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召喚者達はその異世界で  作者: 八日園 啓地
第1章 九日間の絆
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09 その紅髪少女、囚われる

 『どこかに潜んでいる不審人物にも気を付けろ! 姑息な手を使ってくるぞ!』

「はぁ…………はぁ……はぁ。姑息で悪かったな」

 俺は騎士たちから逃げた先の研究所内の一室に隠れている。そこは物置部屋なのか沢山の木箱やら段ボールがある。

 隠れていてもいずれ見つかってしまうが、今のところはこちらに近づく気配がないので安全だろう。

 「それにしても、どうするかなぁ」

 俺は息を整え、外の様子に耳を傾けるが今の所近くで足音はしない。

 椅子がないため俺は地面に座りながらこの後のことを考える。

 騎士数人で手一杯の状況だ。戦いながら進んでもこちらが不利だし、隠れて進んでもタイムオーバーになってしまうかもしれない。時間があるとは限らないのだ。例えセレアを見つけたとしても、彼女に何か起きていたら意味がない。

 あの聖騎士くらい強ければ、話は違ったのかもしれないが……。

 「……そうだ、強くなればいいんだ」

 右手の甲を見ると、変わらず数字の『2』が刻まれている。これに願えば間違いなく強くなるだろう。

 しかし、これを使って強くなれば彼女に教わった日々が失われていく気がする。それでは、ここまで来た意味がない。だが、時間も無限じゃない。考えている余裕はない。

 俺は葛藤し、思考し、検討して、ある結論に達する。

 「今日だけでも俺を強くしてくれ。誰にも負けないくらい」

 突如、淡い光が俺の身体を包み込む。

 そういえば、チート能力を初めてチートみたいに使ったなぁ。

 不思議な感動を覚えている間に光は消えていた。これで負けなしだ。

 「さぁ、行くか!」

 俺が立ち上がろうとした直後、

 「動くな」

 後ろから光の剣が突きつけられた。俺は心臓が冷たくなる感覚に囚われながら、恐る恐る相手の顔を見る。

 「お、お前は……」

 「あれ? 君は確か昨日スカーレット様と一緒にいた……」

 そこには昨日俺を倒し、今しがた俺が強さの基準にしていた聖騎士、ライザーがこちらにライトソード向け立っていた。



 時はカケルが屋敷を出た頃まで遡る。セレアは研究所内のアナザーがある部屋でジャロウと話していた。少し前まで同じ部屋にいたが、用事があると奥の部屋に入っていった。

 「これはこれは、スカーレット様、随分と探しましたよ。ご無事で何よりです」

 「それは善意でかしら? それとも私が貴方の悪事を知っている唯一の無関係者だから?」

 「もちろん、前者ですとも」

 セレアは平然と言うその男、ジャロウに益々嫌悪が募る。

 「嘘をつかないで。貴方がお父様をタブレットの禁断機能、催眠で操っていた事はもう分かっているのよ」

 「ははは、何を言っているのかよくわかりませんね。先代の国王、つまり貴方のお父様はお亡くなりになる数年前から国民に悪政を強いたりしていましたが、それが私のせいだと、こうおっしゃるんですね?」

 「そうよ」

 セレアの即答にジャロウも怪訝な表情を隠せない。

 「……それほど断言できる証拠はもちろんあるのでしょうな?」

 ジャロウは少々苛立ちながら問う。

 「もちろんよ。王族や貴族などの国の中枢の人達には仮に禁断機能を使われたとしてもそれを無効にする機能がタブレットにある事は知っているわね。それがお父様のものには解除されている形跡があった。そんなことが出来るのは、タブレットを作ったアキヒロさんだけよ。貴方、近頃彼に随分投資していたわね。この研究所も貴方の投資で建てたものでしょう」

 セレアの長い説明を聞き終え、ジャロウは静かにセレアを睨みつけた。そして、口元を大きく歪ませ、まだこちらが有利だとそう言いたいような笑みを浮かべる。

 「それは決定的な証拠ではありませんな。残念ながら、貴方の今の立場は率直に申し上げて、悪政の王の娘。誰も貴方の推測には耳を貸しませんよ」

 化けの皮が少しずつ剥がれ、ジャロウは勝ち誇るような笑みを浮かべる。

 確かに彼の言う通りセレアの、王家の民衆の支持は現在下がってきている。非道な王の娘に国王の座を受け継がせるな、という声もある。

 しかし、セレアはその真相を公にすることができればきっと国民の王族の信頼を取り戻せると思っているのだ。

 国民に真実を伝えたとしても簡単には信頼は取り戻せないことぐらいはセレアにも分かっている。そんなに現実が甘くないことも。

 それでもセレアはその甘い考えを信じきる。それが自分で決めたことだから。たとえ、この身が滅んだとしても一矢報いる覚悟でセレアは今ここに立っている。

 セレアはふと屋敷に置いてきた少年の顔が頭に浮かぶ。そろそろ手紙を読んで驚いている頃だろうか。

 彼の為にも私はここで――。

 そのセレアの想いが合図のように、けたたましい警報音とアナウンスが流れる。

 『侵入者発生! 侵入者発生! 侵入者はライザー! これより、迎撃の準備を早急に行え! 繰り返す――――』

 「ライザーか……。確かにあいつに催眠は効かなかったな……。くそ、このままではまずいぞ。一体どうすれば……」

 ジャロウが鳴り響くサイレンの中、唸るように呟く。ライザーの登場に真剣に悩んでいる様だ。

 「貴方が今抱え込んでいる騎士たちに数日間に渡って接触していることも確認が取れています。催眠を使いましたね。タブレットを見せてくれればすぐに分かりますよ」

 ジャロウは憎々しげにセレアを睨みつける。しかし、セレアはそれに臆さずはっきりと告げる。

 「自首しなさい。騎士団会議で騎士団長をはじめとする約半数の騎士がいないこの時期を狙ったのは、むしろ外れだったわね」

 「う、うるさいぞ! 小娘が!」

 唾を飛ばしながらジャロウはタブレットを取り出し操作する。すると部屋の入り口から、先日カケルとセレアが見た機械兵が現れた。一体ではない。その数は三体だった。

 「こいつを捕らえろ! 二度と生意気な口をきけないように躾けてやる!」

 セレアは怒鳴り散らすジャロウに不快感を隠せず、その感情をライトソードに乗せて、襲ってくる機械兵に立ち向かった。




***

 「はぁ、……はぁ……」

 「あまり、手を煩わせないでいただきたい」

 優勢になったジャロウは怒鳴り散らすことをやめ、普段の口調に戻っている。しかし、セレアに向けている敵意はそのままだ。

 セレアは機械兵を二体まで倒した。

 この国の王族は剣術を学ぶ。セレアをその例に漏れず、天才と言われる程の実力まで持っている。

 だが、最後の一体の、他の機械兵を巻き込むほどの大きな攻撃をくらい負けてしまった。今は機械兵に縄で縛られて身動きが取れない。

 「さあ、主人に刃向かう妻にはお仕置きが必要ですね」

 ジャロウは右手でセレアの顎を持ち上げ、顔を近づける。セレアはビクッと身を強張らせながらもジャロウを睨みつける。

 正にそのタイミングで再び警報が鳴った。

 『ライザーと謎の黒髪剣士、二名が現在機密研究室に向かっている模様! 謎の黒髪剣士も十分強いとのことだ! 戦えるものは今すぐ向かえ! 繰り返す――』

 ジャロウは弾かれたように顔を上げる。

 「な、なんだと!?」

 ジャロウは突然の事態にセレアから手を離す。そして、奥の部屋に入っていく。


 『アキヒロ、どういうことだ なんで侵入者が増えている⁉︎ いや、それよりも監視カメラはどうした!』

 『今点検中ですよ。先程用事があると申したはずです』

 『なんでこのタイミングで監視カメラがないのだ!』


 奥の方からそんなやりとりが聞こえる中、セレアはアナウンスに耳を疑った。

 (黒髪の剣士、まさか――)

 黒髪と聞いたら今のセレアには一人しか思い浮かばない。

 「カ……ケル?」

 「くそっ! アキヒロはここにあいつ等が来たら戦え! 儂はスカーレットと貴様の部屋でほとぼりが冷めりまで待っておく! ほら、こっちに来い!」

 「痛っ!」


 ジャロウがセレアを乱暴に引っ張り奥の部屋に移動する。

 セレアには何で彼がライザーと一緒にいるのか分からない。そもそもここに来るとは思わなかった。

 それでもセレアは一週間と少しの間だけだと思っていた友達の、彼の名前を淡い期待と共に口に出さずにはいられなかった。

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