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第10章 夜の屋上で
秋。
キャンパスの屋上は、冷たい風が通り抜ける。
理央はフェンスに寄りかかりながら、空を見上げていた。
「ここ、好きなんだ。高い場所って、世界が静かに見える」
「静かに見える」その言葉に、湊は少し笑った。
「俺たち、静か好きだよな」
「うん。でもさ、静かって怖くもあるよね」
「……あのときの沈黙、俺、怖かった」
「私も。でもね、今は違う。
沈黙のあとに、また会えたから」
風が強くなって、理央の髪が舞う。
彼女は笑いながら言った。
「ねえ、秋月くん。
私たち、まだ“練習”してるのかな」
「……たぶん、“本番の練習”」
理央は目を細めて、「それ、気に入った」と言った。




