教室の扉を開けた、その最初の一ページ
ごちゃごちゃ…
カタカタ…
ざわざわ…ごちゃごちゃ…
……………
そよそよ…さわさわ…
…
桜の木陰がざわざわと鳴り、そよ風が吹き、桜の花びらが風に舞う
一歩一歩歩く顔たちに弾ける笑顔と、レンガ道を踏む足音
…
トコトコ…トコトコ…
着いた…
「やっと…ここまで来れた…品川高校!」
ピカピカの新品制服を着て、満面の笑み
初めて…田舎で何年も暮らしたあと…やっと…
この日本トップの学校の奨学金を取れた
…
周りを見回す、同じように歩く人たち
肩を組む友達同士、遠くで話す女の子たち
両脇で新入生を手招きする部活
…
「でもきっと面白いことになるよね…新しい友達に…新しい人たちに…」
校舎の窓を見上げてニヤニヤ
………
「1-A…1-B…1-C…」
「やっと着いた、1-F!」
「クラスのみんなはどんな感じかな?」
ドアに手を伸ばし、口元に笑みを浮かべて
…
ギィー
体が一瞬凍りつき、笑顔が歪み、目がぎょっと周りを見回す
…
ぺちゃくちゃ…ワイワイ…くすくす…
俺のクラス…マジで…
…
入り口近くの席では、女子グループがネイルを並べてファッション話
もう一つの入り口近くでは別のグループがプラモを眺め、頭に変なアニメ横断幕
教室最後尾では男子たちが集まって何か話し、足を机に投げ出してる
演台の上では二人が意味不明な謎のダンス
真ん中の列ではスマホに顔を突っ込む人たち、奥の席では…自分で自分を撮影中…
…
そしてドアの音に釣られたように、全員が俺を見る
俺は体を縮こまらせ、鞄のストラップをぎゅっと握り、目を泳がせる
…
そして誰も鞄を置いてない先生正対の席へ
そろそろ…スタスタ
顔を伏せ、できる限り最速で突進
握りしめた拳、肩に力
「俺の高校生活…終わった…」と呟く
…
視線が徐々に逸れ、話し声がまた戻り、何もなかったように
………………….
ドタバタ…ドタバタ…
突然全員が自分の席に殺到
机の上の物が一瞬で片付き、スマホの光も消える
…
ギィー
「今年もまたF組かよ!」
…
「クラス静かに!」
ヒゲ面の中年男が問題集を抱えて教卓へ
…
「初めまして、俺は葉山、数学担当だ」
「今日からお前らの担任だ!」
「よろしくな!」
「急だけど、今から小テストやるぞ!」
…
サラサラ…カサカサ…
紙が一枚ずつ回される…
そして生徒たちの顔が次々青ざめる
…
「先生、間違ってませんか?」メガネの生徒が立ち上がる
「こんなの無理ですよ!」
「こんな難しくて誰が解けるんですか!」金髪女子が髪をかき上げる
「え?何これ宇宙語?」小柄な子が目を丸くする
「ふん…この程度…」と眼鏡を押し上げた男子が紙を見て固まる
…
「F組なんて毎年こんなもんだ!」葉山先生の唇がピクピク動き、椅子から立ち上がる
…
「お前ら全員、この日本トップの名門に選ばれた生徒だろ…」
「このくらい、できないはずないよな?」葉山先生がニヤリと笑って首を傾げる
「制限時間1時間。終了時刻までに誰も終わらなかったら全員居残り」
「それと、このクラスに満点が一人も出なかったら全員補習な」
…
俺は手元の紙に目を落とす、懐かしい感覚が湧いてくる
「この問題…」手が勝手に動き出す
…
カリカリ…ムニムニ…
みんな顔を歪め、頭をかきむしりながら必死に書く
………………
「先生、できました!」俺は答案を持って立つ
「ちゃんと見直したか?まだ20分しか経ってないぞ?」
「はい!確信あります!」笑顔で
「間違えたら二度目はないぞ、速くてもな…」葉山先生の目が鋭くなる
…
スタッ…スッ…トン!
「どうぞ採点してください!」
………
葉山先生の顔色が変わり、目を丸くして猛スピードで丸付け
…
「おい、お前カンニングしただろ?」
「してません!先生の真ん前ですよ!」
…
葉山先生が立ち上がり、チョークを握る
キュッキュッ…
「じゃあこの問題を解いてみろ!」
「数列 a_n
a_1 = 3, a_ {n+1} = 2a_ {n − 1}
a_5 を求めろ」
「ここで解けたら信じてやる!」
…
しばらく見てから、ゆっくりチョークを取り、ゆっくり書く
「a_n = 2^{n-1}(a_1 - 1) + 1」
「あと5を代入するだけです!」チョークをそっと置く
……………………….
クラスがシーンと静まり、全員の視線が俺に…
俺は固まり、どうしたらいいかわからずゆっくり黒板から離れる
…
「お前、名前は?」葉山先生が振り向く
「春、十神春です」
「悪くない…全然悪くない…」葉山先生が頭をかきながら唇で呟く
…
「こんな問題児だらけのクラスに…こんなのがいるなんてな…」
…
「よし、今日は一応クリアだ。残りは時間内に終わらせろ」
「十神さん、これはお前に」葉山先生が分厚い問題集を俺に押しつける
「これって…」目を白黒
「お前の宿題だ。次までに終わらせておけ!」
…
はぁ〜
ペタ…ペタ…
肩を落として席に戻る
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【翌朝】
いつも通りクラスに向かう、みんな俺をスルー
でも突然オレンジ髪の男子が目の前に立ちはだかる
…
「おい、十神さんだよな?」
「はい、俺です」
「廊下出てこい、話がある!」
真剣な顔で、どこか苛立った目
……
パタ…パタ…
「あの…」クラスを出るなり
「俺が何か悪いことしたら…先に謝ります…もうしません…」顔を伏せる
「何か欲しいなら言ってください!渡しますから、殴らないで!」
「なんでも…?」振り返る
「うん、なんでもだから…」必死に頷いて目を逸らす
…
「じゃあ…」急に近づいてくる
「やめてください!」両手で顔をガードして横を向く
…
ぱんっ!
「教えてください!」両手を合わせて目をぎゅっと閉じる




