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エピソード4 自己嫌悪

「雨宮、3番に内線。経理の工藤さん」

 領収書の精算ミスったかな。ヒヤヒヤしながら受話器を取る。

 良かった、確認だけだった。

 雨宮の勤める会社は、中堅の飲料メーカーだ。 企画を担当する部署に所属しているため、今日は、開発や営業との打ち合わせで1日の大半を終えた。

「お先に失礼します」

会社からは電車の乗り換えで50分かかる。我がお城は築古だが、寝室と居間共に満足の広さだ。

 最寄り駅の側にあるスーパーで足りない材料を買い、パパッと食べたい物を作る料理男子でもある。

 夕飯を食べながら、録画したテレビを観て、寝る前に、ゆっくりと湯に浸かる。これが雨宮のルーティンだ。

「ハァ、気持ちいい。って俺は親父か」最近、独り言が多くなった気がするが、致し方ない。

 たまには会社の同僚に誘われて飲みに行くことや、合コンに誘われる日もある。女と付き合ったことがないわけではないが、疲れるだけの事も多く、合コンに関しては数回誘われ1回程度の出席だ。

 行けば平均以上の身長と、甘いと言われる顔で、モテないこともないのが面倒なのである。

 俺、枯れるにはまだ早いんだけどな…。そう言えば、しばらくしていない。

 思い立ち、湯の中で全く兆していない自分の性器の先を摘んで持ち上げてみる。

 反対の手の指で、皮を根本に押し下げるように、何回か上下に優しく摩り、先を摘んでた指で先端の丸みを撫でてみた。

「んっ」

 刺激が快楽を呼び覚まし、夢中になって自慰に雪崩れ込む。浴槽の湯が揺れて跳ねている。

 不意に頭の中で、居酒屋の狭い廊下ですれ違った終電男の姿がよぎる。あの良い顔が近づき、あの良い身体に抱きしめられ、刺激を与える指があの男の指に置き換わる。

「あっあぁっ…」

 …やってしまった。

 妄想に囚われたことに自己嫌悪に陥る。無かったことにしたくて、身体を流すと急いで風呂から出たのだった。

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