〜1話:出会い。その1〜
「お主!こんな所で寝てるのではない!いい加減起きぬか!!」
少し甲高い男の声は俺の頭を何か木の棒の様なもので小突いてきた。寝ている人間にその扱いはなんだ!一応俺は国が認めた錬金術師だぞ?!カチンときた、一言文句を言ってやる!
「一々うるせぇんだよ!休みの日ぐらぃ......」
目蓋を開き怒声を上げれば静かになるだろうと思った俺は実行するも、目の前に広がる光景を見ると台詞は段々と小さくなり遂には何も言えなくなった。
「お前、いきなり起きてはデカい声を出すのでない!驚いただろ!」
さっきの声の主とは違う声....恐らく背の高い方かな?結構恰幅が良いな....それにイケメンだ。
「トシイエ、わしは殿に目覚めた事をご報告してくる。おみゃーはこの男を見張っててくれ」
そう告げると甲高い声の男は廊下に上がると奥の方へ行ってしまった。
ってか俺、地面で寝てたのか...汚れちまうじゃねぇか....
「おいお前...どこから来たんだ?っつかなんでこの城の中で寝てんだよ...しかも馬鹿みたいに堂々と...」
ため息を吐かれると俺は眉間に皺を寄せる。それは俺が聞きたいくらいだ。俺は確かに昨日サドの野郎と酒場で飲んでからちゃんと家に帰って寝たんだ。
それなのになんでこんな田舎っぽくて古臭い所で寝てるんだ?しかもふかふかの新調したベッドじゃなくて固くて乾燥している地面だし....
「知るかよ...それは俺が聞きたいくらいだっつーの....」
ため息を吐きそう言い返すとトシイエはため息を吐き返す。その気持ちは俺もわかるぞ?だって急だもんな...お前、結構苦労人っぽいな....
「......何か言ったか?」
まるで読心術でも使ったかの様に聞かれるとついそっぽを向いてしまう。デカいし声デケェよ、兄ちゃん......
「ッ......!お前、頭を下げろ!殿が参られた!」
強引に俺の頭を掴むと強制的に土下座の様な格好をさせられる...なんだんだよ、殿って...っつか手もデケェんだな、兄ちゃん。
「面をあげよ...犬、若造....」
誰だよ、犬って...若造って俺か?これでも今年で26歳だぞ?若造って失礼じゃねぇか?!
そう文句を言おうと頭を上げようとする。だが、不思議な力なのかいつも異常に頭が重い...なんだ、コレは.....?
「......面をあげたぞ」
笑みを浮かべるも引きつった笑みが限界。それを見て聞いた犬はまた俺の頭を掴むと地面に押し付けようとしてくる。だから手がデケェし力強ぇよ......
「馬鹿、殿の前で何て言葉を!申し訳ありません!殿!」
「ふん......よいわ、そのくらいの気強さが無ければ......今頃斬っておったわ」
扇子を開くと仰ぎ出す偉そうな男。殿って言われてたな....結構偉そうな人なんだろうな....
「お主、名前はなんと申す...何故この様な場所で寝ておった?」
甲高い声の男がまるで殿様の言葉を代弁するかの様に少し偉そうに話しかけてきた。
「俺はアレン・クロフォード。昨日同僚と飲んで家に帰って寝たハズなのに起きたらココにいた」
「いい加減な事を言うな!あれん・くろふおーど?出鱈目な名前に出鱈目な言い分、信用できるか!」
だから声デケェよ、兄ちゃん
「いい加減も何も事実を言ってるだけだ。今日は非番なんでな....帰って寝たいんだが?」
「貴様ぁ〜叩き斬ってやる!その無礼な言い訳、口調!どれも殿の御前で行う物ではない!そこに座れ!その首、落としてくれる!」
はぁ?!おいおい、いきなり斬首とかどんだけ厳しいんだよ?!っつかどこだよ、ココ......俺の知ってる場所じゃねーぞ?!
「ヒデヨシ!そいつを抑えてろ!俺がすぐにコイツの首を落としてやる!」
「犬......よさぬか......」
なんだろう....殿様が喋ると空気が重くなるんだな....
「ですがッ「よせというわしの命が聞こえぬか......?」
兄ちゃんは殿様の言葉に従う様にすぐに黙ると殿様の元に戻って行った。なるほど....確かに犬だ。