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ヒューマンシステム 〜私たち、マシンに繋がってないと役に立たないの〜 生体兵器はヒトでありたい  作者: みつなはるね
第2章 彼女のResolution

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第13話 彼と彼女の対立 1

 ラディウはコクピットに乗り込み、BMIとHMSが組み合わされたシミュレーター用のヘッドセットを付けてから、取り出したパーソナルデータを読み込ませると、男性の機械音声が話しかけてきた。


《こんにちは少尉。支援AIの設定をしてください》

「デフォルト、<ケリー>」

《了解》


 <ケリー>はメテルキシィの標準機に搭載されている支援AIの名称だ。


 設定で性別や名前、話し方を変えたりする事ができるが、ラディウは標準仕様の<ケリー>を使う事を好んだ。


 理由はシンプルで、<ディジニ>を含めて他の機体と声が似ていると、操作で混乱するからだ。メテルキシィは<ケリー>と決めておけば彼の音声が「<ディジニ>ではない」と意識づけしてくれる。


 機体のシート位置や各種の設定が最適化されたのを確認して、ハーネス類を身につける。


 シミュレーターの管制を担当するエンジニアから通信が入った。


『用意できたら合図を。どこからやる?』


「"エルアー" 準備完了(UpAndReady)。どこからでも良いです」


『"ラスカル" 準備完了(UpAndReady)。選ばせてやるよ』


「じゃあ、50キロ。Nose to Noseで」


『了解。コクピットコア、ロック解除』


 ゴンと微かに揺れてコアを固定していたロックが外れる。


 これで操縦桿の動きに合わせてコクピットが動く。


『カウントダウン開始。10秒前』


 ラディウは大きく深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。


「頭切り替えろ。これは普通のメテルキシィ」


『3、2、1、開始』


 いきなりロックオンアラームが鳴りミサイルが飛んできた。


 アクティブレーダー誘導方式の中距離ミサイルだ。


 シミュレーターは実機での模擬戦と違い、当たり判定は文字通り弾が当たるまでだ。


『反則じゃ無いぞ!』


 勝ち誇ったステファンの声が耳障りだった。


「そういえば、武装の条件は出してなかった!」


 思っていたより自分は腹を立て、冷静さを欠いていたようだと、ラディウは自覚する。


 完全にステファンのペースに乗せられたなと思いつつ、ラディウはチャフをばら撒きながら機体をひねり、正面から来るミサイルを寸でのところで躱す。


 そして上昇しステファン機とすれ違いざまに、HMSでステファン機を補足。ミサイルの射程に入るよう加速し、旋回をかける。


 ステファンも上昇してラディウ機の後ろか脇を取ろうとする。


 こちらのミスを誘う機動。やはり、ステファンは上手いなとラディウは思い、素直に彼の技術を認める。

 だけど彼の思うようにはそうはさせないと、ラディウも仮想の機体を操る。


 絡み合うように最適の位置を取り合い、ミサイル攻撃をチャフやフレア等を駆使してかわす。しかしこれらも搭載数に限りがある。使い所の駆け引きが肝心だ。


 追いつ追われつの攻防を繰り返していたが、実のところラディウは連日の訓練で疲れきっていた。


 ご飯をたべて、空き時間に下書きをした報告書を書き上げて早く寝たいから、無駄な事に時間を使いたくないと思っている。


 こんなくだらないことは、とにかく早く終わらせたいのが彼女の本音だ。


「電子誘導系は封じさせてもらう! <ケリー>、電子戦継続。Hi-EJP散布」

《Hi-EJP散布開始》


 ステファンが言うように、システムに繋がっていないリープカインドは、一般のパイロットとそれほど変わらない。


 違うとすると多少カンが働くとか、少しだけ先読みできるところだろうか。それでも繋がっているといないとでは精度や範囲に差が出る。


 しかしここは宇宙じゃない。


「リンクしてなくても、やりようはあるのよ」


 ラディウはニヤリと笑う。


 これは訓練ではなく勝負。使()()()()()は使う。


 ラディウは一旦あえてステファン機に追われる位置についた。


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