7、助けを求められた少女
やっと主人公回ですよ、皆さん!!
予定ではあと2話か3話でこの騒動は落ち着く予定です。
では、どうぞ!!
アムン達が放牧場で騒動を起こし、村人達が集まって来ていた頃、それを知らないアニスは家で両親と共に静かな時間を過ごしていた。彼女はリビングのソファに座り、本を読んでいた。
先程まで母親と一緒にお菓子作りをしていたのだが、形を作った生地をトレーに並べ、オーブンに入れたので後は焼き上がるのを待つだけである。なのでアニスはその間、本を読む事にした。彼女は既に文字の読み書きに加えて、簡単な計算が出来るようになっていた。これは魔族の子供としてはとても早い。
魔族の子供は成人前の75歳になると文字の読み書き、計算、世界や自国などの歴史、魔術などを含めた様々な事を学ぶ学校へ通う。学校は村に1校ずつ有り、専任の教師などはおらず、村人達がそれぞれの教科を担当するようになっている。
しかし、アニスは村長の父親が家で書類を読んでいるのを見て、ある時父親に「自分も手伝いたい!」と言ったのだ。それを聞いてとても喜んだ父親は早速手伝って貰おうと、娘に文字の読み書きと計算を教えたのである。
隣には一緒に作っていた母親が座り、縫い物をしている。
アニスの母親のセフィリアは315歳、外見は人間で言う25、6歳の姿である。薄い水色の髪を腰まで伸ばし、垂れ目がちなスカイブルーの瞳を持つ女性である。彼女は村一番の美人で、今でもその美しさは変わらないと村人達が言っているのをアニスは聞いたことがあった。
セフィリアは若葉色のワンピースの上にカーディガンを羽織っており、娘と過ごす時間を楽しんでいた。
ちなみに、ここにいない父親は書斎で村長の仕事をしている。
そんな時、ドンドンと音を鳴らして玄関が叩かれた。アニスが応対に出ようと読んでいた本を閉じて立ち上がろうとしたが、せフィリアが「私が出るから良いわよ」と言い、彼女の頭を撫でて応対をしに行く。
玄関を開けると、走ってきたのが明らかに分かるほどに息を切らした1人の男が切羽詰まり、焦った顔をして立っていた。彼は玄関のドアを開けたセフィリアを見ると、食い気味に聞いてきた。
「セフィリアさん、アニスはいるか?!」
「ええ。中にいるけれど、そんなに急いでどうしたの?」
「アムン達が放牧場で遊んでいて馬を怒らせちまったんだが、全然静まらなくて、アニスの手を借りたいんだ。しかも、その怒らせた馬がゼノなんだよ。俺たちじゃ危なすぎてどうにも出来ねぇ」
「まあ、それは大変だわ。待ってて、アニスを呼んで来るから」
そう言って扉を開けたままにして家の中へ戻ると、アニスを呼び、やって来た彼女に事の次第を話す。その間、男は真剣な顔で2人を見つめている。また、母親が応対をしている間、アニスはと言うと、1度閉じた本を再び開いて読書を再開させていた。
「アニスはどうしたい?」
「行く!」
「無理して行くことは無いのよ?それに、危ないわ」
「無理なんてして無いよ、お母さん。ゼノは友達だよ!」
「なら、行ってらっしゃい。でも、1つだけ約束して。大人達の言うことを聞いて、危ないことはしないって」
「うん、約束する」
「無茶はしないようにね」
その様子を見ていた男にセフィリアは向き直ると、アニスの事を頼み、くれぐれも無茶や危険な事はさせないようにと言う。また、男がアニスの父親である村長には言わなくていいのかと聞いたため、自分から伝えておくと答えた。その後、2、3言葉を交わして話を終える。
「気をつけて行ってらっしゃい。帰ってきたら一緒に作ったお菓子が焼き上がってるわ。お父さんも一緒にみんなで食べましょ」
「うん!それじゃあ、お母さん、行ってきまーす!」
そう言って、男と共に放牧場の方へ手を振って行く娘を母親は手を振り返して、その姿が見えなくなるまで手を振っていた。
ところで、セフィリアは男が頼んできた時にはアニスにどうしたいか聞かずにその場で断ることも出来たし、アニスが行くと答えた時も行かないように説得することも出来ただろう。だが、彼女はそうしなかった。
彼女は娘の思いを尊重して、したいようにすれば良いと考えている。アニスはまだまだ子供で、子供の間には色々なことを見聞きして体験をしておくべきと考えているからだ。今回の様な危険な事であっても良い経験になると考えている。
しかし、やはり心の内では心配でたまらない。なにせ今回の相手はあのゼノだ。彼女は村長である夫からゼノのその危険さは聞いていた。それにも関わらず、送り出したのは動物好きなあの子の事だから、行かないで欲しいと言っても行こうとするだろうと考えたからである。
送り出したからには、帰って来るのを待つだけである。まずは、書斎で仕事をしている夫に今回の事を伝えるために2階へ行くのであった。
やっと主人公出てきましたね……。
お待たせしました。ここからですよ!
放牧場での騒動は前書きで書いたように2、3話で落ち着く予定で、そのあとは日常回を何話か挟んで、本格的に物語が動き出す予定です。
よろしくお願いします。