8話
「私、実はね…。昴に、告白したの…っ」
お姉ちゃんは、私の部屋に入って来た直後に、私の前で泣き崩れる。
私は、いきなりの事で驚き、私は、思わず、勉強していた問題集を床に落とす。
私は、すぐに我に戻り、問題集を机に置き、お姉ちゃんの背中をさする。
「どうしたの?昴に告白して、どうなったの?」
私は、昴の返事は、大体分かるものの、とにかく、聞かずにはいられなかった。
だって、昴は、私の事が好きだって言ってた。
OKするワケがない。
すると、お姉ちゃんは、そっと顔を上げて、
「振られちゃった…。その理由がね…」
「うん…」
「雪ちゃんの事が好きだから…って」
やっぱり。予想通りだった。
私は、この事は言わずにただ、じっとお姉ちゃんの話を聞く、
「そっか…」
「それで…」
「うん」
「私、雪ちゃんの代わりでも良いからって言ったの」
そんなに、昴の事が好きだったんだ…。私は、お姉ちゃんの純粋な心に泣き出しそうになる。
まるで、とあるドラマのようだ。
「それで、私、キスしたの…。」
私は、キスという言葉にビクッと反応する。
キスを…した…?昴は、お姉ちゃんとキスをしたの?
「私…、もしも、良いなら、今度は昴からキスをしてって言ったの」
さすがに、しないよね。私は、ごくっと唾を飲み込む。
「そしたら、昴は、キスをしてくれたの…長かった。とても」
え…。
昴は、お姉ちゃんにキスを…?
なんで…
「それで、OKなんだって思って、気持ちが舞い上がって、ちょっと声を出しちゃったの」
どんなに、嬉しかったことだろう。
でも…
「そしたら、お前の声じゃないんだ!俺は雪菜の声が良いんだって…」
昴…
ダメだよ…。キスなんてしたら。取り戻せないじゃん…
ばか…。
私は、涙ぐんでしまった。
「ねぇ、雪菜。お願い。昴だけとは付き合わないで欲しいの」
「え…?」
「雪菜は、京助の事だけ思ってて欲しいの。こんな事で揺るがないで…。私は、まだ、諦めないから。これからも、もっと応援して欲しいの」
私は、意外な言葉に、驚く。
まだ、頑張るんだ。
諦め強いんだな。
私は、お姉ちゃんをもっと尊敬した。
私はそっと頷いた。
「雪菜、おはよう」
京助先輩が、教室のドアのところで、何か言いたげにしていた。
「あれ?どうしたんですか?1年の棟まで来て」
「いや、ちょっと、1年の風紀委員会に用があって」
「あぁ、この前決めた委員会ですか。」
「うん、風紀委員会っているかな?」
「あ…」
「ん?」
「あたしと昴だ…」
私は、ガクッと首を下げる。
「あはは。そっか。じゃあ、ちょっと昴くんも呼んでもらっていいかな?」
「あ、はい。ちょっと待っててください」
私は、急いで、机で寝ている昴を起こす。
昴は、ふぁぁぁとあくびをして、目を覚ます。
「もうっ、風紀委員会だってさ。早く!」
私は、昴の腕を引っ張り、先輩のとこまで引っ張って行く。
「なんでしょうか」
昴は、眠たそうに言う。
そんな昴の足を私は思いっきり踏みつけた。
昴は、ハッとぱっちり目を覚まし、こちらを睨みつける。
そんな昴を私は無視して、笑顔で、先輩の顔を見る。
「えっとね…明日の昼休み、ちょっと2-2に集まって欲しいんだけど」
「了解でっす」
私は元気よく答える。
昴は、礼儀正しく、頭を下げる。
「じゃあね。雪菜と昴くん」
「はい」
「はぁぁぃ」
私は、先輩に手を振り、さよならすると、席に戻った。
そして、後ろの友達と喋る。
「嬉しいなぁ…朝っぱらから先輩と会えるなんて♪」
「よかったね♪雪菜ちゃん」
「うん」
話をしていると、後ろから、昴が私の腕を掴み、屋上まで引っ張ってゆく。
いきなりなんなのー!?
「はーなーしーて!!」
私が、そう叫ぶと、パッと昴が手を離した。
屋上…。始めてかも。
「あのさ、お前、京助先輩とできてんの?」
いきなりの質問に私は、ゴホッとむせた。
私が、京助先輩と!?とんでもない!!
まあ、そうなりたいんだけどね…
「まだよ!」
私は、そういって、後ろを向く。
「そっか」
昴は、立ち去ろうとする。
何よコイツ。私は、ある事に気づく。
そうだ。一回、私の事を本当に好きなのか、聞いてみよう。
もしかしたら、私の事じゃなくて、他の人の事かも…。
それにちょっと興味があるのだ。
昴のことに。
私は、ドアを開けようとする昴に、
「あのさ、昴って…あたしの事好きなの?」
私は、勇気を振り絞って、聞く。
すると、沈黙が続く。
そして、昴が、こっちに向かってきて、
私を、バッと壁に押す。
「好きだけど?」
冷めた感じで言う。
何コレ…。
ちょっと、昴!!待って!!
私は、焦って、動けなくなる。
「お前は、どうせ、京助先輩の事が好きなんだろ?」
その通り。
なんだけど…。言葉が出ない。
私は、精一杯声を出そうとする。
私は、声を出さないで、首を立てに振る。
「そうだよな。お前は、いつも先輩、先輩って…」
昴は、私から目を逸らす。
「昴…」
すると、昴は、私の口を奪おうと、顔を近づけてくる。
やめて!!お願い…。
私は、思わず目を瞑る。
すると、温かいものが、私の唇に触れる。
顔も、昴の腕で動かせない。逃げられない…。
昴は、唇を離して、また、唇を重ねようとする。
私は、昴がもうちょっとでまた、私の唇が重なるってところで、
「お姉ちゃんをもっと見てあげてよ!!!」
すると、昴は、動きを止める。
昴の頬に涙が伝う。
私は、ただ昴を見つめる。
「ごめんね…昴。でも、昴には、お姉ちゃんが似合ってる。それに、アタシは、先輩の事は本気で好き。あたしと昴じゃ、成立しないんだよ」
そして、私は、昴の頬に流れる涙を手ですくう。
昴は、赤い頬で、私を見つめる。
そして、昴は、私の右肩に頭を下ろす。
「雪菜…。大好きだ。だから、俺は、お前の幸せを祈るよ。」
「ありがとう。昴も、幸せになってね」
「おう。それでさ、雪菜。京助先輩は、きっとお前の事が好きだと思う」
「え?」
「じゃあな。俺、ちょっと顔洗ってくるわ」
そう言って、昴は、出て行ってしまった。
先輩が、私の事を好き?
まさか・・・。
私は、壁にもたれる。
「あっ、先輩」
「あ、昴くん。どうした?」
「えっとですね。」
昴は、京助の、耳元で、
「実は、ごにょごにょごにょごにょ…」
京助は、ハッとする。
すると、京助は、走り出して、あそこに向かう。
「雪菜、良かったな」
昴は、そっと呟いた。
「今日は良い天気だなぁ」
能天気に、壁にもたれかかったままの、雪菜。
すると、いきなり、ドアがバンッと開く。
「え?」
「はぁ…はぁ…」
「ど、どうしたんですか?先輩」
京助は、笑顔で、
「雪菜、俺の事が好きって本当?」
「えっ!?」
嘘…。こんなのって…。
私は、驚きながら、そっと頷く。
すると、先輩は、私に抱きつく。
「俺も、雪菜の事、好き…」
うそぉ…。昴かな。。。ありがとう…昴。
本当に嬉しい。昴くんありがとう…。両思いだったんだ…。
あの時、”実は、雪菜って、あなたの事が好きなんですよ。今、屋上にいます。行って上げてください”
感謝するよ。昴くん
「先輩…」
「その先輩って止めてよ。京助で良い」
「えっ…きょ、京助…」
私は、顔が真っ赤になる。
嬉しい…。今までの人生の中で、一番嬉しいかもしれない。
そして、私は、そっと京助と唇を交わした。