第十一頁 ― 伸ばしかけた手
ワイワイ……ワイワイ……
……
朝の光が木々の葉を一つ一つ照らす……
笑顔で学校に向かう人たちの顔……
……
トコ……トコ……
「新しい一日だ!」私が微笑み、学校に向かって歩く
「今日はまた何が起こるんだろう……」私が顔を上げて空を見る
「昨日みたいなことは……ないといいな……」
……
パタ……パタ……
私の視線が離れない……
人混みの中に、見慣れた影が現れる……
金色の髪と、手に持ったスケッチブック……
……
コツコツ……コツコツ……
背後から響く足音……
……
バンッ!
そして一つの手が、私の背中を叩く……
……
「ハル、おはよう!」蓮が笑顔で私を見る
「君……他の挨拶の仕方ないの?」私が背を丸めて蓮を振り返る
「どう言えばいいんだ? 朝早いんだから!」蓮が鼻に手を当てる
「でも朝から何をぼーっとしてるの?」
「ぼーっとしてないよ、ただ……」私の指が前を指す
……
「ねえハル、結局何を見せたいの?」蓮が周りを見回す
「どうして……」私の目が大きく見開く
「でも僕、見たのに……」
……
「まあ、それもいいや!」蓮が私に向かって笑う
「それより大事な話、昼休みって暇?」
……
「暇ってわけでも……ないけど……」私が頭に手を当てる
「よし! じゃあ後でちょっと手伝ってくれよ!」蓮が目を閉じて微笑む
………………………………………………………………………………………………………………
「リーン♪」
校舎中に鐘の音が響き渡る……
そしてすべての影が、今、教室に入っていく……
…………………..
ギィ…
「こんにちは、みんな!」先生が教壇に進み、満面の笑みを浮かべる
「今日は江戸時代の知識を全部復習するよ」
「今日の授業はしっかりノートを取ってね!」
……
カーン!
鐘の音が校舎中に響き渡る……
手は書き続けるのを止めない……
……
「今日はここまで!」先生が教室のドアに向かう
「この知識は次のテストに関係するから、しっかり復習しておいてね!」
ギィ…
……
タタ……タタ……
「ハルくん!」津女子さんが私の机に駆け寄る
「助けて!」
「どうしたの?」私が振り返る
……
「先生の話が速すぎてついていけない!」津女子さんが口をへの字にし、目を丸くする
「それに黒板にも全然書いてくれないし!」
……
「じゃあ周りの人は?」私が津女子さんの席の方を見る
「みんなのノート、私より白いんだからどうしよう!」津女子さんの視線があちこちに動く
……
スッ…
「大丈夫だよ! 僕、全部取ったから!」私がノートを津女子さんに渡す
……
「どうして……あんなスピードについてこれるの?」津女子さんが首を傾げ、ノートに顔を近づける
「僕だって先生の話、全部は取れてないよ!」私が微笑む
「年号と重要な出来事だけ書いてるんだ!」
……
「他の細かいところも取れてないよ!」私が頭をかく
……
パタパタ……パタパタ……
「君は本当に救世主だよ!」津女子さんが微笑み、私のノートを持って
「後で返すね!」津女子さんが自分の机に走る
……
「まあ……いいけど……」私の視線が津女子さんを追う
……
津女子さんの背中が離れた時……
一つの手が、宙に現れる……
私に向かって、でも途中で止まったまま……
そして目を丸くした視線が、私を見つめ続ける……
……
「どうしたの、天宮さん?」私が首を振って見る
……
サッ!
その手が急に引っ込む……
天宮さんが顔を別の方向に向ける……
……
「天宮さん?」私が近づく
「何か手伝うことある?」
……
「何でもないよ……」天宮さんが私から顔を逸らす
……
「私も……」天宮さんの唇が小さく動く
「……貸してほしい……」天宮さんの視線が白い紙から離れない
…………………..
ギィ…
新しい授業がまた始まる……
先生が大きな紙の束を持ち、満面の笑みを浮かべて……
……
「こんにちはみんな!」先生がクラスに手を振る
「今日はまず昔の知識を復習しようね!」
……
バサッ!
「じゃあ始めに……」先生が地図を黒板に広げる
「誰か、地図の読み方を教えてくれる?」
……
カーン!
鐘の音が校舎中に響き渡る……
視線が傾き、頭が机に落ちないよう必死に支える……
……
「もう時間?」先生が時計を見る
……
「じゃあ今日はここまでね!」先生が額に手を当てて微笑む
「地図の見方とグラフの読み方をしっかり復習してね!」
……
タタタッ……タタタッ……
「ハル!!!」後ろから響く足音
「助けて!」蓮の顔が歪み、手に本を固く握る
……
「どうしたの蓮?」私が首を傾げる
「一文字もわかんない!」蓮が本の地図を指す
……
ババッ……ババッ……
「色はごちゃごちゃ、記号はたくさんあって……」蓮が本を次々指す
「それにこの長い線とか……」
「数字もいっぱいだし……」
……
「ああ、それか?」私が微笑む
「簡単だよ」
……
「君には簡単でも!」蓮が目を細めて私を見る
「僕が君じゃないんだから!」
……
そっ…
「実はそんなに難しくないよ」私が本を指す
「陸は濃いほど高い、海は逆……」
「記号はすぐ横に凡例があるし……
「線や数字は、問題で聞かれた時だけ気にすればいい……」
……
ジーッ…
「そう……なのか……」蓮が本をぐるぐるめくる
……
「よし……」蓮が指を空に向け、微笑む
「全然わかんない!」
……
「君って本当に……」私が額に手を当てる
「もう一回教えてあげるよ……」
……
ちょい…
一つの手が私の袖を軽く引く……
……
「私も……」天宮さんが小さく唇を動かす
「教えて……ほしい……」
……
「どうしたの、ハル?」蓮が私を見て目を大きく見開く
「あ、いや、ただ……」私が天宮さんを見る
……
一つの背中が私に向けられる……
本が地図のページを開いたまま……
天宮さんの視線が本から離れない……
……
「ねえハル……」蓮が唇を動かす
「女の子をじっと見つめるのはよくないよ!」
「相手が避けてるの気づかないの?」
……
「でも僕……」私が後ずさり、首を何度も振る
「そうか……」蓮が目を細めて見る
……
「じゃあ早くここ教えてよ!」蓮が本を私の前に出す
「わかったよ……」私が肩を落とし、地図を指す
…………………………………………………………………………………………………………..........
「リーン♪」
窓から差し込むぎらぎらした陽光の下で……
手を止めた筆記……
背中を伸ばす体……
……
ゾロゾロ……ゾロゾロ……
列を作って教室のドアに向かう人たち……
満面の笑みを浮かべた顔と共に……
……
そっ…
天宮さんがそっと鞄に手を入れる……
弁当箱が机の上に置かれる……
……
キュッ…
「ねえ……ハルくん……」天宮さんが私の服を軽く引く
「君……暇……?」天宮さんの顔が低く下がる
……
「どうしたの、天宮さん?」私が微笑んで見る
「あ、いや、ただ……」天宮さんの視線が弁当箱に向く
……
「お昼……」天宮さんが小さく唇を動かす
……
トコ……トコ……
「ハル!!!」蓮が手を振って近づく
「昼休みだよ!」
「一緒に来いよ!」蓮が出口を指す
……
「ちょっと待って!」私が手を振る
……
「何か言った、天宮さん?」私が天宮さんを振り返る
……
ギュッ…
「あ、いや……何でもない……」天宮さんが弁当箱を背後に隠す
……
「ねえハル!」蓮が手を振る
「遅れたら売り切れちゃうよ!」
「すぐ行く!」私が立ち上がる
……
「何かあったら後で話そう、天宮さん!」私が天宮さんを見る
………
「私ただ……」天宮さんが小さく唇を動かす
………………………………………………………………………………………………………………
そよ……そよ……
階段の日陰の下で……
軽く髪をなでる風と共に……
食堂の賑わう人たちの影……
……
カリ……カリ……
まだ開いたままの弁当箱……
見慣れた金色のふわふわした髪の影……
止まらない手が、白い紙の上を……
そして少し涙が浮かんだ視線……
……
コツ……コツ……
「何描いてるの?」私が絵に顔を近づける
……
手が急に止まる……
天宮さんの視線が、ゆっくり私に向く……
……
ハッ!
「ハルくん!」天宮さんが後ずさり、絵を抱きしめる
「君……君……君……」
「ここで何してるの?」天宮さんの唇がへの字になる
……
「いや、ただお昼食べに来ただけだよ!」私が弁当箱を上げ、天宮さんに向かって微笑む
……
「でも……どうして……ここが……」天宮さんが顔を別の方向に向ける
……
「だってさっき君と約束しただろ?」私が首を傾げて天宮さんを見る
……
ふわふわした髪が風に揺れる……
空中に涙が飛び散る……
……
「ハル……くん……」天宮さんが私を振り返る




