エピソード1 プロローグ
あれ、何だこの白い花吹雪は。
今は秋じゃなかったっけ。
あれ、大体俺は、仕事から帰った後、ちゃんと自分のベッドで寝ていたはずだ。何でこんな所にいるんだろう。
白い花といえは、思い出したくない出来事を思い出す。高校時代の裏庭に咲いていた、あれはハナミズキだったっけ。
花がほとんど落ちた初夏、1個上の先輩に告げられた言葉。
あ、これは夢だな。だって、俺は俺なのに、そこにもいる。学ラン姿の学生時代の俺だ。
そうだ、もう1人そこに立ってる学ラン姿の先輩が、俺に向かって言うんだ。
「聞くな、今すぐその場を立ち去るんだ」
叫んでみるが、あ、これ俺の声聞こえてない。
先輩が俺に告げる。
「俺、お前とのこと、一時の気の迷いだったんだ。もう話しかけないでくれ」
あぁ、ショック受けて呆然としてる。
いつの間にか昔の俺の視点に変わる。
「あ、待って先輩行かないで」
悲しみが心を埋め尽くす。
白い花びらが舞い散る中、1人立ったまま泣き続けていた。
アラームが鳴り響き、ハッとして目が覚めた。いつもの朝だ。
「あぁ…」
深いため息を吐き、顔を擦る。指先が触れたこめかみが濡れている。
「はぁ…起きて準備なきゃ」
声に出して言い、やっとベッドから起き上がることができた。