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Epilogue 春の窓辺
卒業の日。
講義棟の最上階、あの日と同じ屋上。
理央がフェンスにもたれながら、夕陽を見ている。
「ねえ、秋月くん。
あのときの“沈黙”、覚えてる?」
「忘れられるわけない」
「私ね、あのとき初めて、自分の“本当の声”を聞いたんだ」
「……どんな声だった?」
「小さいけど、ちゃんと生きてる声」
湊は頷く。
「俺も、やっと“言葉にできる沈黙”を覚えた」
理央は笑って、「それ、またずるい返し」と言った。
沈む夕陽の中で、二人の影が重なる。
その重なりは、練習でも本番でもない。
ただの“これから”だった。
風が通り抜ける。
世界は静かに動いていた。
完




