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第9章 優しさの形
理央は、大学でボランティアサークルに入っていた。
「人の役に立つことをしたいの」と言う笑顔は、どこか懐かしい。
けれど湊には、それが少し怖かった。
“誰かのため”の優しさに、彼女がまた飲み込まれてしまうのではないかと。
ある日、彼女がボランティアの帰りに倒れたと聞いた。
病院の待合室で、湊は何もできずに座っていた。
理央の母親が来て、彼に言った。
「理央は小さいころから、ずっと“がんばりすぎる子”なの」
数時間後、病室で理央が目を覚ました。
「秋月くん……ごめんね」
「なんで謝るの?」
「また“ちゃんと”しすぎた」
湊は首を横に振った。
「それでも、ちゃんと“生きてる”」
理央は笑って、「それ、ずるい返し」と言った。
でも、笑いながら泣いていた。
その日から、湊は彼女のサークル活動に同行するようになった。
一緒にいても何もできない。
それでも、“見ている”だけで意味がある関係が、確かにあった。




