1話
「ふぁぁぁ…」
日差しが、さし始めた朝。私は、窓を開けて、新しい空気を吸う。
今日は、待ちに待った高校入学式。
憧れの先輩が、いる高校。
レベルの高いと有名なこの学校に入るのには、ものすごい苦労だった。
中学三年の時の思い出は、
「勉強とか…勉強とか…。」
勉強しかない!
朝は、目覚めバッチリ。今日は、良い日になりそうだと生き込んでいたところ、ドアをノックする音が聞こえた。
「雪ちゃーん。昴君が、もう来てるわよー」
すばる!?その名を聞き、私は、一瞬で、布団の中に隠れた。
「雪ちゃん?寝てるのー?入るわよ」
ドアを開ける音が鳴り、足音が、私のところへ近づいてくる。
私は、布団の中で寝たフリをした。
ん…?あれ?
お母さんの声が、しない。
私は、お母さんは、もう部屋を出たのかもしれないと思い、そっと布団から顔覗かせると、
そこには、大きな人影があった。
「ぉ…かあさん?」
私は、下から上へと、目線をあげると、
「こら!雪菜!あんだけ今日は、早起きしとけって言ってたのに。馬鹿やろう。初日から遅刻するつもりか?」
昴の大きな声が、耳を唸らせる。
昴は、私の幼馴染。いつも、私の事をギャーギャー注意するのだ。
まったく。あんたは私の父親?って感じで…
「うるさぃなぁ…。下で待っててよ。急いで仕度するから。」
私は、めんどくさそうに、そう言うと、昴はため息をつき、
「早く来いよ。カバンだけ、持っていっとくから。」
「いや、カバンはいいよ。てゆうか、別に先に行ってても…」
「いいんだよ。俺がお前と一緒に行きたいだけだから」
昴は、軽々しくそう言い、机に置いてあるカバンを取って部屋を出た。
ちょっとは、優しいとこもあるかなって…。そう、ボンヤリ机を眺めていたら、ある事に気づいた。
あ、筆箱!!入れるの忘れてたー!!
私は、机の引き出しにあるポーチを取り出して、シャーペン、ペン等いろんな物をポイポイと強引に入れた。
「昴!待って!筆箱!」
階段を降りていた昴を追いかけて呼び止めた。
昴は、フフッと笑い、
「天然。」
と言った。
私は、頭に血が上り、うるさい!と怒鳴って部屋に戻った。
ああ!早く準備しないといけないのに!ムカツク奴!
私は、強引に、制服をハンガーから取り、着替えた。
そして、階段を降りて、洗面所に向かい、バーッと顔を洗って歯磨いて、髪を梳いた。
「うぅっ!寝癖が!」
私は、ドタバタして、髪スプレーで必死に直していると、後ろから、
「もっと、丁寧に、髪はやらないと、傷んじゃうよ?」
上品な声とともに、白くて綺麗な肌の手の人が、私の寝癖を直す。
「お姉ちゃん!!先に行ってなかったの~?」
「うん♪これからは、昴君と、一緒に学校行けるでしょ?だから、一緒に行こうと思って」
「あぁ…。なるほど。」
「だから、雪ちゃん。協力よろしくね♪はぃ、寝癖直ったよ」
「ありがとー…。」
はーいと返事して、食卓に向かい、パンを取って玄関に向かった。
お姉ちゃんは、昴が好きだ。今は、新高校2年生で1つ年上。
ルックスも、性格も、とても、良い。
言わば、モテモテの人だ。
それなのに、なんてこの世の中は不公平なんだろう。
私は、ルックスも性格も普通のただの女。告白されたのも、1度2度…。
お姉ちゃんとは比べ物にならない。
私が、大好きな先輩も、お姉ちゃんに告白した事があるらしい。
まあ、お姉ちゃんは、私が先輩の事を好きって知ってたから、断ってくれたけど。
それに…。昴も、もしかしたら、お姉ちゃんが好きかもしれない。
両思い…。
そうだとしたら、私ももっと頑張らなきゃ。
先輩のハートをゲットしなきゃ!
私は、ギュッと握りこぶしを作って、ガッツポーズをした。
すると、後ろから、肩を掴まれた。
「何、1人でガッツポーズしてんの?」
「うふふ…。先輩のための、愛のガッツポーズよ」
私は、さっきまでの怒りは消え去り、笑顔で答えた。
「馬鹿だろ」
また、そんな発言を!!!
私は、また頭に血が上り、昴の持っている私のカバンを強引に取り、睨んだ。
「何よ!モテモテの人は良いよね~」
私は嫌味たらしく、言った。
「は?俺がモテる?」
昴は不思議そうな顔をする。
「え?アンタ、告白されたこと無いの?」
「いや、あるけど。」
「何回?」
「え…っと何回だっけ」
「数え切れないくらいあるんじゃん!それをモテるって言ってんの!」
「へぇ…」
昴は、まるで、今まで知らなかったように、いう。
まじかよ。
「昴は、頭良いし、スポーツ万能だし、顔も良いもんね~。まったく、あんたはかっこいいよね」
「え」
昴は、固まってしまった。
「え、何?何かいった?あたし。」
「俺の事、そんな風に見てたの?」
「え?えぇぇぇぇ!?」
私は、一気に顔が真っ赤に染まる。
しまった!!今、ものすごく失言した!かっこいいとか言ってしまった!!あああああ!
「い、いやいや、今のはさー…えーと…」
昴は、口を閉じてじっと私と見つめる。
すると、家から、人が出てきた。
「あ、あ!お姉ちゃん!一緒に学校行くんでしょ!!」
「は!?」
私は、話を逸らした。
昴は、一緒に行くということを知らなかったようで、驚いている。
「だ、だめかなぁ?昴君。一緒に行ったら。」
お姉ちゃんは、甘い声を出して、目をうるうるさせる。
「由美さん!その顔止めて下さい…」
「え!?ご、ごめんねぇ。ワザとしてるわけじゃ…」
見てて恥ずかしい会話。
私は、そそくさと、そこから抜けて、学校へ向かった。
「雪菜~!!待てよー!」
「雪ちゃーん!?手に持ってるパン、ちゃんと食べなさいよー!」
私は、パンをずっと握り締めていたようだ。
忘れてた…。
私は、もう、冷たくなっているパンを歩きながらゆっくりかじった。
「昴…。」
私はなぜか、胸が痛んだ。
こんにちわ。作者の、城宝凛華です。
続けて生きたいと思うので、これからもよろしくお願いします。