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ヒューマンシステム 〜私たち、マシンに繋がってないと役に立たないの〜 生体兵器はヒトでありたい  作者: みつなはるね
第2章 彼女のResolution

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第18話 彼女たちのシャワールーム

 トレーニングジムでしっかりと汗をかくと、いつも気持ちがスッキリする。


 ラディウは日課のトレーニングを終えた後、居住区の女性士官用シャワールームで、ブラトップ姿のままドライヤーで髪を乾かしていた。


 ドライヤーを置いて鏡を見る。髪がパサついてどうしてもまとまらない。

 

 彼女が不満げな表情で鏡の前で四苦八苦していると、ルゥリシアがシャワーブースから出てきた。


「今日のステファンのウザ絡みは、酷かったわねぇ」


 ラディウはルゥリシアに言われて思い出し、顔を顰めてため息をつく。


「要らないって言ってるのに、プロテイン飲め飲めって……なにあの人……」


 今日はジムにステファン・ゼルニケもいた。ラディウと同じぐらいのタイミングでメニューを終えた彼は、嫌がる彼女にプロテインを勧めて飲ませようとし、ラディウは散々抵抗して、なんとかその場を脱出してきた。


 あのシミュレーター事件から、ラディウは彼に妙に気に入られてしまい、なにかと小学男子のようなちょっかいを受けるようになった。


 どうやらステファンは、ムキになって抵抗する彼女をからかうのが心底楽しいらしい。


「そういえば、あなた飲まないわね」


 バスタオルでメリハリのあるキュッと引き締まった身体を拭きながら、ルゥリシアはロッカーから下着を出して身につけ始める。


「あの液体、見た目が無理。プロテインバー食べてるから別にいいじゃん」

「……プロテイン、飲んだ事ある?」

「ない」


 ラディウは典型的な食わず嫌いだ。一目見て嫌だと思ったものは、頑なに口にしない。


「あぁ、それじゃステファン絡むわ。あいつ、食わず嫌いに無理やり食べさせて、それ克服させるのが大好きなのよ……」

「うわ、なにそれ。最悪……悪趣味……」


 それはただのありがた迷惑で余計なお世話だ。ラディウは心底嫌そうに顔を顰める。


 艦内には何ヶ所かジムがある。場所により利用するクルーの階級や職種に偏りがあるが、別に利用場所が決まっているわけじゃない。彼女がよく利用するところは、飛行士仲間が多くて居心地がいいが、ステファンが絡んでくるなら、彼が居なさそうなところに行こうかと、髪をとかしながらラディウは本気で考えはじめる。


 下着姿で鏡に映るルゥリシアが、頭を包んでいたタオルを取った。


 普段は一つにまとめられている彼女の、濡れて艶やかさを増した黒髪が背中に垂れる。ラディウは手を止めて、彼女の髪をうらやまし気に眺めた。


「ルゥリシアの髪って本当に綺麗。何か秘訣があるの? 私、軍艦に乗るといつもパサついちゃって」


 乾いた髪をつまみながら、彼女に尋ねる。手を離すと顔の周りに髪がまとわりついて鬱陶しい。


「艦内は乾燥してるからね。ヘアオイルとお肌の保湿クリームは必須よ。持ってる?」

「え? 知らなかった……化粧水しか持ってない……PXで売ってたかなぁ」


 ラディウは纏まらないダークブラウンの髪を後ろに流す。


「女性クルー用のヘアサロンがあるから、必要なものはそこで買えばいいわ。後で一緒に行って選んであげる。今は私のを使おう」


 ルゥリシアはコスメポーチからヘアオイルの瓶を取り出すと、適量を出してラディウの髪に馴染ませる。柔らかい花の香りが漂う。


「良い香り」


 ラディウは目を閉じて香りを楽しむ。


「私のお気に入りなの。ラディウの髪も綺麗よ。真っ直ぐでサラサラだわ」


 そう言って、彼女の前下がりボブの髪を整えてやる。


 ルームメイトのルゥリシアは、去年自分が先輩にそうされたように、任官1年目のルームメイトを気にかけ、軍隊生活での様々なアドバイスや生活の知恵を授ける。同僚、友人として、時にはラディウを妹のように可愛がり、姉がいないラディウもまたルゥリシアを慕った。


「はい! 終わり」


 パサついていた髪が心なしか潤って、綺麗に纏った。ラディウは嬉しそうに頭を動かして、髪の揺れ具合を見る。完璧だった。


「ありがとう! ルゥリシア」

「どういたしまして」


 二人は鏡越しに笑顔を交わした。


 今はこんな、何気ない日常がとても楽しい。


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