そうなの?」ツメコさんが首を傾げる

「でもまだ始めたばかりだよ!」

「もう少し頑張ってくれない? ハルくん」

……

ドサッ……

「もう……俺にはちょっと無理かも……」俺は体を崩して床に座り込む

「さっきご飯食べたばっかりで……こんなことしたら……」

「俺には……ちょっときつすぎる……」

……

「そっか……」ツメコさんの両手がぽとりと下がる

……

「大丈夫だよ……」ツメコさんが微笑んで目を細める

「どうせ俺のせいだし……」

……

ペタ……ペタ……

「じゃあ休んでから教室に戻って!」ツメコさんの視線がサンドバッグに向く

「あとでまたね!」

……

「うん……まあいいけど……」俺は水筒に手を伸ばす

……

「どうせ……ハルくんは……ただの……」ツメコさんの唇が小さく動く

……

ゴク……ゴク……

水筒を強く握った手……

俺の視線はツメコさんを追う……

……

ドスン……ドスン……

サンドバッグが何度も押し戻される……

連続する打撃……

汗の滴が空気中に飛び散る……

……

でも……

ツメコさんの視線はいつも周囲をちらちらと……

部屋中の視線も……

こっそりツメコさんを覗いている……

………………………………………………………………………………………………………………

「リーン♪」

校舎中にチャイムが響き渡る……

夕陽が空間全体を包み込む……

……

ワイワイ……ガヤガヤ……

人々が門の方へ向かう……

一人ひとりの顔に輝く笑顔……

小さな会話があちこちで……

……

「なあハル」レンが俺を振り返る

「これからの数日、予定ある?」

……

「予定ってほどでもないけど……」俺はレンを見る

……

「じゃあさ」レンが手を頭の後ろにやる

「また俺の勉強手伝ってくれない?」

……

「一気にいろんな科目覚えなきゃで……」レンが腕を伸ばして目を細める

「それに部活もあるし……」

……

「俺からしたら普通だけどな……」俺は首を傾げてレンを見る

……

「お前はいいよな……」レンが目を丸くして俺を見る

「すぐ理解するし、忙しくないし……」

……

「まあまあ……」俺はレンに微笑む

「手伝うよ!」

……

パッ!

「さすがハル!」レンが跳ね起きる

「やっぱり頼りになる!」

……

くい……くい……

「ハルくん……」アマミヤさんが俺の服を軽く引く

「私も……手伝って……ね……」アマミヤさんの目が丸くなる

……

「もちろん」俺はアマミヤさんに微笑む

「もう一人増えても別にいいよ!」

……

「じゃあいつにする?」レンが俺を見る

……

「俺はわからないけど……」俺は額に手を当てる

「どこかいい場所思いつく?」俺は二人を見る

……

「…………」アマミヤさんの手が組み合わさり、首を振る

……

「前に行った食堂はどう?」レンが空を指す

「最初にお前が俺たちをテストしたところ!」

……

「それでいいよ」俺は微笑む

「…………」アマミヤさんが軽く頷く

……

「お前はどう?」レンが周りを見回す

「……」

……

「え?」レンが周囲を見回す

「いつも一緒にいるヤマ……ヤマ……ヤマ……」レンが顎に手を当てる

……

「ツメコさんのこと?」俺は首を傾げる

……

ポン!

「そうそう、その子!」レンが軽く手を叩く

「さっきから全然見かけないな」

……

「お前……あの子とずっと一緒にいるくせに……」俺は目を細めてレンを見る

「名前も覚えられないのかよ……」

……

「知るかよ……」レンが顔を逸らす

「俺……あの子と話したことなんてほとんどないし……」

……

「でも……なんか変だよな……」レンが顎に手を当てる

「今日は放課後に残ってる部活なんてないはずだぞ!」

……

「どういう意味?」俺は目を丸くしてレンを見る

……

「だって今日は学校全体で設備点検の日だから……」レンが校舎を振り返る

「どの部活も残っちゃダメなんだよ」

………

くす……くす……

一団が俺たちをすり抜けていく……

通り過ぎる小さな会話……

……

「あの子……ほんと変だよね!」一人の女子が微笑む

「普通みんな練習相手になるの避けるし!」

「誰も話しかけないよ!」

「会長ですら近づかないもん!」

……

「ほんとだよ!」もう一人の女子が手を口に当てる

「F組の連中とつるむ必要ないじゃん!」

「どうせあいつらの時間なんてすぐ終わるし!」

「せいぜい数人しか残れないよ!」

……

「それに、あんなバカじゃ絶対持たないって!」もう一人が割り込む

……

トン……トン……

その集団の後ろ姿が徐々に遠ざかる……

……

……

レンが笑うのをやめる……

アマミヤさんの視線が地面に落ちる……

……

「やっぱりな……」レンが小さく唇を動かす

「どうせ……いつも通りだよ……」

……

「何の話?」俺は首を傾げる

……

「お前はまだ知らないかもな……」レンが俺をちらりと見る

「でもお前ならきっと乗り切れるよ……」

「俺たちには……」レンの視線がアマミヤさんに向く

……

ギュッ……

「…………」アマミヤさんが袖を強く握り、軽く頷く

……

ガシッ!

「そんな簡単に落ち込むなよ!」俺はレンの肩を掴む

「何の話かわからないけど!」

「まだ来てないんだろ!」

「つまり、まだ変えられる時間はあるってことだろ?」

……

「お前は……簡単に言うよな……」レンが顔を逸らす

「でも今まで……一人じゃ……」

……

「お前たち一人じゃないだろ!」俺は目を大きく見開いてレンを見る

「何かあったら聞けよ」

「俺が手伝うから!」

……

すり……

「ハル!」レンが俺を抱きしめる

「そうだよな?」

「俺もう一人じゃないよ!」

...

「…………」アマミヤさんが顔を上げ、軽く微笑む

……

「レン……」俺は顔を逸らす

「ちょっと……これは……」

……

「…………」俺の視線が教室の方へ向く

……

そっ……

「そうだ!」俺は軽くレンを押し出す

「ツメコさんを探してみるよ!」

「まだ教室にいるかもしれないだろ?」

……

「うん、わかった!」レンが軽く頷く

「じゃあ明日な!」

…………………………………………………………….

午後の陽射しが徐々に柔らかくなる……

周囲の人影はもう消え……

教室の扉は固く閉ざされ……

ただ長い廊下が残る……

……

タタタッ……

俺の視線が周囲を回る……

足音がタイルの床に響く……

……

ピタッ……

足が突然止まる……

視線が窓から離れない……

唇が言葉を発せない……

……

ドスン……ドスン……

同じ光景

サンドバッグが何度も押し戻される……

連続する打撃……

汗の滴が空気中に飛び散る……

……

でも今、部屋には誰もいない……

ツメコさんの目に溜まった水滴だけ……

……………………………………………………………………………….

[翌日の昼]

……

「ツメコさん……」俺はツメコの席に近づく

……

「ん?」ツメコさんが首を傾げて俺を見る、目を大きく見開く

……

「珍しい!」ツメコさんが微笑む

「今日はどうして俺のところに来たの?」

「何か用? ハルくん」

……

「忘れたのかよ?」俺は目を丸くしてツメコさんを見る

「もう練習の時間だぞ!」

……

「わかってる……けど……」ツメコさんの視線が逸れる

「昨日……ハルくんが……」

……

ピタッ!

「変なこと言うなよ、ツメコさん!」俺は机に手を置く

「急がないと昼休み全部なくなっちゃうぞ!」俺は顔をツメコさんに近づける

……

「う……あ……俺……」ツメコさんが体を引く

……

……

「うん……」ツメコさんの唇が小さく動く。

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