表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【ローファンタジー】 『ありふれた怪異、街の名物』

通り雨のあとで

作者: 小雨川蛙
掲載日:2025/07/15

 

 それに気づいたのは偶然だった。


 夏の日、さっきまで明るかった空が不意に暗くなり雷雨となって世界を包んだ。


「あー! もう最悪!」


 叫びながら僕は走る。

 折り畳み傘は今日に限って鞄に入っていない。

 制服はもう雨をすっかり吸ってまるで海に落とされたように重い。

 鞄の中の教科書は大丈夫だろうか?


「ちくしょう!」


 世界はすっかり濁った雨で満ちて視界はもう夜のように暗い。

 だけど通学路は頭の中にすっかり入っている。

 伊達に二年も同じ高校に通っちゃいない。


 走り続ける。

 家までもう少し――。


「は?」


 雨が段々と弱まり白々しく灰色の雲から太陽が覗いた。

 ――完全に通り雨って奴だった。

 これなら雨が降り出した時にでも木陰に隠れれば良かった。


「なんだよ! ちくしょう!」


 足から気が抜けて駆け足が段々と速足に変わり、やがて立ち止まる――はずだった。


「うわっ! やべ!」


 突如声が聞こえた。

 だけどここには僕しかいない。


「ん?」


 思わず辺りを見回した時、僕は確かに見た。

 ――数歩先に居る僕の影が慌てて僕の方へと戻って来るのを。


「は?」


 ゾッとして僕は再び駆け始める。

 しかし、当然ながら影は僕から離れたりしない。


「おい! おいおいおい!」


 馬鹿みたいだと思いながら僕は必死に駆ける。

 雨の重さなどもう気にもならない。


 だけど、影は僕から離れることはなく――置いていくことも出来なかった。



 夏の日差しは世界を照らし、僕と影が決して離れられないことを残酷に告げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
影が自分本体から離れる? 簡潔なストーリーだけど、意表をついた展開にハッとしました。 他の作品も読みたくなりました。 素晴らしい!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ