12話
「おいっ、雪菜…。ゆーきーなー!」
「…っふぇ?」
私は、目を擦り、あくびをする。
すると、私の横に、大きな影。
「何寝てるのかな?雪菜」
「うあっ」
「昨日も寝てただろ?いい加減にしろ。評価下げてるんだからな」
「えぇぇぇ」
「当然だ」
そういう会話をしていると、周りの皆が、クスクス笑う。
私は、顔が赤くなる。
最近、なんか、物凄く眠たい。
「ほーら、笑ってないで、授業に戻るぞー」
先生は、教科書を手で叩いて、黒板に、英語を書き始める。
皆は、静かになり、教室には、シャーペンの音と、黒板の音だけになる。
そんな中、昴は、私の机に、手紙を投げてきた。
昴は、口パクで、”み ろ”という。
私は、手紙をそっと開ける。
「…」
”ばーか 授業中に寝るなよな! なんか悩み事でもあんの? 昨日から、目腫れてる”
と書いてあった。
私は、バッと鏡を胸ポケットから出して、自分の顔を見る。
「ぅゎぁ…」
私は、目の下が腫れているのに、気づいていなかったのか。
そういえば、おとといから、寝てない…。
私は、溜息をつく。
「雪菜!今度は、自分の顔を見て、何をしている?」
うしろから、急に怒鳴られる。
「す、すみま…」
すみませんと言おうとしたら、昴が、席を立ち上がり、
「先生!雪菜、体調が悪いみたいです。さっきから、顔の色が悪いんですよ」
「おお、そういえば本当だな。顔色が悪い。保健室に連れて行ってやれ。昴」
「はい」
昴は、私の手を引いて、教室を出る。
「足元、ふらついてる。大丈夫か?」
「あーうん。目覚めたばっかだし。当然」
私は、ヘヘッと笑う。
それでも、昴は、真剣な目をして、
「本当か?」
「うん。低血圧だしね」
すると、昴は、私の、額に、手を当て、
「熱い…」
「え、うそぉ」
「熱あるぜ、お前」
「そ、そんな事ない…」
いつの間にか、保健室についたが、先生はいなかった。
「先生、いねーな」
「うん…」
「寝とけ。俺、先生、探してくる」
「ありがとぉ…」
確かに、朝から、ちょっとしんどかったかも。
私は、保健室のベッドに入り、カーテンを閉めた。
すると、足音が聞こえた。
昴…かな。
「昴…?」
すると、カーテンがバッと開く。
「雪菜じゃない」
「お、お姉ちゃん!」
私は、バッと起き上がろうとする。
すると、お姉ちゃんは、私の肩を押さえ、
「寝ときなさい」
「ありがと」
そういって、お姉ちゃんは、私に布団をかけた。
そして、椅子に座る。
「お姉ちゃん、どうして保健室に?」
「あぁ。ちょっと、生理痛」
「痛くなさそうだなぁ?」
「サボり。」
お姉ちゃんと私は、フフッと笑う。
「お姉ちゃんも、サボるんだね」
「ん、まあね。雪ちゃんは?」
「なんか、熱っぽい」
「サボり?」
「ちがう!ホントだよ」
「そう」
するとお姉ちゃんは、なぜか真剣な顔をして、俯いた。
「お姉ちゃ…」
「雪ちゃんさぁ、昴の事、どう思ってるの?」
「え…?」
「あたし、噂聞いちゃった」
「噂…?」
「雪ちゃんと昴、キスしたらしーじゃない?」
私は、ドキッとする。
「本当なんだ…」
「で、でも!あたしから、したんじゃなくて…」
「昴から…」
「ごめん…」
すると、お姉ちゃんは、息を少し吸って、
「知ってた…」
お姉ちゃんは、目元を手で隠す。
「昴は、雪ちゃんの事が好きだって」
「え…?」
「昴は、いつも私を見てくれなかった。私が、どんだけ良い服を着ても、プレゼントをあげても、一番、かまったり、喜んだりしてくれるのは、いつも、雪ちゃんだった」
「…」
「昴の目は、いつも、雪ちゃんしか見てなかった!!」
お姉ちゃんは、頬に涙が伝った。
私は、それをただ見つめるしかなかった。
「それに、私、一回、雪ちゃんと京助が、仲良く話してる姿を見せた事があったの」
「え…」
「昴が、ある日、私の家に来て、”雪菜はいる?”っていうの。」
「うん…」
「私は、どうしても、昴に雪ちゃんの事を諦めさせたくて、
”いるけど、今、男子と二人っきりで、部屋にいるよ?”って言った」
「そしたら、予想通り、昴は、悲しい顔になった。でも、私、そんな顔を見たくなかった。とても、悲しそうで、私まで、悲しい気持ちになった」
「うん」
「それで…私、”私とタメの京助って言う人と、話してるんだぁ。なんか、雪ちゃんったら、京助を気に入ったみたいで”って、もっと、傷つけた。本当は、そんな事言いたくなかった。でも止まらなかったの」
「うん…」
お姉ちゃんは、いきなり、私の肩を掴み、
「お願い…雪ちゃん!!私に、昴をちょうだ…」
カーテンがバッと開く。
そこには、昴がいた。
「由美…」
「…昴」
「雪菜にそれ頼んでも、意味ないよ。俺が、ただ雪菜のことを一方的に好きなだけ」
「…」
「だから…ごめん」
「分かってるよ…。最初っから分かってたの。どうにもならないって。昴の心は私には、向かないって。でも、好きなの…。」
「ありがとう。嬉しい。けど、無理だ」
「…分かったよ…。じゃあ、そろそろ行くね」
「うん」
「じゃあ…ね」
「うん」
「あ、お姉ちゃん、ばいばい」
「お大事に」
由美は、その場を去っていった。
「あーあ。お姉ちゃんを振っちゃったよ。昴ったら。あんな良い人いないよ?」
「俺には、お前しか女に見えないって」
「ふふ…。」
「あ?」
「ちょっと、嬉しかった…かも」
そう照れながら言うと、昴は顔を赤く染め、
「寝てろ!熱上がるぞ!」
昴は、慌てて、私に布団を頭までかぶせる。
私は、布団の中で、うずくまり、自分の、答えを探した。